明日は友雅の誕生日。
あかねは悩んでいた。
「プレゼントは用意したけど、まずここに来てもらわなきゃいけないんだよね・・・ってことは文を書かなきゃ。でも何て書こう・・・・?」
部屋の中でぐるぐる回りながら、唸っている。
と、急に顔がパアっと輝いた。
「そうだ!これなら面白いよね。藤姫―!!!」
あかねは、ばたばたと藤姫の部屋へ向かった。
ここは友雅の屋敷。
くつろいでいた友雅に、女房が文を持ってきた。
「神子さまからですよ」
そう言って差し出された文は、銀色の紙に橘の花が添えてある。
「あかねから?物忌みにはまだ早いはずだが・・・」
あかねは文を書くのが苦手だった為、物忌みの時にしかよこさない。
急にどうしたのだろうか?
訝りながら、紙を広げる。
と、そこには和歌が一首書いてあった。
「おや、歌が詠めるようになったのかな?」
朝霧の いふにもあまる 匂ひいづ きこうつゆやみ てまえ片待
「・・・?」
眉をひそめる。
意味が分からない。
これはただ単語を連ねただけだ。
自分一人では作れないはずだから、藤姫にでも聞いたのだろう。
そうするとこんな和歌とも思えないようなものをよこしたりはしないはずだ。
「他に意味があると・・・?」
何回か口ずさんでいるうちに、友雅は和歌の真意に気がついた。
顔がほころぶ。
「はははっ。やられたよ、神子殿・・・・」
6月11日。
「あの歌で伝わったかなぁ?」
また落ち着きなく、あかねはウロウロしていた。
「馬鹿な和歌を作るって呆れられてたらどうしよう・・・」
青ざめかけた時、庭に人影が現れた。
「お招きありがとう。神子殿」
「友雅さん!良かったぁ」
ほっと胸を撫で下ろす。
「そんなに喜んで貰えると嬉しいね。文の謎かけも楽しませてもらったよ」
「そうですか。分からなかったらどうしようって心配してたんです」
「ふふ、面白いことを考え付く子だね。しかし何か用があったのかい?」
友雅の言葉で、あかねは当初の目的を思い出した。
慌てて部屋へ駆け込んでゆく。
「ちょ、ちょっと待っててください!」
「あかね?」
友雅が呆気に取られているうちに、ほどなくして戻ってきた。
手には小さな香袋を持っている。
「今日お誕生日ですよね?これ贈り物です!」
にこにこしながら手渡してくる。
「確かにそうだが・・・どうしてだい?」
「私の世界では誕生日の人には贈り物をするんですよ。大したものじゃないですけど・・・」
「それは・・・ありがとう。自分で作ったのかい?」
「はい!藤姫に教えて貰って香をあわせました!友雅さんの好きな侍従です」
思わず笑みがこぼれた。
目の前にいる、無垢な少女が愛しくてたまらなくなる。
自分の為だけに、ここまでしてくれるとは。
「・・・大切にするよ」
「実は・・・もう一つあるんですけど、こっちは自信ないんです・・」
言いながらモジモジとしている。
「ふふっ何だい?あかねがくれるものなら何でも嬉しいよ」
「そ、そうですか?和歌なんですけど、笑わないでくださいね・・・」
「また謎を解けと?」
いたずらっぽく友雅が聞く。
「違います!ちゃんと作りました。・・・いきます!」
和歌を詠むには不似合いな気合いを入れると、あかねは小さく詠み始めた。
久方の あやし月読 溺るこな あれあまつぼし さらばひかひず
一瞬、夢かと思った。
しかし少女は赤くなって俯いている。
自惚れてもいいのだろうか?
「・・・・私も返歌をしないとね」
茜さす 懐かしはゆみ さつきやみ きさんなにもが ふみたがはなみ
「どういう意味ですか?」
友雅は微笑んで、あかねを引き寄せた。
「君が戻ってくるのはこの腕の中だよ・・・かぐや姫」
もう過ぎてますが、友雅さんの誕生日SSです。
今回は悲しいことは一切なしです。
あ、和歌の解説をしなくてはいけませんね。
最初の文の歌は、和歌としての意味はありません。
クイズみたいになってるんです。
句の頭の文字を5文字繋げてみてください。
分かりました?
次のあかねの歌は
あなたは妖しい月 女性の心を捕らえて離さないの 私は夜空の星 そうすれば傍にいられるでしょう?
あかねちゃんにしては大胆な歌。
それを聞いた友雅さんの返歌。
闇の夜で優しく輝こう 帰ってくる君が迷わないように
枕詞のあかねさすは、あかねに掛けています。
自分を月として、かぐや姫に向けた歌ですね。
何て恥ずかしい歌(笑)
内容のない話は作りづらいです。
ですが、楽しんでいただけたら幸いです。