愛する人の為なら、何だってしてみせる
あの人と一緒なら、地獄にだって堕ちていくわ
「ねぇ、どうして最近笑ってくれないの?」
あかねはアクラムに向かって話し掛けた。
「・・・・これで本当に良かったのか、と思うのだ」
「いいに決まってるじゃない。私は貴方と一緒にいることを選んだんだもの」
「・・・・そうだったな」
しかしアクラムは目を伏せた。
もう以前のように仮面はつけてはいない。
自分の野望は潰え、代わりに愛する少女を手に入れた。
手に入れた?
本当に?
自由な小鳥のような少女を、自分は壊したのではないか?
こんな生活は間違っている。
自分には、愛しいあかねを抱きしめる腕もない。
最後の日、あかねは結局アクラムを説得しきれなかった。
彼は百鬼夜行を呼び覚まし、自分たちはかろうじてそれを封印した。
全てを失い、使い果たしたアクラムは、その場に崩れ落ちた。
これでやっと彼と共に生きることができる、そう思ってあかねは駆け寄ろうとした。
しかし。
「鬼よ!覚悟!」
刀を振り上げた頼久を止めるまもなく、アクラムの首は刎ねられた。
何が起こったのか分からなかった。
八葉が止める手を振り払い、ふらふらとアクラムの傍に歩いていく。
「ど・・・して・・・?やっと二人でいれると思ったのに・・・」
その瞬間、周りのものは悟った。
この龍神の神子は、敵であるはずの鬼を愛していたのだと。
「いやぁぁぁぁ!!!」
首を抱いて慟哭し続けるあかねを、八葉はただ見つめることしかできなかった。
あかねはこの世界に残ることを選んだ。
そして、アクラムの首を大事そうに抱えると、どこかへ消えて行った。
京は救われたはずなのに、誰一人救われない、そんな戦いだった。
龍神の力なのだろう。
首だけになったアクラムは、しかし生きていた。
喋ることもできる。
ただ動けないだけ。
あかねは人里離れた山奥の小屋で、アクラムと二人きりで生活していた。
出かけるのは食料を取りに行く時だけ。
それ以外は、アクラムの隣に座っていた。
自分が怨霊など呼び出さなければ。
あの時、あかねの説得を受け入れていれば。
鬼でなければ。
未来は違っていただろう。
自分の体などどうでもいい。
この少女が静かに壊れていくのが、耐えられないのだ。
龍神よ。
これは罰のつもりか?
神子を犠牲にしてまで、私に復讐したいのか。
そなたはどこまでも残酷なのだな。
「そうだ。貴方の体にあう、素敵な体を探してくるわ。そして遠いところへ行きましょう?二人っきりで暮らせる世界へ・・・」
あかねはうっとりと呟いて、アクラムの首を抱きしめた。
やめてくれ
清らかなその手を
おぞましい私の為に、汚さないでくれ
元ネタは黒塚です。首だけになった恋人の為に、体を探し続ける女の話。
でも恋人は死にたがってんだよね。
最愛の人が手を血に染めてまで、生きていたくなどないから