あかねはそわそわしていた。
本人は隠しているつもりなのだろうが、周りからしてみればバレバレだった。
あかねが何も言い出さないので、なんとなく聞きずらく謎のままだった。
だが、この男はそんなことおかまいなしだ。
いつものように微笑を浮かべて、あかねに問い掛けた。
「あかね。どうしてそんなに落ち着かないんだい?」
「あ、友雅さん・・・分かっちゃいます?」
「みんな知ってるよ」
「えー!気づいてないと思ってたのに」
「ふふっ君はすぐ顔に出るからね。そこが可愛らしいのだが」
「もう、友雅さんたら。・・・もうすぐ誕生日なんです。そういえば京の人はお祝いとかしないんですね」
「そうだね。自分の生まれた日は人には教えないのだよ。あかねの世界では違うのかい?」
「秘密なんて面白いですね。私の世界では、誕生日は特別な日なんです。ケーキ・・・あ、お菓子なんですけど、それに年の数だけ蝋燭を灯して吹き消すんですよ」
「それは楽しそうだね。しかし君は嬉しくなさそうだけど?」
友雅がそう言うと、あかねは困ったように微笑んだ。
「年をとるのが・・・嫌になっちゃって。誕生日が近くなると、ずっとこのままでいたくなるんです。昔は早く大人になりたいって思ってたのに」
あかねが答えると、友雅は笑い出した。
「ははっまだ若いのに困った姫君だ。女性は何歳でも容姿の衰えを気にするものなのかねぇ」
「笑わなくてもいいじゃないですかー。それに私は見た目のことを言ってるんじゃないんです」
「ほぅ?」
友雅が片眉を上げた。
「友雅さんはまた笑うかもしれないけど・・・不安なんです。このまま大人になるのが」
友雅はしばらく考えたのち、口を開いた。
「少し・・・外を散歩しないか?」
「散歩・・・ですか?」
突然の提案に驚いているあかねの手をとると、友雅は屋敷から出た。
「あかねは大人になりたくないのだろう?」
「えっ?」
「だから年をとりたくないんじゃないのかい?」
「そう・・・かもしれません」
「大人になることから逃げているから、不安になるのだよ。なぜ嫌なんだい?」
あかねは少し考えているようだった。
「・・大人には汚い印象しかないんです。私はそうはなりたくない」
「では私も汚いのかな?」
「友雅さんは違います!」
「それではあかねも汚くない大人になればいい」
あっさりと答えをだした友雅に、あかねは驚いた。
「でも・・・先のことなんて分からない」
「それが人生だよ。全て分かってしまったら、私は退屈で死んでしまうだろうね」
「またそんなこと言って。でもその通りかもしれません」
「自信を持ちなさい。逃げていてはだめだよ」
「・・はい」
「私はね、こう思うのだよ。年を重ねることから目を背けている人間は醜いとね」
「醜い・・・・」
「いつまでも若さにしがみついているのは、みっともないだろう?いい大人が幼い様子なのは目も当てられない」
「・・・」
「年を重ねることは、不幸ではない。年月でしか出せない美しさもあるのだよ」
「年月でしか出せない美しさ・・・・どんなものなんですか?」
友雅は辺りを見回すと、傍に咲いていた南天の枝を手折った。
「この実はまだ熟していない。君のように。南天が赤くなるように、あかねが大人になるのを楽しみにしているよ」
そこまで言って、友雅は優しくあかねを見つめた。
「ありがとうございます。目を逸らしていても何も変わらないですもんね。ちゃんと前に進まなきゃ!」
元気になったあかねに、友雅はまた質問をした。
「ところで誕生日は何をする日なんだい?」
「この世に生まれてきたことを感謝するんです。ありがとうって」
「では私も感謝しなければならないな。君に出逢えたことに」
「私も友雅さんと出会えてよかったです」
「そうか。ではこれくらいは許しておくれ」
そう言うと、ふんわりとあかねを抱きしめて頬に口付けをした。
「と、友雅さん!!」
真っ赤になっているあかねを笑いながら、友雅は心の中でつぶやいた。
これ以上魅力的になったら、私は一体どうなってしまうんだろうね
書き直しました。
これは今の私自身の気持ちですね。