「で、あんた誰やねん」

近くにあった喫茶店で、二人は男と向き合って座っていた。

「僕は佐伯透。弁護士なんだ。君達のことは警察で何度か見てる」

「ふーん。弁護士さんが何の用やねん」

「依頼者の無実を証明してくれ!」

机に頭をぶつけんばかりにして、拝んだ。

「証明してくれって言われても・・・怪しいから捕まったんやろ?」

「彼はハメられたんだよ。真犯人は他に絶対いる」

「・・・何で断言できる?」

「動機が全くないし、そんなことをする人間には思えない」

「通り魔なんて動機がなくたってできるやろ?」

「俺らは普通の人間が犯罪者になる瞬間を見てきてる」

姫条と葉月の答えは、そっけないものだった。

「君らがそう言うのは分かるよ。でも僕だって色んな人間の弁護をしてきた。人を見る目はあるつもりだ」

「犯人見つけるのは警察の仕事やろ?何で俺らに頼むんや?」

「あいつらは犯人だと決め付けて、ろくに捜査してない。証拠なんてどこにもないのに」

「証拠がないんなら、堂々としてればええやんけ」

「君達は取り調べの恐ろしさを知らないからね。何十時間も拘束されて、お前がやったんだろうと脅される。それがどれだけ苦痛か分かるかい?」

「それホンマなんか!?」

「これが現実なんだよ」

佐伯は静かに言った。

「何やそれ・・・・」

「この地獄が終わるならと、やってもいない罪を認める者も多い。これ以上冤罪を増やさない為に、力を貸してくれ!」

姫条は覚悟を決めたように、顔をあげた。

「わーった!そーゆーことなら一肌脱ぐで!」

「またお前は・・・・」

「お前は心が痛まないんか?人生が変わってまうかもしれへんのやで?」

さっきと全然態度が違う、と思いながらも葉月は仕方なく反論を諦めた。

こうなってしまったら、何を言っても無駄だからだ。

「本当に!?やってくれるのかい?」

佐伯の顔が輝く。

「おーまかしとき!」

「・・・詳しい話を聞かせてくれ」

犯人にされた男―御堂は、毎日決まった時間にジョギングしていた。

そこを真犯人に目をつけられたらしい。

女を刺した後、自分で警察に通報をする。

「ジャージ姿の男が、女を刺す所を見た」と。

そしてジョギング中の御堂は、警察に捕まった。

「計画的な犯行やな」

「そうだ。御堂がジョギングしていることを知っていた。そしてそれを利用した」

「・・・怨恨の線は?」

「なさそうなんだよ。いたって普通のサラリーマンだしね。よく調べてみないと分からないけど」

「分が悪いな」

「僕も全力で当たってるけど、何しろやることが多い。それに警察に目をつけられてるんだ」

佐伯の言葉は真実だろう。

見て分かるほど、疲労している。

「だから俺らの出番ってわけか」

「いきなり頼んでごめん。でも君らならやってくれると信じてる」

「そこまで言われたら、頑張らないわけにはいかんがな。なー葉月?」

「・・・・・」

「ああ頑張る!くらい言えんのかい。そんじゃ早速始めるか!」

姫条は拳を握って立ち上がった。