なぁ・・・あんた誰なんだ?



いつものようにパソコンを立ち上げると、メールが届いていた。

見慣れないアドレス。

タイトルは「ようこそ」になっている。

ウイルスかと思ったが、添付ファイルはついていない。

害はなさそうなので、開いてみることにした。


王子様へ
勇敢な王子よ。
眠り姫を救い出してください。
下のアドレスをクリックすると、詳しい説明が見られます。
あなたをお待ちしております。


「何だこりゃ?」

俺は王子なんて名前じゃない。

真壁桂だ。

それよりこいつは誰なんだ?

王子って何だよ?

姫って誰だよ??

「わけわかんねー」

このままにしとくのも気持ち悪いから、とりあえず説明を見てみようか。

俺がアドレスをクリックすると、真っ黒い画面が現れた。

そこにポツポツと字が浮かび上がる。

「悪戯にしちゃ手が込んでるな」


お待ちしておりました。王子様。
どこかで眠っているお姫様を見つけ出して目覚めさせてください。
しかし色々なものがあなたのことを阻むでしょう。
気をつけて。
タイムリミットは5日間。
動けるのは1日1時間までです。
本気でやらないと、困るのはあなたです。


そこで文章は途切れた。

「新手のゲームの勧誘か?まぁ1時間くらいならつきあってやってもいいけどな」

まるで俺の呟きが聞こえたかのように、画面が変わった。

一面の緑。

森の中のようだ。

俺のキャラらしきものが、ぽつんと立っている。

「探せったってよ、どーすりゃいいんだよ」

ぶつぶつ言いながら、動かしてみる。

マウスでクリックした所まで歩いていくようだ。

しかし、周りには木しかない。

いい加減緑の画面を見るのにも飽きてきた頃、突然視界が広がった。

「湖か・・・?」

傍まで歩いていくと、誰かが水際に座っていた。

「こんにちは。王子様」

「うわっ!?」

いきなりパソコンから声が聞こえて、俺は危うく椅子から落ちるところだった。

「僕は森に住んでる小人だよ」

「小人〜?誰か他のプレイヤーが動かしてんのか?」

思わず画面に話し掛けた俺は、あり得ないことを目の当たりにした。

「違うよ」

「俺の声が聞こえんのか!?」

「もちろん。だってこれは普通のゲームじゃないもん」

「普通のゲームじゃない?」

「うん。詳しくは話せないけどね。それにのんびりしてると1日が終わっちゃうよ」

「そ、そうだな。オヒメサマってのはどこにいるんだ?」

「この奥だよ」

「近いのか?」

「近くてすごく遠いよ」

「そんななぞなぞみたいなこと言うなよ」

「お姫様は目を覚まさないんだ」

「それはさっき聞いた。けど俺にどーしろってんだ?」

「知らないの?王子様のキスでお姫様は目を覚ますんだよ」

「はぁ?おとぎ話かよ」

「でもね茨でお城に入れないんだ」

「茨?」

「そう。お城を守ってるの。だから剣を探さないとだめだよ」

「王子なら剣くらい持ってんじゃねーのか?」

適当に言うと、小人は首を振った。

「王子様は何も持ってないんだよ。だから早く見つけなきゃ。誰かに襲われたら死んじゃうよ?」

「よえー王子だな。剣はどこにあるんだ?」

「あそこ」

小人が指差した方は、湖。

まさか水の中か!?

「魔女が沈めちゃったの。王子様なら見つけられるよ・・・・・」

波もたっていない水面を見ながら、ため息をついた。

「まさか潜れってことか?こんな広いとこどーやって・・・・」

文句を言おうと思って顔を戻すと、そこには緑色の景色しかなかった。

どこを見ても、小人はいない。

「言いたいことだけ言って、消えるなよな・・・」

ため息をつく。

潜るしかないのかよ・・・・

もっと傍に寄ると、違和感を感じた。

水がゆらめいてさえいない。

氷ついているかのような湖。

「ここは風も吹いてないのか?」

ゲームだということも忘れて、俺はそこに立ち尽くしていた・・・



「ねぇ、始まったよ」

深淵から響く

楽しそうな、声。