「もう終わりだ」
星も出ていない闇夜で、二人の男が向かい合っている。
白い面をつけた男と、腕から血を流し恐怖に怯えている男。
先ほどのセリフは、面の男のもののようだった。
感情は感じられない。
面の男はクナイを音もなく抜き放ち、相手に迫る。
心臓を貫く感触と、奇妙な違和感。
相手の男の口から、声にならない悲鳴が落ちた。
二人の間にはいつのまにか一人の女が立っており、クナイは女を刺し貫いていた。
しかし、次の瞬間、女の手は疾風の如く疾り、面の男の胸元を切り裂いた。
小さくうめいて、面の男が飛びずさる。
女は唇を歪めて笑った。
ごぶりと血を吐く。
そして倒れた。
狂ったように泣き叫ぶ男を、それでも面の男は始末した。
何の問題もなかった。
面の男は死体を始末して、踵をかえした。
女の顔が瞼の裏にちらつく。
女が笑いながら口を動かした。
「死神」
と。
「・・・・!」
がばっと起き上がる。
そこは闇の中ではなく、自分の家だった。
「・・・夢か」
苦笑交じりの声は、力がない。
カカシは最近同じ夢ばかり見ていた。
理由は分かっている。
あれはただの夢ではなく、現実に起こったこと。
久しぶりの暗部の仕事は、ものすごく後味の悪いものだった。
抜け忍の始末が任務だったのだが、相手は見知った顔だった。
それだけでもきついのに、カカシがクナイで刺したのは、男の恋人だった。
急に飛び出してきて、男を庇ったのだ。
くノ一こその素早さだった。
女は男に向かって微笑んで「逃げて」と言った。
そしてカカシを攻撃した。
女は死にかけていたので、大した傷にはならなかった。
しかし、カカシに傷をつけたことだけで、女には満足だったようだ。
血を吐きながら言う。
「あんたたち暗部は、火影に飼われた死神よ。人を殺すことでしか生きていけない、呪われた亡者たち・・・」
声はここで途切れた。
死んだからだ。
殺したくて殺したわけじゃない。
そう言いながら、一体何人の人間を屠ったのだろう?
体がだるい。
最近任務が続けて入っていたので、まともに休んでいない。
今日は家でゆっくりしていようか。
そう思ったとき、玄関のチャイムが鳴った。
扉を開けなくても、誰だか分かった。
何故かとてもほっとした。
「おはよー。あのね、林檎貰ったから一緒に食べようと思って・・ってうわっ!?」
が抱えた籠から、林檎が零れ落ちる。
カカシはの姿を見た途端、気が抜けて意識が飛んだ。
いきなり倒れかかってきたカカシを引きずってベットに寝かせてから、はカカシの額に手を当てた。
熱い。
それに汗をかいている。
カカシは起きたばかりだったのでパジャマを着ていたが、苦しいだろうと思ってボタンを外した。
が顔をしかめた。
ひんやりとした感触に、うっすらと目を開けると、がいた。
カカシの額に置いた濡れタオルを、換えている所だった。
「気がついた?先生倒れたんだよ」
「・・・お前見たら気が抜けたんだ・・」
カカシが身を起こすと、はベッドの端に腰かけた。
「それはいいけど。ね、何で倒れたんだと思う?」
「・・・風邪か、睡眠不足か・・」
カカシの答えに、が無言でカカシの胸を指差す。
胸元には包帯が巻かれていた。
「傷が化膿してそれで熱が出たんだよ。何でそんなになるまで放っておいたの?」
の言葉に、カカシが自身の胸を見やる。
カカシの表情は、たった今傷に気づいたかのようだった。
「・・・怪我してんの忘れてたんだ」
「ハァ?もっとマシな嘘つきなよ。とりあえず消毒して薬塗ったけど、念のために病院行ったほうがいいよ」
「・・・ごめんな」
「ありがとう、でしょ?」
は笑うと、コツンっとカカシにおでこをつけた。
「ん。熱も下がったみたい。良かった」
ぽつりとカカシが呟く。
「・・・お前はすごいな」
「何が?」
「顔見たらさ、色んなことが一瞬で吹き飛んだんだ」
は微笑むと、思い出したように言った。
「おなかすいてない?何か買ってくるね」
立ち上がりかけた時、後ろからきゅっと抱きしめられた。
強くもなく、弱くもなく。
小さな子供が抱きついているような。
カカシは何も言わない。
「先生ね、うなされてた」
「・・・」
「つらいときはさ、半分こしようよ」
「・・・・」
「私が笑顔、分けてあげるからさ」
カカシがトンっとの背中に頭をつける。
泣いているのかもしれない。
「とりあえず何ができる?」
「・・・一人にしないでくれ」
「うん」
「傍にいてほしんだ」
「・・・うん。ずっとここにいるよ」
人に甘えたのは、初めてかもしれないと思った。
こんなに心地よいものだったのか。
・・・いや。
だからだろうな、とカカシは思った。
アニメでカカシ先生が倒れてるのを見た時から、友人と「先生を看病したい!」と言い続けた結果、こんなのができました(笑)
といいつつ看病シーン少っ。
てゆーか、ないじゃん(苦笑)
最大の萌えシーンの「抱きつく」は入れさせていただいたので、許してください・・・
うちの主人公ちゃんも、やっと対等になってきたかなって感じ。
ただ「○○して〜」とかの甘えじゃないものを書きたかったのですが、伝わったでしょうか。