見慣れない町並み。この街の人間じゃないことを感じさせられる。

「・・・何でそんなに落ち着かないんだ?」

回りをキョロキョロ見渡してる私に、珪君が尋ねてきた。

「何があるか覚えとこうと思って。明日迷わないように」

「・・・どうやったら迷うんだよ」

「だって、引っ越してきたばっかで道わかんないんだもん」

「・・・いつこっちきたんだ?」

「一週間前。ごたごたしてて、あんま出歩けなくてさ」

「そうか。だから今まで・・・」

「え?何?」

「いや・・・何でもない」

「変なの・・・珪君てあんまり喋らないね」

「・・・ああ」

「私も普段はそんな喋るほうじゃないんだよ」

「・・・嘘つけ」

「本当だってば。今日もすごい不安だったの。泣きそうだったんだから」

「・・・泣いてなかったろ」

「そりゃ泣かないよ。涙は人に見せないの。でも・・・前の学校思い出してばっかいたんだ」

「卒業したんだろ?」

「うちの学校は中高一貫なの。だからみんな持ち上がり。・・・ごめん、この話はここでおしまい。珪君は小学校からここなの?」

暗い奴だと思われたかもしんない。だから私は慌てて話題を変えた。

「いや・・・中学から。小学生から海外に行ってたんだ・・・」

「帰国子女ってこと? どこ行ってたの?」

「ドイツ。祖父さんがいたんだ」

「ふーん・・・。じゃドイツ語話せる?」

「ああ・・・会話程度はな」

「かっこいいね!英語じゃないってとこが」

「・・・そうか?」

「みんなと同じじゃつまんないじゃん」

「お前・・・変わってるな」

「よく言われる。・・・あ、私こっちだから。また明日ね!」

「・・・ああ」

笑顔で手を振って別れた。珪君は振ってくれなかったけど。

ちょっと辛気くさい話しちゃったかな。

家まで一人で歩きながら、今日のことを思い返した。

どうなることかと思ったけど、友達できてよかった。珪君も友達だと思ってくれてるかな・・・?

マンションの中に入り、誰もいない家のドアを開ける。ダンボールがちらばってた。

「片付けなきゃなー」

思ってもないことをつぶやきながら、自分の部屋に入る。

ベッドの上に倒れこんで、ため息をついた。

また畳の部屋。前の家も畳だったから、フローリングにしてって言ったのに。

「・・・・なんでだろ」

白い天井に向かって言葉が漏れる。

珪君はどちらかと言うと苦手なタイプだった。

私はあまり話さない方だから、なっちゃんみたいに少しくらいおしゃべりなほうがつきあいやすい。

なのに。

仲良くなろうと必死だった。多分今までで一番話し掛けただろう。

かっこいいからじゃない。 それ以外にどこか・・・とても強く惹かれたんだ。

言葉で表せない何かに。それが恋なのかどうかは、分からなかったけど。

「まだちょっと心細いけど、珪君との出会いは運命だったのかな・・・?」

そんなことを考えた自分に。笑ってしまった。