「神子殿、花は好きかな?」
唐突に友雅が聞いた。
「好きですよ。どうしたんですか?」
「珍しい花を手に入れたのでね。神子殿に差し上げようと思ったのだよ」
言いながら、友雅は一輪の青い花を差し出した。
「わぁ可愛い!初めて見ました!」
「神子殿も初めてなのかい?では余程珍しいのだろうね。にげらという名前だそうだよ」
「ニゲラ?外国の花なのかなぁ?蓮の花に似ていますね」
あかねの答えを聞いて、友雅が微笑む。
「私も同じ事を思ったよ。青い蓮なんて珍しいと言ったら、商人に笑われた」
「友雅さんでも、そんなことあるんですね」
クスっと笑って、あかねは再び花を眺めた。
「でも私が貰って良かったんですか?他にあげる人がいたんじゃ・・・」
「神子殿もお馬鹿さんだね。最初に言っただろう?君の為に手に入れたのだと」
「そ、そうですか。でも、どうして・・・?」
友雅は肩を竦める。
「私にそれを言わせるつもりかい?神子殿も人が悪いね」
「え?」
「好きな女性に花を贈りたいと思うのは当然だろう?」
「・・・・。えぇっ?!」
やっと言葉を理解したらしいあかねが、真っ赤になる。
友雅は屈んで、あかねと目線をあわせた。
「私はあかねが好きだよ。あかねは?」
ストレートに聞かれて、あかねはパニックになっていた。
「えっと!でも、友雅さんは女の人みんな好きじゃないですか」
あかねの言葉に、友雅は苦笑する。
「私は余程信用がないのだねぇ。では違う言い方をしようか」
突然真顔になり、あかねを見つめる。
射抜かれてしまいそうな、激しい視線だった。
「お慕いしているのだよ。君の世界では、愛してると言うのだったかな?天真がそう言っていた」
あかねは何も言えない。
友雅が自分を愛している?
自分の片思いだとずっと思っていたので、突然の告白が信じられなかった。
「あかねは私のことを、どう思っている?」
静寂が二人を支配した。
永遠とも思える時間だった。
でも。
今言わなくては。
「私も・・・ずっと好きでした」
きっと抱きしめてくれる、そう思っていたのに。
しかし、友雅は悲しそうに微笑んだ。
「・・いくら惹かれあっていようと、この恋は成就しないのだ」
「え?」
「必ず別れが来る。私たちは住む世界が違うのだから」
「そんなことないです!私は京に残ります!」
「この世界など、一時の夢幻に過ぎないのだよ・・・」
「友雅さん・・?」
いつもと違う友雅の様子に、あかねは無意識に彼に手を伸ばした。
しかし、友雅はするりと逃げる。
あかねに贈った花を指差した。
「その花の花言葉はね・・・」
そこから先は聞こえなかった。
視界は闇に包まれた。
「うーん・・・?」
目を開けると、十六夜の月が眩しいほどに顔を照らしていた。
衝立を置き忘れたらしい。
そのせいで月明かりで目が覚めてしまったのだ。
「何か夢見てた気がするんだけどな・・・」
大事なことだった気がするのに、何も思い出せない。
あかねは目をこすって気がついた。
「あれ・・・?何で私泣いてるんだろう・・・?」
夢の中の恋。
目覚めれば、記憶すら残らない甘い夢。
まるで私たちのようだと思わないかい・・・?
久々の遥かです。
本でニゲラという花の花言葉は「夢の中の恋」だと知って、これは使わないと!と思って。
青だけじゃなく、色んな色があるみたいです。京にあったとは思えませんが(笑)
友雅さんは、こーゆー話がよく似合いますなぁ。
色んな想いが伝われば幸いです。
