「最近物騒ねー」
教室でそんなことを言い出したのは奈津美だ。
「そうだね。もう3人目だっけ?」
言葉とは裏腹に、まったく恐がってない様子で蓮が相槌をうった。
「まさかはばたき市でこんなことが起こると思わなかったよ」
奈津美が話しているのは、最近立て続けに起こった殺人事件のことだった。
今まで3人死んでいる。被害者は男も女もいたが、死体の一部分がないのが特徴だった。
「捕まるまできっとまだ続くよ」
「ちょっと!何であんたはそんな冷静なのよ?まぁ蓮なら返り討ちにしそうだけど」
「めずらしいね。不安がってるなんて。大丈夫。なっちゃんが危ない時はちゃんと助けにいってあげるから!」
「期待してるわよ。でも何ではばたき市なの?」
「犯人がここに住んでるからじゃないの?」
「そうなの!?」
「いや、わかんないけど。全部現場がここだから、遠くに住んでるとは思えないなって」
「さすが名推理!その調子で捕まえてよ〜」
「そんな無茶な。詳しいこと知らないし。推理って言えば、まどりんが首つっこまないといいけどねー」
「いくらあのバカでもそこまではやらないでしょ。自分が関係してるわけじゃないし」
「そうだといいんだけど。まどりんは珪君まで巻き込むからなぁ」
蓮は心配そうに隣の席を見た。座席の主はいなかったが。
殺風景な部屋。マンションだろうか?
薄暗い部屋に、人影が二つあった。
壁にもたれている女を、男が覗き込んでいる。
「んっ、うん・・・」
女は眠っていたらしい。小さく動くと、目をうっすらと開けた。
「ここ・・・・どこ?」
「知る必要はないよ」
男が優しく言う。
「あなたは・・・さっきの・・・!」
女は足と腕を縛られているのに気づいた。
必死にもがくが、縄は解けない。
「無駄だよ。さぁ私を楽しませてくれ・・・・」
男の顔に残酷な笑みが浮かんだ。
手にもった小さなナイフがきらめく。
「嫌ぁぁぁ―!!」
女の絶叫が、虚しく響いた。
壁に飛び散った、血と一緒に。
「なんや、昼間やっちゅーのに静かやなぁ」
能天気な声は姫条だ。
「・・・・事件が起こってるからだろ」
葉月が静かに答える。
「ここも物騒になったなぁ。蓮ちゃんは大丈夫やろか・・・?」
「あいつは・・・平気だろ」
「そやかて、女の子やし。教室行ったらもうおらんかったけど、何や急用でもあったんか?」
「・・・藤井と紺野を送ってった」
「・・・・蓮ちゃんは恐いもんなしやな」
ここは帰り道。
普段なら絶対一緒に帰ることなどないのだが、蓮に置いていかれ、なんとなく一緒に歩いていたのだった。
「人殺して何が楽しいんやろな」
「・・・・さぁな」
「さっさと捕まえんとまだ犠牲者が出るな。どんな変態や」
姫条が悪態をついた時、パトカーが何台も横を通り過ぎ、近くで止まった。
2人は顔を見合わせる。
「まさか・・・・行くで!」
姫条が葉月の腕を掴んで、走り出した。

