悲しい夜には、とっておきの夢を
話してあげるから 僕を呼んでくれよ
誰かに聞かれたら ちっぽけな夢でも
君が涙をとめてくれるなら
はぁ今日は疲れたわ。
ヒムロッチには怒られるし、ついてへん。
そんなことを思いながら、廊下をぶらぶら歩く。
先生に呼び出しをくらって、こんな時間になってしまった。
もう外は夕闇だ。
「はよう帰らんと」
1組の前を通り過ぎようとした時、ほんの少し開いたドアから人影が見えた。
「?」
あの後姿は・・・・
「蓮ちゃん・・・?」
窓辺にいた彼女が振り向く。
「あ、まどりんか・・・・」
中にいたのは、俺が惚れている女の子、大滝蓮だった。
いつもは結んでいる髪を、下ろしている。
長い綺麗な髪が、風に揺れていた。
どうしてこの子を好きになったんだろう。
最初は美人だったから声をかけた。
かわいいだけで頭の軽い女だろうと思った。
しかし、仲良うしよう、と言った俺に「軽い男は嫌い」と言い放ったのだ。
そこから俺の恋は始まったのだ。 本物の恋。
嫌いと言われて燃えるなんて、俺はマゾか・・・?
「こんな時間まで何しとるん?」
「寝てたら時間たっちゃったの」
その言葉が嘘だということに。
彼女の隣に立って、俺は気づいた。
泣きはらした目をしていたから。
どうした?と聞きたいのをぐっとこらえる。
「まどりんは何してたの?」
「あ?俺はヒムロッチにお説教・・・」
「また寝てたんでしょ?」
「まぁそんなとこやな」
いつもと変わらない会話。どうして彼女はこんなに強いんだろう。
頼ってもらえなくても。
せめて涙だけは止めてあげたい。
「蓮ちゃん。自分夢あるか?」
「え?夢?急にどうしたの?」
「お嫁さんとかならいつでも叶えてあげるで!」
「ハハッ。遠慮しとく。まどりんは夢あるの?」
「俺はあるで!でっかいやつがな」
「へー。何?」
「俺の夢はな・・・自分の会社作ることやねん」
「社長ってこと?そりゃでかい夢だね。何の会社?」
「それはまだ決めてないんやけど・・・俺、一人暮らしやって言うたろ?」
「うん。ちゃんとご飯作ってて偉いよねー」
「俺がこっち来たんは・・・おやじとそりがあわんかったからや。家のことちっとも考えんで仕事ばっかして・・」
「・・・・」
「おやじみたいには絶対ならない。世話にもならん。俺は自分の力でやっていきたいんや。・・・あいつを見返すために」
「そっか・・・」
「くだらない夢やろ?」
「そんなことないよ。理由はどうあれ夢がきちんとあるのっていいと思う。まどりんならきっと叶えられるよ」
「そうか?自分に言われるとほんまそんな気になってくるわ」
「もー調子いいんだから!」
そう言って、彼女は笑った。
よかった。さっきまでの悲しみの表情はもうない。
「もう遅いし、帰らんか?」
「そうだね」
校門を出た所で。
「・・・・ありがとう」
小さくつぶやくのが聞こえた。
「何や?俺は何もしてへんで。どうしてもお礼したいってんなら、チュウでええで」
「絶対ヤダ!」
理由は教えてもらえなくても。
君が笑ってくれるなら。
今は・・・・
それでいい。
この話は、チャミグリの月がこぼれそうという曲からできました。冒頭の4行は歌詞を引用してあります。
この曲はすごいいいですよ〜私の好きな曲ベスト1かも。
歌詞の雰囲気の全てを盛り込みたかったのですが、ちょっと無理でした(笑)
もしかしたら王子版も書くかもしれません。
ネタがあると楽ですね(笑)でも著作権とか大丈夫かな?(汗)