12月も終わりに差し掛かったある日。
「蓮ちゃんはクリスマス何かするん?」
「んー別に何もないよ。ケーキ食べるくらい」
「ツリーとか出さないんか?」
「どこいっちゃったかわかんないんだもん。ショッピングモールとかのでかいツリーは見るの好きだけど。まどりんは出すの?」
「いや俺も出さへんけど。つーか男の一人暮らしでツリー飾ってたらきしょいやろ」
「それもそうだね。あ、クリスマス何か予定あるの?」
「蓮ちゃんの予定がないって知ってたら入れへんかったのになぁ。デートやねん。・・・ケーキとやけど」
「ケーキとデート??あ、彼女外人なの?」
「なんでやねん!ケーキ売りのバイトや。時給いいから引き受けてしもうたけど、これほど寂しいバイトもあらへんやろなぁ」
「ケーキの売り子なのー?あれはツライよ。サンタの格好して愛想笑いしながらバカップルの相手しなきゃいけないんだよーしかも売れなきゃ帰れないし」
「追い詰めるようなこといわへんでくれ・・・」
俺が落ち込んでいると、蓮ちゃんは肩をぽんと叩いて言った。
「がんばってよ!サンタさん」
「どうせなら蓮ちゃんだけのサンタになりたかったわ・・・・」
「・・・それはまどりん次第だね」
「・・・?」
「クリスマスケーキはいかがですかー?あ、ありがとうございます」
きつい。
何度思ったやろか。
無理して標準語喋っとるし、この格好は恥ずい。
子供に「あのサンタさん変!」と叫ばれるし、寒い。
「ほんま引き受けなきゃよかったわ〜」
ため息をつきながら時計を見ると、もう9時やった。
カップルが仲良さそうに歩いてるのがいまいましい。
ケーキはあと一つ。
これが売れれば帰れるんに、どうしても売れへん。
何で一番でかいやつが残るんかなぁ・・・。
ぼやーっと空を見上げていると、その声は突然聞こえた。
「ガングロサンタさん。ケーキ下さい」
聞き慣れた声。
「蓮ちゃん!?」
「がんばってる?」
ニコニコしながら彼女は立っていた。
どうしてここにおるんや?
幻覚か!?
「ちょっとまどりん聞いてる?」
ぺちぺちと頬を叩かれる。
「あ、ああ・・・何でここにおるん?」
「ケーキ買いに。それ売ってよ」
「ほんまに買いにきたんか?これ一番でかいやつやで?」
「私が食べたいんだからいーの。それしか残ってないんでしょ?」
「でも一人じゃ食べきれ・・・・」
そこまで言いかけて気づいた。
葉月と食べるんか・・・
蓮ちゃんが一人で過ごすはずがないやんか。
一瞬でも喜んだ俺はバカや。
「もー早く!」
俺の気持ちを知ってか知らずか、蓮ちゃんは急かしてくる。
「すまん・・・ほな三千円です・・・」
「・・・はい!じゃ、早く」
「早くって・・・もうケーキ渡したやんか」
「ケーキじゃないよ。もうバイト終わりでしょ?着替えてきて」
何を言ってるのかよくわからへんかった。
「言うてる意味がようわからへんねんけど・・・」
「そのままで帰るつもりー?私は別にいいけど」
「葉月と会うんやないのか・・?」
「はぁ?何言ってんの?私はサンタさんを迎えに来たの!」
「サンタって俺か?」
「他に誰がいるの。あ、あの言葉は嘘だったわけー?」
あの時の俺次第っていうんは、このことやったんか・・・
「嘘やあらへん!」
「じゃ早く!何のためにケーキ買ったのかわかんないじゃん」
「それじゃ俺のバイト終わらせるために・・・」
そう言うと、蓮ちゃんは微笑んだ。
「クリスマスプレゼントってことで。一緒に食べよ」
人気のない公園でベンチに座りながら。
俺は夢やないかと思っとった。
隣には好きな子がおって、俺にわざわざ会いにきてくれた。
ほっぺたをつねってみる。
・ ・・痛い。
「何やってるの?ケーキ一人半分だからね」
ケーキの箱を抱えながらマジな顔で言う。
「そんな食えんって」
思わず笑ってしもうた。
「やっとまどりん笑顔になった。・・・急に迷惑だった?」
「そんなわけあるかいな!めっちゃ嬉しいで。・・・嬉しすぎて信じられんのや」
「変なの。じゃ乾杯しよ!」
さっき買ってきたジュースの缶を差し出す。
「ほな・・・」
カチンと音がして、缶が触れ合った。
「「メリークリスマス」」
「・・・なんやこんなクリスマス初めてや」
「私だって初めてだよ。公園でケーキ食べるなんて」
「あ、金は俺が払う」
「いいの。私からのプレゼントだから」
「おおきに・・・」
「サンタさんは私に何をくれるの?」
「そうやったな・・・今は何も持ってへんけど、俺の愛や!」
いつものように「いらなーい!」と言われると思っとった。
でも帰ってきた答えは・・・・違った。
「・・・・じゃ貰おうかな」
「・・・・え?」
「来年は私だけのサンタクロースね」
目の前には彼女の微笑があるだけ。
これはクリスマスの奇跡。
Mery X'mas