雪がとけたら


「あー!やっぱり降ってきちゃった」

「だから今日の散策は止めとけって言っただろ?」

「今更言っても仕方ないじゃないですかー!うわーん」

ぱしゃぱしゃと

地面に落ちた雨を蹴って走る

「花梨、こっちだ」

つないだ手は

冷たい雨の中

唯一、温かくて

雨宿りのために木の下に入るまで離すことはなかった

「‥‥雪にかわりそうですね」

「そうだな。明日積もるかもな」

吐く息は白く

花梨は息を吹きかけて手をこする

「あ!」

「?」

「前にもありましたよね。こうやって雨宿りしたの‥‥」

そこまで言って

朱に染まる顔

「あ?ああ‥‥そうだったな‥‥って何赤くなってんだ?お前」

顔を覗き込まれて

花梨は後ろに慌てて身を引いた

木は少し揺れ

すこし落ちてくる雨の量が多くなった

「あ、赤くなってなんかないです!!」

「耳も真っ赤だぜ?」

「うえっ!?うそっ!?」

慌てて耳を押さえる花梨を見て勝真は笑い出した。

「もう!勝真さん!!」

「ははっ!悪い悪い。でも、あれだろ?」

「え?」

「お前が赤くなったのって、前の雨宿りのときのこと思い出したんだろ?」

あの時

後ろから抱きしめられて‥‥

今思えば

あれから勝真を意識しはじめたのかもしれない

「思い出してなんか‥‥」

「‥‥してやろうか?あの時みたいに‥‥」

「っ!結構です!!」

いつもそうだ

こうやってからかって

反応を楽しむ

だから

「勝真さんのバカ。将来、ハゲちゃえ」

「‥‥意味わかんねえけど、俺をけなしてるだろ、それ?」

「そんなことないですよ〜」

だから

こうやってお返しをしてやるんだ


でも

その度に


彼と私の住む世界は違うと

思い知らされる‥‥


「なあ、花梨」

「はい?なんですか?」

「もうすぐだな‥‥全ての決着がつくの」

花梨の顔から笑顔が消え

その瞳は

強い揺るぎ無い色を見せる

「そうですね‥‥あと‥‥少しです」

負けるという不安はない

あるのは‥‥

「俺は‥‥お前に残ってほしいなんてえらそうなことは言えない。

お前の世界に帰ったほうが、お前は幸せかもしれないしな」

幸せにする

口で言うのは簡単なこと

あいつを傷つけるもの全てから守ってやりたくても

守れないこともあるかもしれない

「それでも、願ってしまうんだ。俺の‥‥傍にいて欲しいって‥‥」

「勝真さん‥‥」

「決めるのはお前だ。でも覚えておいてくれ。俺はお前に傍にいてほしいんだ。これからもずっと‥‥」

「‥‥はい」

忘れるわけなんてない

忘れられるはずはない

たとえ

離れたとしても‥‥

この気持ちは止めることはできない

「あ‥‥雨止んできましたね」

「でも、またすぐ降ってくるだろうな」

「だとしても、明日には晴れますよきっと」

「たいした自信だな」

「はい!龍神の神子の感です!」

「はっ、なんだよそれ?」

にこっと微笑んで立てた人差し指

「じゃあ明日晴れたら伏見稲荷の怨霊退治付き合ってくださいね!それでそれで、前に買ったお団子おごってくださいね!約束ですからね!!」

「晴れたらな。ほら、帰るぞ」

つないだこの手を

信じて離さない


「ふふっ、雨、やっぱりやんだ」

この空のように

私の心に迷いはない

あなたという太陽を信じているから

全てが終わってら伝えるから



『あなたの傍にいたい』

と‥‥

FIN

2003.2.1
奈緒さんのサイト「CHERRYDOG」の28000を踏んだ記念にリクして書いて頂いた(というか奪った)作品。

素敵ですね〜。私が書くのとは大違いですね。

どうしたらこんな話が書けるのか小一時間問い詰めたいです。

こーゆーこと言ってるから駄目なんでしょうか(笑)

ありがとうございました。