それは家族の味

幸せの味

愛の味



それは唐突に宣言された。

「勝負だ!カカシー!!」

びしぃっと人差し指を突きつけて、ガイが不敵に笑う。

カカシは見もせずに

「ヤダよ」

と答えた。

「ふふ・・・俺に負けるのだが恐いんだろう?」

「めんどいからだ」

嫌な顔をして訂正したが、ガイは聞いていない。

「そうかそうか。とうとう俺の前にひれ伏したか!」

「んなこと言ってねーだろ!?」

「じゃ、やるんだな」

「うっ・・・」

上手いこと口車に乗せられてしまった。

きっとくだらない勝負なのだろうが、精神的に疲れるのは間違いなかった。

「今回の勝負は、ズバリ!男の料理だー!!」

「は?」

成り行きを見守っていたアスマが、同情するようにぽんぽんとカカシの肩を叩く。

「今回はお前の負けだな」

「何で」

「ガイはああ見えても鉄人顔負けの腕なんだぜ?」

「何でんなこと知ってんの?」

「前に無理やり食わされたからだ。それからたまにご馳走になってる。お前と違って、俺には料理作ってくれる女がいないからな」

俺にだっていねーよ、とカカシは思ったが黙っておいた。

「そういうことだ!お前は食には興味がないだろう?この勝負俺が貰った!」

高笑いを始めたガイに、紅が冷笑を浮かべて水を差す。

「あら、カカシだって作れるわよねぇ?だってま・・・」

カカシが慌てて紅の口を塞ぐ。

「それは秘密なの!」

小声で囁くと、紅は面白くなさそうにぱたぱたと手を振った。

「分かったわよ」

「何やってんだ?」

「何でもないって。で、いつなの?」

「思い立ったが吉日!明日にしよう!」

「明日!?」

「進行は俺がやってやる。お題は当日まで秘密だ。材料はこっちで用意しとく。ガイ、金出せよ」

「お安い御用だ!フハハハ!」

「・・・めんどくさがりのお前にしては、珍しくやる気ジャン」

アスマにジト目でそう言うと。

「たまにはいーだろ。あ、お前のチームの奴連れてこいよ」

「何で」

「審査員として。アンコと紅とそいつで3人」

「・・・・分かったよ」

どうやら逃げられそうにない。



いつものフリルのエプロンを着け、カカシが台所に立っている。

しかし、料理を始める気配はない。

がひょこっと覗き込んだ。

「メニューで悩んでるの?」

「危ないからこっち来ないの。別に悩んでるわけじゃないんだけどな」

「じゃ、どうしたの?」

カカシは包丁を置くと、事の顛末を語りだした。

「で、何作らされると思う?」

「さぁ?」

「さぁ?ってお前な。もう少し考えろよ」

「だってアスマ先生の好みなんてわかんないもん」

「そりゃそうだけど・・」

「勝負は明日なんでしょ?今更考えたってしょうがないよ」

「・・・それもそうだな」

「アタシ応援してるし!先生の料理をすればいいじゃん」

なぜかここでは顔を逸らした。

「でも・・・」

「どうした?」

「ううん。何でもない」

先生の料理を他の人に食べさせたくない、という言葉は飲み込んだ。


当日。

人生色々が会場だった。

ここなら、台所がいくつかあるからだ。

「じゃー始めるぞー。まずは料理人から。ガイ!」

「やぁレディ達!俺の熱い料理を食べてくれ!」

ガイが白い歯を惜しみなく見せながら、笑顔を振り撒く。

レースのエプロンが気持ち悪い。

「食欲が萎える登場ね・・・」

アンコがげっそりとコメントした。

「次。カカシ!」

「どうも」

明らかにこっちにはやる気がない。

ガイと同じエプロンをつけていた。

恐らくガイが用意したのだろう。

「審査員は、紅とアンコと・・・」

が立ち上がる。

「カカシ先生の部下のです!」

「これが噂のねぇ・・・」

アスマが無遠慮にニヤニヤ眺め回し、カカシがイラついてアスマの頭を小突いた。

「早くしろよ」

「へいへい。顔で選ぶ奴もいるだろうから、どっちがどっちの料理を作ったかは言わないことにする。美味い方に投票してくれ。お題は・・・」

誰かがゴクリと喉を鳴らした。

「麻婆豆腐と餃子だ」

アンコがすかさず付け加えた。

「辛いのはナシね。食べられないから」

「・・・だそうだ。じゃ、始め」

二人の料理人が、台所へ消えていった。

