「真弓!とうとう本番ね。あんたなら大丈夫よ」
「ありがと。こんな日がくるとは思わなかった。夢みたい」
とうとう本番だ。
一生縁がないと思ってた主役。
さぁ私はお姫様。
王子様に見つけてもらわなきゃ。
体が勝手に動いているようだった。
今までで最高の踊り。
音楽が風のように私を包み、まるで楽園にいるよう。
舞台は何事もなく進み、クライマックスへ向かった。
眠っている私を、王子様が目覚めさせるシーン。
抑えても、わくわくしてくる。
早く私を見つけて!
その時。
「危ない!」とどこからか聞こえた。
空気を裂く音がして、ガシャンッブツっという音が続いた。
誰かが耳を刺すような悲鳴をあげる。
また悲鳴。
騒然とする客席。
誰なの?
私の舞台を邪魔するのは。
私は続けようとしたけれど、体が動かなかった。
落ちてきたライトで、膝から下が千切れていたのだ。
散乱する硝子の破片。
流れ続ける鮮血。
私の体から離れた足が、軽やかに踊り続ける。
履いているのは赤いくつ。
私の血で真紅に染まった・・・・
客席に視線をめぐらすと、彼が薔薇を抱えて座っていた。
彼が微笑む。
だから私も笑みを返す。
「今の君は一番美しいよ。溺れるほどの赤に囲まれて・・・」
悲劇の姫は、目覚めない
だって私はお姫様じゃないから
ただ優しいおばあさんに拾われた貧乏な女の子
夢の赤いくつに惑わされた
可愛そうな女の子
何かを見ていたらしい人影が、哀れむように呟いた。
「魔女からの贈り物は、残酷な夢・・・でも夢は貰うものじゃないよね。代わりにキミは足を差し出したんだから」
でも私はバレリーナだから
舞台が血で染まっても降りるわけにはいかないの
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