泣き続けるのが宿命だと言ふのなら、せめて私は隣にいませう。

貴方の涙が止まるまで


丑の刻。

頼久がいつものように屋敷の見回りをしていると。

庭先に座っている人影がぼんやりと見えた。

「神子殿・・・?」

頼久が躊躇いがちに声をかけると、あかねは慌てて袖で顔を拭った。

泣いていた・・・?

しかしあかねはにっこり笑ってみせる。

「頼久さん、お仕事お疲れさまです」

「このような時間に外に出ておられると、お風邪をお召しになりますよ」

「ちょっと眠れなかっただけです。そうだ。少しお話しません?」

「私と・・・ですか?お気に召すような答えはできないと思います」

「いつもそんなことばっかりー!私は頼久さんと喋れればいいんです!」

ぷうっと膨れてみせた後、ここに座りなさいというように、自分の隣をぽんぽんと叩いた。

頼久は、主の隣にいいんだろうか・・?と思いながらも、断るのは許さないだろうと思ったので大人しく従った。

「私ずっと気になってたんですけど、頼久さんはいつ眠ってるんですか?今だって見回りしてたし」

頼久はクスっと笑う。

「神子殿も起きているではありませんか」

「そーやってごまかす!ちゃんと寝なきゃダメですよ?体に悪いし」

「心配してくださってありがとうございます。警護は仲間と交代ですし、きちんと休んでいます」

「本当に?」

あかねはなおも疑わしそうだ。

頼久は思わず笑みがこぼれた。

「本当です」

「それなら良かった。・・・最近頼久さん笑ってくれるようになりましたね」

嬉しそうにあかねが言うと、途端に頼久の顔が険しくなる。

「・・・主に馴れ馴れしくしてしまい申し訳ありません」

「あ、謝らないでくださいよ。私は嬉しいなって意味で言ったんです」

「嬉しい・・・?」

「頼久さん昔は全然笑ってくれなかったから。ちょっとは気を許してくれたのかなーって」

「主に気を使わせてしまうようでは、私もまだまだですね・・・」

「だーかーらー!そうやって謝らなくていいことで、謝らないでください!それに私は主じゃなくて仲間ですよ?」

「!」

「だからこれからも一緒に頑張りましょう」

仲間・・・・あかねの言葉は、頼久の胸に響いた。

だからといって、主だと思わないわけにはいかないが。

それに自分がこの少女をお守りしたいのだ。

八葉としてではなく、一人の男として。

「私は何故こんなにも罪深いのか・・・」

思わず漏らした言葉に、あかねが眉をひそめる。

「罪深い?」

「はい。私は本来貴方の傍にいていいような人間ではないのです」

「お兄さんのことを言ってるんですか?だったら前にも言ったはずです。私は罪深いなんて思いません」

「しかし、兄は私の慢心のせいで死んだのです。これを罪と言わずして何と言いましょう!」

「じゃあ生きることです」

「・・・は?」

「生き続けることが償いですよ。その為にお兄さんは頼久さんを助けたんだから」

「生きることが償い・・・・」

「そうですよ。罪を感じてるんなら償えばいい。そうでしょ?」

「でも、私はまた繰り返すかもしれない・・・」

項垂れる頼久の手を、あかねがそっと手に取った。

「私が傍にいます。人間は愚かだから、同じことを繰り返してしまうかもしれない。でも、私が絶対止めてみせますから!」

「神子殿・・・」

この少女は、どこまで真っ直ぐで綺麗なのだろう。

どこまでも白く、清い。

「えへへ。偉そうなこと言っちゃったかな」

照れ笑いするあかねに、思わず全てを言いそうになった。

「あの・・・!」

「はい?」

「いえ・・・何でもございません。さぁ今日はもうこれでお休みください。夜風も冷たくなってまいりました」

自分の胸に湧き上がった黒い感情を隠すように、頼久はあかねに背を向ける。

「頼久さん?」


貴方は気付いていないのですね。

私の罪は、それだけではないのです。

貴方が私に近づくほど、私は罪を犯しそうになるのです。


どうすれば貴方に届くのか

どうすれば貴方に見て貰えるのか

どうすれば貴方に愛してもらえるのか

そう思ってしまう私は、やはり罪深いのでしょう



初頼久さん。セリフだけ先に出来ていて、これを言わすなら頼久さんだろうということで彼にしました。
友雅さん、頼久さんは暗い話になりがち。何ででしょう?
作中にある「人は同じ過ちを繰り返してしまう」これはよく思いますね。
何で同じことを繰り返してしまうのか?と。で、後悔。
後悔だらけの人生なんてクソくらえと思うんだけど、振り返りさえしなければ後悔もしないのか?
あかねちゃんが泣いていたのには理由があるのですが、それはまた次回ということで(笑)