「俺は不正をしないように、見張ってるぜ」

煙草をふかしながら、アスマもいなくなった。


「あんた名前は知ってるわよ。会うのは初めてだけど」

「よ、よろしくお願いします・・・」

にしては、気弱な態度だ。

「そんな恐がらなくても取って食ったりはしないわよー!」

アハハハと笑いながら、ばしばしの肩を叩く。

紅が小さく、やめなさいよと窘めた。

「で、どっちが勝つと思う?」

「どっちの料理も食べたことないし・・・予想できないわね」

「私はガイかな。アスマも絶賛してたし」

「本当に美味しいのかしら?」

は?」

「へ?私は・・・カカシ先生かな」

「カカシー?なんか味とか薄そう」

「何よそれ?」

「イメージ的に。味オンチっぽくない?」

「そんなことないです!」

つい言ってしまい、が口を押さえた。

しかしアンコは深読みしなかったようだ。

「そぅお?マズくなきゃ何でもいいわ」

どこからかおしるこの缶を取り出し、飲み始めた。


「待たせたな。料理が出来たぞ。まずは一人目」

アスマが皿を運んでくる。

なぜか餃子が緑色をしている。

水餃子のようだった。

しかし気持ち悪い色ではない。

寧ろ皿の色と相まって、絵画のようだった。

麻婆豆腐は得体の知れないものがごちゃごちゃ入っていたが、上に散らされた青ネギが食欲をそそる。

思い思いに取り分けて、口に運ぶ。

「こ、これは!」

麻婆豆腐を食べたアンコが驚愕の表情を浮かべた。

「甘すぎず辛すぎず、それでいて濃厚かつさっぱりしている・・・」

「わけわかんねーよ」

アスマが突っ込むと、アンコはてへっと笑った。

「ちょっと美味○んぼのマネしてみたのよ」

次にが餃子を食べ、叫んだ。

「口の中で鳳凰が飛んでいる・・・!」

「ハァ!?何々だ?お前ら」

紅は多くは語らなかったが、すごい勢いで皿を空にしていた。

アンコとが意味不明なコメントを口走りまくり、そうこうしている内に料理はなくなった。

ガイが勝ち誇ったような顔をしているところを見ると、彼が作ったのだろう。

「じゃあ次な」

今度は焼き餃子だった。

パリっとした美味しそうな焦げ目。

赤と白のコントラストを作っている麻婆豆腐。

型崩れしていない豆腐が、美味しそうだ。

先ほどの料理と比べるとインパクトはないが、家庭料理といった感じだった。

「いただきまーす」

は一口食べると、小さく微笑んだ。

それはカカシしか気づかなかったかもしれない。

「普通に美味しいわ」

「そうね。美味しい」

みんな一様に美味しいとコメントした後、自分の皿を空にして箸を置いた。

だけはおかわりをしたが、大皿にはまだ半分ほど残っている。

最初に食べ過ぎて、お腹いっぱいになったのだろう。


「じゃ、手っ取り早くいくぜ。美味かった方を指差してくれ」

「「「こっち」」」

三人がそれぞれ指をさす。

紅とアンコは最初の方を。

は後の方を。

「2対1。勝負あったな」

「俺の勝ちだー!!思い知ったかカカシ!」

「えーガイが作ったのー?」

アンコの声は耳に入らなかったらしい。

ガイは涙を流して喜んでいる。

「おめでとさん」

あまり悔しくもなさそうに、カカシが賛辞を述べた。

ふとアスマがの方を見る。

「聞いていいか?何であんなに褒めてたのに、ガイの料理を選ばなかった?」

「確かに美味しいけど、一回食べれば満足する味なの。気合い入りすぎてて」

「作った奴を彷彿とさせるようだな」

アスマが茶々を入れる。

が微笑む。

「アタシが毎日食べたいのはカカシ先生の料理」

紅が小さく「ごちそうさま」と呟いたが、誰も聞いていなかったようだ。

「もう終わりだろ?ガイ、今回は負けたよ。・・・帰ろうぜ」

の腕を取って、カカシはドアの外に消えた。


手を繋いで歩きながら、が言う。

「負けちゃったね」

「そーだな」

「嬉しそうだね」

カカシは、ふふっと笑った。

「俺が食べてもらいたいのは、お前だけだからな」



毎日、愛をこめて作ろう。

愛しい君のために。


くだらない料理のコメント書くの大好きです(笑)
料理話は楽しいなぁ。
ガイのエプロン姿、恐いもの見たさに見てみたい気も。