11月のある寒い日。
一人の少女が庭で茶色いふわふわしたものを抱えて泣いていました。
飼っていた犬のクリスが死んでしまったからです。
そこへ誰かがふわりと降り立ちました。
光る三日月の鎌を持った、黒い服の人。
顔はフードで隠されていて、見えません。
「あなたはだれ?」
「死神だよ」
少女は死神を見るのは初めてでしたが、何をする人かは知っていました。
生きている人を、死の世界へつれていってしまうのです。
「ねぇ死神さん。どうして死神さんは生き物を殺すの?」
「僕が殺してるわけじゃないよ。ろうそくの炎が消えた命を、導くのが僕の仕事さ」
「ろうそく?」
「人の人生は一本のろうそくだ。長い人もいれば短い人もいる。突然吹き消えてしまうかもしれないし、か細くても燃え続けるかもしれない」
「クリスのろうそくは消えてしまったの?」
「うん。だから迎えにきたんだ」
「そうなの・・・・。ねぇその大きなカマは何に使うの?人を切るんじゃないの?」
「これは魂と肉体を切り離すために使うんだよ。みんな大なり小なり未練があるからね」
「みれん?」
「まだ生きていたいっていう思いさ。死んだのに気づかない者もいるし」
「クリスにもみれんはあった?」
死神は少女の頭を撫でました。
「クリスは君にありがとうって言ってるよ」
「ほんとうに?」
「ああ。良かったね。さぁもう行かなきゃ」
「クリスはどうなるの?」
「僕がもたらすものは安らかな眠り。そこには何の喜びや憎しみの介入もなく」
「・・・・?」
「それじゃあね」
死神はクリスにむかって鎌を一振りすると、抜け出てきた白いものを導くように、空に消えていきました。
少女は大人になり忘れるでしょう。
死神の言葉を。
そして愛する人を奪った彼を恨むのです。
死神は誰に言うでもなく、呟きました。
「死は再生への道なのにね。僕は新しい生へ導き、神は限りある生を与える。ま、憎まれるのも仕事のうちかな?」
死は生へのプロローグであり、生は死へのカウントダウンでもある。
今日も死神は言うのです。
「おやすみ」
11/28
