「また一人死んだらしいで」
蓮、奈津美、珠美のグループに、なぜか姫条が混じっている。
「何であんたがここにいんのよ?」
奈津美が聞いた。
「女の子だけやと危ないやろ?だから俺がおんねん」
「学校まで殺人鬼がくるとは思えないけどねー」
蓮が冷静につっこむ。
「まーええやん。そんな細かいこと」
「姫条君の言うとおり、やっぱり怖いよ・・どこにいるのか分からないもの」
珠美がつぶやくと、奈津美も同意した。
「まったく警察は何してんのかしらね。さっさと捕まえなさいよ」
「手がかりがないんだよ。行きずりの相手狙ってるからさ」
「それが一番恐いのよね。自分が大丈夫なんて保障、どこにもないから」
「あーお前は大丈夫やろ。犯人も逃げてくわ」
「何ですって!?」
「おーこわ・・・」
「もーまどりんやめなよ。でも知らない人にくっついて行かなきゃ大丈夫だと思う」
「そんな小学生への注意みたいな・・・でもどうして?」
「被害者は繁華街でいなくなってるから。拉致したら騒ぎになるでしょ?ナンパでもされてついてったんじゃないの」
「そっか。そこまで思いつかなかったよ」
「・・・葉月と同じこと言うんやな」
「え?」
「葉月も同じ考えやった」
「このくらい少し考えれば分かるよ。珪君頭いいしね。警察も予想してると思う」
「あんたが葉月の話するなんてめずらしいわね」
「まぁちょっとな・・・」
「まさか、2人で何かしようとか思ってない?今回は無理だよ」
「分かっとる。そんな心配すんなや」
「殺すのを楽しんでるような奴なんだから。下手に首突っ込むと殺されるよ」
「・・・あぁ」
「・・・やめろって言っただろ」
葉月が冷ややかに言う。
「そやかて気になるやん」
散々警告されたのにも関わらず、姫条は犯人を探すつもりだった。
ニュースで分かったことを伝えて、葉月に犯人の特徴を絞ってもらおうとしたのだ。
「お前そんなに死にたいのか」
「そうやない。でも死体を直接見たら、怒りが湧いてきてん。いてもたってもいられんのや」
「・・・お前の知り合いじゃないだろ」
「そうやけど!あんな理不尽な殺され方可哀相やろ?何かしてあげたいねん」
「・・・・」
「頼む。お前は巻き込まないから」
いつになく真剣な姫条の顔を見て、葉月はため息をついた。
「・・・何かあっても知らないからな」
「おおきに。今回の死体は切り裂かれた痕があったらしい。死因は出血多量や。なぶり殺しやな・・・」
「他には?」
「耳がなかったらしいで。すごく綺麗に切れてたらしい。よっぽど鋭い刃物やったんやな」
「鋭い刃物・・・・刺し傷は?」
「多分ないと思う。切り裂かれてたってのを強調してたからな」
「・・・メスかもな」
「メス?」
「ナイフや包丁は人を切るのには適していない。耳を切断しようと思ったら、ある程度力がいるだろう。力を入れれば当然切り口は汚くなる」
「で、何でメスやねん」
「メスは手術用だからな。切れやすいようにできてる」
「・・・お前本当に頭ええな。尊敬するわ。じゃ犯人は医者か!?」
「断定はできないが、可能性は高いと思う。簡単に手に入るものじゃないからな」
「何でよりによって医者やねん・・・人を助けるのが仕事やろが!」
「・・・俺に怒鳴るなよ」
「すまん。・・・この辺で病院は一つやな」
「まさか探しに行く気か?」
「当然や。これ以上殺させん」
「・・・顔もわからないんだぞ。それに証拠がない」
「顔がいい医者なんてそんなおらんやろ?証拠なんてどーだってええ!」
「・・・・」
「さっそく行ってみるわ。葉月、おおきに」
「・・・ちょっと待て」
走りだそうとする姫条を、葉月が呼び止めた。
「何や、まだ何かあんのか?」
「・・・お前一人じゃ危険だ」
「恐がってたら何もできへん。止めても無駄やで」
「・・・・俺も行く」
予想外の葉月の言葉に、姫条は目を丸くした。
「・・・ほんまか?・・・助かる」
こうして2人は病院へと向かったのだった。
あまり広くはない部屋。
病院の一室で、白衣を着た男が椅子に座っている。
「今度の獲物は美しいものがいいな。血で染めがいのある子にしよう・・・」
そうつぶやくと、男は微笑を浮かべた。
楽しくて仕方ない、というように。

