さっきから恐ろしく遅い速度で先生が教科書を読んでる。
もう3回読んじゃったよ・・・。クラスの半分はこそこそ話してた。
珪君はまた寝ちゃったし、退屈だなぁ。
窓の外は青い空。時折、風が頬を撫でる。外は気持ちいいだろうな。
あくびをかみ殺しながら、私も寝ることにした。
やることないし・・・
いつもだったら半分意識は残っていて、すぐ目が覚めるのだが、今日は疲れていたのか本気で眠ってしまった。
先生が隣に来たのにも気づかないほどに。
「この二人は仲良く居眠り?これで二人とも成績いいんだから、かわいくないわねぇ。大滝さんは国語のテスト満点だったから、やりがいのある生徒が入ってきたと思ったのに・・・」
先生のそんな声に、教室はガヤガヤし始めた。
「満点だってよ! すげーな」
「見たことないと思ったら、外部生だったんだ」
「かわいいし、後で声かけよー!」
「あ、俺も!」
男子生徒達がささやきあう。
「やっぱり頭いいんじゃん。テストの時強い見方ができたぞ。・・・でも勉強してそうには見えないんだけどなぁ」
奈津実はそうつぶやいた。
キーンコーンカーンコーン。チャイムの音が遠くに聞こえて、ハッと目を覚ます。
顔をあげると先生が出て行く所だった。
先生はチラっとこっちを見ると、ため息をついて姿を消した。
寝てるのバレてたのかも・・・だって退屈だったんだもん。
その後の授業も適当に過ごし(珪君はほとんど寝てた)お昼休み。
「レン!こっちで一緒に食べようよ」
「あ、うん」
なっちゃんが自分の席から声をかけてきて、私はお昼を持ってそっちに向かった。
「なにーコンビニご飯なの?お弁当は?」
私が隣に座ると、なっちゃんが聞いてきた。
「今日寝坊しちゃったから作れなくてさ。なっちゃんのおいしそうだね」
「まさか自分で作ってるの!? えらいねぇ。私料理なんてできないよー」
「お母さん働いてて忙しいから。料理は私担当なの。でもまた寝坊しそうだから夜中に作っちゃおうかなー」
「やっぱりえらいよ。お母さんの負担にならないようにするなんてさ」
「別に。作らないと食べれないからだよ。それに自分のために作るのって虚しいよ」
「彼氏に作ったりしないの? 手作りお弁当なんて作れる子少ないよ」
「彼氏なんていないよ。うちの学校女子校だったし。なっちゃんはいるの?」
「私もいないけど。蓮はいるのかと思ったよ。女子校ってどんな感じ?やっぱり女同士とかってあるの?」
なっちゃんは興味津々だなぁ。みんな女子校に対して変なイメージあるよね。
「そんなことないよ。女の先輩に騒いだりとかはあったけど。男子がいないと楽チンだよ」
「ふーん。蓮、後輩にモテたでしょ?」
そんなこと急に言うから。飲んでたレモンティーを吹き出してしまった。
「もう、なっちゃん変なこと言わないでよ。そんなことないよ。お菓子もらったりとかはあったけど」
「そーゆーのをモテるって言うの。やっぱね。蓮、背高いし、かっこいいもん。中性的だよね」
「そうかな? なっちゃんみたいにかわいい方が、女の子は幸せだよ」
今度はなっちゃんが吹き出す番だった。
「ちょ、ちょっと・・・あんた普通に恥ずかしいセリフ言うね。ははーん。そーやって女の子たぶらかしてたんでしょ?」
「何ソレ。たぶらかしたってしょうがないじゃん」
二人で顔を見合わせて笑いあった。
「大滝さん!」
急に呼ばれて顔を見上げると、男の子達が何人か立っていた。何か用があるのだろうか。
「大滝さん、外部から来たんだってね」
「そうだけど。何で知ってるの?」
「現国の先生が言ってたからさ。頭いいんだね」
「そんなことないよ」
「またまたぁ。謙遜しちゃって。ねぇ、友達になろうよ!」
「俺も!どーやって話し掛けようか考えてたんだ」
そう言って男の子達は自己紹介し始めた。 名前覚えられるかなぁ?
「あ、そうだ。大滝さん葉月と知り合いだったの?」
「違うよ。ここで初めて会ったの。何で?」
私がそう言うと、彼らは顔を見合わせた。
「いや・・・随分仲良さそうだったから。あいついつも一人でいるし」
「そんなに仲いいわけじゃないよ。私が一方的に話し掛けてるだけ・・・」
「ほらあんた達!うちらはお昼食べてんだから、邪魔しないでよ」
なっちゃんが、そう言って追い払う。 助かった。
「何だよ。藤井。 じゃ大滝さんまたね〜」
「あ、うん・・・」
慣れない笑顔を作ったせいで、顔がこわばってる。
「大丈夫? 男に慣れてないんでしょ?」
「そんなことはないけど、あーやって囲まれるとやだな。私にわざわざ話し掛けてどーすんだろ。あ、なっちゃんありがとう」
「あんたも鈍いねー。狙ってんだよ」
「は? 誰を?」
「あんたを」
私は笑ってしまった。
「そんなことあるわけないじゃん。 こんな男女」
「蓮は美人だよ。スタイルもいいし」
「褒めたって何も出ないよ。私は性格悪いからダメ」
なっちゃんは微笑で「本当に性格悪い奴は、謙遜なんてしないの。それに私は蓮が嫌な奴だったら一緒にいないよ」
「・・・ありがとう。あ、そうだ。なっちゃんは好きな人いないの?」
「今のところはねー。これから物色するつもり。外部生にイケメンいないかな?」
「イケメンねぇ・・・」
「やっぱかっこよくないと!あ、でも葉月はだめね。テングだから」
「テング? 何で?」
「あたしがこの前、雑誌たくさん出ててすごいねーって言ったら"だから?"ってウザそうに言ったんだよ! 超やな奴」
「雑誌?」
「知らないの? あいつモデルやってんだよ」
「へー・・・知らなかった。あんま雑誌とか読まないし。すごいね」
「しかも嫌味なことに、成績は学年トップ、運動神経抜群。世の中不公平じゃない?あ、蓮もモデルとかやってないの?」
「私はダメだよ。写真撮られるの嫌いだし。珪君、頭もいいのかぁ。あんな居眠りしてるのに」
「居眠りって言えば、あんたも1時間目寝てたでしょ」
「何で知ってるの!?」
「クラス全員知ってるよ。先生が横に立っても気づかなかったでしょ?そーいえばやっぱり頭いいんじゃん!国語のテスト満点なんて」
「やっぱ先生にバレてたんだぁ。満点ってほんとに? まぐれだよ」
「知らないの?ま、入試の結果は教えないもんね。テストの時はよろしく!」
「だからーまぐれだってば。国語は好きだからだよ。勉強しなくても解けるし」
頭いいと思われるのは気まずい。 本当にバカなのに。勉強大ッ嫌いだし。
受験勉強だってほとんどしなかった。運が良かっただけ。
「あたしも嫌いー。なんでテストなんてあるんだろ? あ、部活決めた? あたしチアリーディング部なんだけど、蓮もどお?」
「すごいね。私は運動部はちょっと・・・根性ないし。文化部か、帰宅部だな」
「残念。 吹奏楽部は顧問ヒムロッチだから厳しいよ」
「じゃ入るのやめよ」
二人で笑いあう。 昨日まで感じてた不安なんてどこかに吹き飛んでしまった。
後ろばっかり見てても、現実は何も変わらない。