「だからまずいって言ったでしょ・・・」

「死ぬかと思ったわ・・・」

蓮は葉月の方を見て、彼の表情が少しおかしいことに気づいた。

「どうしたの?」

「・・・なんでもない」

「嘘。見せて!」

強引に背中を見ると、さっき何かが当たったのかシャツが大きく裂けていた。

血も出ている。

「大丈夫じゃないじゃん!痛いよね?どうしよう・・・」

めずらしく蓮が動揺している。

そんな蓮を見て、葉月はぽんぽんと蓮の頭を叩いた。

「・・・浅い傷だ。そんなに血も出てないだろ?」

「そうだけど・・・私をかばったせいで・・・」

「お前が怪我したら俺が後悔してた。だから気にするな」

「・・・ありがとう」

何か言いたげに二人を見ている姫条に、奈津美が文句を言う。

「あんたもあれくらいしてみせなさいよ」

「何やとー?もうお前なんか絶対助けてやらん!」

「弱虫!」

「ハァ!?」

「もーやめなよ!喧嘩してる場合じゃないでしょ?・・・とりあえずあいつが何者なのか調べない?」

「調べるったってどうやって?」

「適当に部屋に入るしかないね。あいつの家なんだから何かてがかりがあると思うんだけど」

「でもさっきみたいにまた襲われたら・・・」

「・・・どこに居ても同じだ。安全な場所なんてない」

「そんな・・・」

奈津美が俯く。

「だから助かるために進もうよ。ね?」

「・・・・うん。ごめんね、蓮」

「謝ることなんかないってば」

蓮は奈津美の手を取ると、新たな闇の奥に向かって歩き出した・・・・


もう何部屋目だろうか。

一つ一つが代わり映えがない上に、数え切れないほどの部屋があるのだ。

あるいは、これもあの少年の惑わしなのかもしれない。

「・・・見ろ」

葉月が手に取ったのは、写真立てだった。

中には色あせた写真が入っている。

「これ・・・あのガキやんけ」

写っていたのは家族の写真だった。

少年と、両親らしき人物。

何の変哲もない写真だが、どこか違和感を感じる。

「あの子・・・写真とまるっきり同じじゃない?」

「そりゃ本人やからな」

「そーじゃなくて。これ結構古い写真でしょ?でも彼は年をとってない・・・・」

成長が著しい年頃だろうに、まったく変わらないというのはおかしい。

「まさか・・・幽霊?」

「・・・・かもな」

「・・・マジか?」

「幽霊ならあの変な力も納得がいく・・・めんどいことになったな」

「どうして?」

「最悪、戦うことになった場合、俺達は明らかに不利だ」

「こっちは四人もおるんやで?」

「・・・幽霊は死なない。俺達には成仏もさせられない」

「そんな!じゃどうすればいいの?」

「・・・・逃げるしかないってことだ」

結局逃げ続けることしかできないのか。

その時。

ガタンッ!

「わぁっ!?」

急に壁に掛かっていた絵が落ちてきた。

「びっくりしたぁ・・・・」

特に何も変わらない状況に四人が胸を撫で下ろした時。

それは現れた。

突然に。

「みーつけた」

「「「「!」」」」

鬼役の子供は、下を向きながらぷかぷかと柱に浮いている。

表情は見えない。

「随分のんびりしてるから、退屈しちゃったよー。もっと逃げ惑ってくれないとオモシロクないじゃん」

「お前・・・幽霊なんか?」

姫条の問いに、子供は笑い出した。

「アハハハっ!ユーレイかぁ。でもそれは正解じゃないなぁ。ボクはね、モンスターなんだ」

「モンスター?」

「かっこいいでしょ?でもパパとママは怪物って呼んだ。モンスターの方がカッコイイのに」

「・・・親はどうしたんだ」

「殺したよ」

さも当たり前のように答える。

「自分の親やろ・・・?」

「向こうが先にボクを殺すからいけないんだよ」

「・・・?」

葉月が訝しげな顔をする。

先に殺した?

「いけない。喋りすぎちゃったみたいだネ。誰からいこうかな?背中を怪我してるお兄ちゃんにしようかな?」

「どうして・・・知ってるの?」

「だってボクがやったんだもーん。避けられなきゃシンゾウに刺さってたのになー」

ゲームに失敗したかのような、軽い口調で言う。

いや、彼にとってはこれはただのゲームでしかないのだ。

「人は物とちゃうんやで!」

「ニンゲンなんてみんなボクのお人形だよ。それじゃあ・・・」

唐突に。

何かが宙を舞った。

「!わぁっ!」

避けきれずにぶつかって床に落ちる。

「蓮!?」

「今のうちに逃げるよ!」

「蓮、ナイス!」

子供が油断している隙を狙って、蓮が椅子を投げたのだ。

狙いは性格に決まり、子供はまともに椅子に跳ね飛ばされた。

扉から出る瞬間、蓮が叫ぶ。

「勝つのは私達よ!」

これでまたゲームはふりだしに戻った・・・