今日の任務が終わった後。
カカシとは並んで歩いていた。
「ねー先生。ご飯一緒に食べようよ」
「いいけど。何にする?」
「スキヤキ!」
「すき焼き?うちに鍋あったかな・・?」
「あったよ。この前小麦粉取ろうとして棚あけた時に、上から落ちてきた」
「そんなとこにしまってたのか。っておい!あぶねーだろ!?お前、何にも言ってなかったじゃないか」
カカシは記憶をたぐりよせてみたが、鍋が落ちてきたようなでかい音は聞いていないはずだ。
「やーだ。先生ってば。アタシを誰だと思ってんの?様よ?ちゃんと受け止めたに決まってんじゃん」
「・・・それで小麦粉ぶちまけたのか」
低い声でそう言うと。
の額に一粒の汗が流れた。
「うっ・・・ま、まだ覚えてた?ちゃんと拭いたし許してよー」
「怒ってないよ。お前、頭からかぶって真っ白になってたしな」
そうなのだ。
背伸びして棚をあけて、小麦粉を取ろうとしたら。
一緒に鍋が落ちてきて、鍋はちゃんと受け止めた。
が。
モロに小麦粉をあびたのだった。
うきゃあ!というの悲鳴を聞いてかけつけたカカシは、しばらく行動不能になるほど爆笑していた。
「あんなに笑わなくてもいいのにさー」
頬を膨らませたの頭をポンポンと叩き
「ま!今日は頑張ってくれよ」
と、カカシは微笑んだ。
「・・・大丈夫か?」
包丁片手に気合をいれているを見て、カカシは一応尋ねた。
「ヘーキ!ヘーキ!切るだけだし!」
は二つ返事で答える。
「じゃあ俺は鍋の用意してるぞ?何か起こる前に呼べよ?」
「うん」
既に気持ちは目の前の材料に集中しているらしい。
これ以上何を言っても無駄そうだった。
台所から出て、テーブルの上にコンロを置く。
火がつくかどうか確かめてから、鍋を上に置き、ワリシタの準備をする。
味付けだけはにまかせるわけにはいかない。
食べれなくなるから。
手早く材料を混ぜ合わせ、鍋に注いだ。
スキヤキなんて何年ぶりだ・・・?
頭の中で記憶をたぐりよせたが、思い出せなかった。
鍋は誰かがくれたのかもしれない。
時計を見ると、20分ほど経過していた。
二人分だし、もうさすがに終わっているだろう。
が、台所からは何も聞こえてこない。
静かだ。
この静けさはありえない。
一抹の不安を覚え、カカシは台所を覗いた。
「?」
「わっ!?いきなり声かけな・・痛っ」
「!?」
包丁で指を切ったのだろう。
指の先に、小さな血の雫がついていた。
玉はみるみるうちに大きくなり、ぽとぽとと滴りだす。
そして指だけではなく、手のひら全体に無数の切り傷があった。
「どうやったらそんなとこ切るんだよ・・・?」
「うー・・・」
涙目になっているの手を取り、切ったばかりの指をなめる。
「しょっぱい」
「・・・・呆れてる?」
「まぁな」
「頑張ったんだけど」
「知ってる」
周りを見ると、野菜は半分も切れていなかった。
でも形はきれいに揃っていた。
「俺がやるから、お前は座ってろ」
は一瞬縋るような目を向けたが、うなだれてとぼとぼと出て行こうとした。
その背中が哀しすぎて。
後ろから抱きしめる。
「泣いてんのか?」
「泣いてないよ」
「ほんとに?」
「・・・嫌いになったでしょ。こんな野菜すら満足に切れない女でさ」
「俺が作れるんだから問題ないだろ?」
「でも!やっぱり料理うまくて、おいしいご飯作って待っててくれるような彼女がいいでしょ!?」
が震えているのがわかる。
やはり泣いているのだろう。
「俺はそんな安い基準で割り切れるほど、簡単な性格じゃないよ」
「・・・・」
「俺はお前がいいの。それでいいデショ?」
そこまで言ってようやくは落ち着いたようだった。
ゴメンナサイと呟き、カカシの腕からするりとすり抜ける。
「ヘヘ・・・いつもありがと!」
無理に笑顔を作り、台所から出て行く。
カカシはほっと胸を撫で下ろした自分に気づいて苦笑した。
「ったく・・・やっぱこうなるんだよな。仕方ないけど」
ぐつぐつと煮える材料をつまみながら、は至福の表情をしていた。
「おいしー!」
「そうだな」
「先生が料理できて良かったー」
さっきのことはもう解決したのであろう。
は上機嫌だ。
そこで、ずっと疑問だったことを聞いてみた。
「いつも何食べてるんだ?」
「サラダ。緑黄色野菜は体にいいんだよー」
は即答する。
サラダなら野菜を千切るだけだからだろう。
「他は?」
「アイス」
それはメシじゃないだろうと思いながら、カカシは自分の想像が的中していたことを知った。
「まさかそれしか食ってないわけじゃないよな?」
笑顔でそう聞くと。
「え?え、えへへ・・・お腹すかないし」
の額から汗が流れるのが見えた。
「そんなことじゃ、そのうちぶっ倒れるぞ!?大体お前は痩せすぎだ!」
同僚のアンコも相当な偏食で甘いものしか食べないが、ヤツはものすごい量を食すことで、エネルギーを賄っている。
でもはそんなに食べているとは思えない。
つい怒鳴ってしまうと、は下を向いた。
「だって・・一人で食べてもサ」
一人きりの食事。
味もわからずに、ただ飲み込むだけ。
もう慣れてしまった儀式。
カカシもそれを知っていた。
自分はそれでも食べていたからいいが、は放っておくと命に支障をきたす可能性もある。
「・・・・俺が家にいる時は、作ってやるから。一緒に食べよう」
刹那。
彼女は形容し難い表情をした。
まるで痛みをこらえているかのような。
でもそれは一瞬で、途端に顔が輝きだす。
「本当に!?」
「ああ」
「やったー!」
多分、俺は口実が欲しかっただけなんだろう。
少しでも一緒に過ごすための。
「先生知ってるー?好きな人と焼いて食べるからスキヤキって言うんだよー」
ぶっとカカシが具を吹きだす。
「・・・結構ロマンチストなんだな」
「あ、バカにしてるでしょ?でもね、私の夢だったの」
「何が?」
「彼氏出来たら、絶対一緒にスキヤキ食べるって!」
「・・・ふーん」
「相手が先生で良かった」
「まぁ・・・そーゆーのも、悪くないかも・・・な」
その後。
は5枚皿を割って、カカシに怒られた。
いかがでしたか?
このネタはメールをやりとりしてて思いつきました。
「この主人公は家事ができなさそう」
「でもカカシ先生がやってくれそう」
こんな感じで(笑)
最後のスキヤキ云々は、実際に中学生の頃そう思ってました(笑)
親友に言ったら「まーた馬鹿なことばっかり言ってー」と一蹴されたのを思い出します(笑)
でも私と同じことを考えてたミュージシャンがいて、このタイトルはその曲からいただきました。