この笑顔も

この涙も

あなたの為にあるの


「友雅さん、私のこと嫌いになったのかなぁ・・・」

思わず漏らした呟きを、藤姫に聞かれてしまった。

「まぁ、神子様どうされたのですか?まさか友雅殿が何かしたのですか!?」

しまった。興奮させてしまった・・・

「ち、違うよ。最近来てくれなくなったなって。たまに一緒に怨霊退治に行っても、目あわせてくれないし・・・」

自分で言いながら、落ち込んできてしまった。

前は毎日のように、ここに迎えに来てくれたのに。

「それは友雅殿が悪いですわ!!私が注意します!」

「えっ!いいよ、気にしないで。きっとね、私が何かしたんだと思う・・・」

「神子様・・・・」

「あっあれっ?どうして涙が・・・・」

とめどなく涙が溢れてきて、藤姫に抱きついて泣いてしまった。

ああ・・・私は

友雅さんが、好きなんだ。


「神子様、本人に聞いてみるのが一番ですわ。何か理由があるのかもしれませんし」

あの後、藤姫にそう言われ、私は友雅さんの屋敷に行くことにした。

そうだよね。聞いてみなきゃ分からない。

もしかしたら忙しかったのかもしれないし。

そんな甘い考えを抱きながら、門の前に立つ。

「龍神の神子様!主に御用でしょうか?」

「はい。会わせていただけませんか?」

「分かりました。こちらへどうぞ」

家にはいるんだ・・・ってことは忙しいわけじゃない・・・

帰りたくなる自分を叱咤しながら、友雅さんの部屋の前まで来た。

蔀は下りたまま。

勇気を出して声をかけた。

「友雅さん・・・・」

「・・・何しに来たんだい」

冷たいセリフ。

以前だったら考えられない。

いつも笑顔で迎入れてくれたのに。

薄い蔀一枚が、私を拒む厚い壁のようだった。

「私・・・何か怒らせるようなことしましたか?したなら謝ります!」

「何も・・・していないよ」

「だったらどうして顔も見せてくれないんですか!?」

「会いたくないからだよ」

淡々と告げられた事実に。

目の前が真っ暗になった。

アイタクナイ・・・・

「心配しなくても八葉の勤めはちゃんとやるよ」

「・・・顔も見たくないほど、私のこと嫌いだったんですか・・?じゃあ、今まで嫌々相手してくれてたんですか・・?」

「きまぐれのようなものだよ・・・異世界からの人間がめずらしかったからね」

こんなに酷い言葉を聞いても、どうしてこの人を嫌いになれないんだろう。

「・・・友雅さんにとっては遊びでしかなかったんですね。私馬鹿だから・・・分からなくて・・・迷惑かけてごめんなさい」

「・・・・・」

涙で顔はグチョグチョだったけど、できるだけ元気な声を出した。

「全てが終わったら・・・私はいなくなるから安心してください。元の生活に戻れますよ」

「そうだね・・・」

「でも・・・・」

「・・・?」

「私が元の世界に帰って、あなたが私を忘れても・・・」

龍神が私の記憶を消したとしても、心の痛みはきっと消せない。

「私は、友雅さんが・・・好きだから」


バタバタとあかねがかけて行く音が聞こえた。

「私はどこまで愚かなのだろうね・・・」

あんなに酷いこと言ったのに、あかねは私が好きだと言った。

ずっと私の片思いだと思っていたのに。

これが一番良いと思ったが、君を傷つけただけだったのだね・・・

蔀を押し上げた。

今追いかけなかったら、一生後悔する。


屋敷を飛び出してきたのはいいけれど、堪えきれずに道端にしゃがみ込んで泣いてしまった。

早く・・・帰らなきゃ。

藤姫が心配するし、道行く人にも怪しまれる。

涙を拭って立ち上がった時。

「あかね!!」

信じられない声を聞いた。

反射的に逃げてしまう。

「待ちなさい!あかね!」

「来ないで!!」

私を追ってきたのは、友雅さんだった。

今更どうして?

神子が一人で走って行ったから?

「あかね・・・話がある」

「顔も見たくないんでしょう?」

「私が愚かだったのだ」

「いいんです。友雅さんを責めてなんかいません。私が気持ちを押し付けたんです・・・」

友雅さんの顔が、涙で歪んで見えた。

「私はね・・・あかねを諦めようと思ったのだよ」

「え・・・?」

「少し前・・・天真と庭で話しているのを聞いてね。君は楽しそうだった」

「あ・・・」

そういえば、元の世界に早く帰りたいねって話をした。

向こうに帰ってしまったら、友雅さんとは会えなくなるのも忘れて・・・

「君はいつか帰ってしまう。だから、自分が止められなくなる前に、諦めようと思ったのだよ・・・」

「会いたくないって言ったのは・・・?」

「あかねの顔を見たら決意が壊れてしまいそうだったから」

「気まぐれって言ったのは・・?」

「嘘だよ。私を本気にさせるのは、あかねだけだ」

「・・・!それって・・・」

「ずっと前から神子殿をお慕いしていたよ。・・・狂う程にね」

目の前には愛しい人の笑顔。

「私も・・・大好きです」

初めて自分から抱きついた。

最後に触れたのが、ずっと昔のことのように思えた。

私を包み込む、優しい腕。

「辛い思いをさせて悪かったね・・・でも、あかねの気持ちが聞けたから良かったかな?」

「もう!友雅さんなんて嫌いです!」

また泣いてしまったけど

これはきっと

幸せな涙


タイトルはしぐれと読みます。
涙を流すという意味です。
あかねちゃん泣いてばっかいましたね。
中盤は、書いてる自分がつらかったです。
救いようのないラストも考えたのですが、書いてもしょうがないなと思ったのでやめました。
やっと友雅さん報われました(笑)