「どうなってんやこのドアは!」

姫条がドンドンと叩いたが、扉はびくともしなかった。

「このドア鍵穴もないよ・・・」

鍵はかかっていないのに、扉は開かない。

「・・・ここはダメだ。他を探そう」

「でもここが出口やで!」

「・・・開かないもんは仕方ない。こうしてる間にあいつが来たらどうする」

「そうだよ。他の部屋の窓とか探そうよ」

葉月の言葉に蓮も同意する。

「・・・そうやな」

違う部屋に向かって歩き出したが、一人だけ動かない人物がいた。

「なっちゃんどうしたの?早く行かないと・・・」

奈津美は俯いてその場に立ち尽くしていた。

「・・・・もう嫌・・・」

「なっちゃん・・・」

「どうしてこんなことになるのよ!何であたしたちがこんな目にあわなくちゃいけないの!?おかしいじゃない!」

叫びだした奈津美を3人はじっと見ていたが、姫条が歩み寄った。

奈津美の肩を掴む。

「落ち着け」

「離してよ!どうしてあんたはそんなに落ち着いてるのよ!蓮も!葉月も!」

「・・・俺かて騒ぎたいわ。こんな理不尽な目におうて冷静でいられると思うか?でも騒いだところで何にもならんやろ?」

「・・・・」

「みんな必死で不安を隠しとんねん。ここでパニくったらあいつの思うツボやろ?恐ない言うたら嘘になる。でも玩具みたに殺されるんはまっぴらや」

「姫条・・・・」

「お前と蓮ちゃんは何があっても守ってみせる。安心せい」

姫条の真剣な表情を見て、奈津美も少し落ち着いたようだった。

「・・・しっかり守りなさいよ!」

照れ隠しに強がってみせる。

「まかせとき!ほな行こう」

連れ立って歩きながら、蓮が葉月に囁いた。

「まどりんもかっこいいこと言うねー」

「・・・・そうだな」

「でも助かるのは4人一緒だから!」

笑顔で蓮が言う。

「・・・ああ」

どうしてこいつはこんなに強いんだろう、と葉月は心の中で思った。


「・・・何でどの部屋にも窓がないわけ?」

この部屋で五つ目。

しかしどの部屋にも窓はなかった。

ついでに言えば電気もない。

蝋燭の頼りない炎がゆらゆらと揺らめいているだけ。

「・・・窓から外には出られなそうだな」

「じゃ出られへんやんけ!」

「もう少し探してみようよ。こーゆー屋敷には秘密の出口とかあるのがお約束でしょ?」

「ほんまかー?」

「ねぇ。鬼ごっこって言ってたけど、あの子にまだ1回も会ってないわよ?」

奈津美が訝しげに言う。

「そうやな・・・それがおかしい。俺らがどこにおるかなんて分かってそうやけどな」

「ちょっと、そしたら逃げる意味なんてないじゃない!」

「ラッキーって思おうよ。ね?今のうちに何か探そ?」

「・・・この部屋には何もないみたいだ。出るぞ」

「お、おう」

永遠に続くかと思うような薄暗い廊下を歩く。

どこか夢のようだ。

恐らく誰もが夢ならいい、と思っているだろう。

「ここ・・・台所?」

「広い家のくせに普通の台所やな」

厨房というには狭い室内。

普通の台所に比べれば広かったが。

「こーゆーさ、刃物がある部屋にいるのはマズくない?」

「何でや?・・・ってうわっ」

ガランガランと盛大な音が響く。

姫条が机の上にあった鍋を倒したのだ。

鍋が倒れたほうを何気に見やって、4人は息を飲んだ。

「キャー!!」

「おい!騒ぐな!」

姫条が慌てて奈津美の口をふさぐ。

「何で鍋の中に・・・・」

レストランで使うような大き目の鍋に入っていたのは・・・・生首だった。

「・・・昔殺されたやつのじゃないのか」

「かもね・・・あの子は本気ってことか」

「こんな・・・人を物みたいに。子供だからって許さへん!」

「あの子の目的は何なの・・・?」

その時。

風を切る音がした。

トス。

何かが壁に刺さる音。

何が起こったのか理解できない姫条の頬に、赤いすじがツーっと伝った。

壁には果物ナイフ。

「奴か!?」

「違う!誰もいない!」

蓮が叫んだのと同時に、調理器具が浮かび上がった。ひとりでに。

「伏せろ!」

葉月の声に誘われるように、一斉に4人めがけて突っ込んでくる。

姫条が奈津美を、葉月が蓮をかばうようにして床に伏せる。

ドン、ガシャンと机や壁や床に物がぶつかる音。

「今のうちにここから出るぞ!」

散らばった物達がまたゆっくりと浮かびかけている。

急いで立ち上がり出口に向かう。

ドアを閉めると同時に、ドン、と包丁が突き刺さった・・・・