「まったく・・・浴衣も着れないなんてね・・・」
「だって誰も教えてくれないしー」
「カカシなら着れるでしょう?」
「だって先生に着せて貰うわけにも・・・うっ苦しいよ」
「我慢なさい」
年よりも幼く見える少女に帯を締めてやりながら、紅は呆れた様に溜息をついた。
まぁ、こんなところも可愛いのだが。
「ホラ出来た」
ポンとの背中を叩くと、彼女はくるっと一回転してみせた。
「どう?!」
「ハイハイ可愛いわよ。ったく、そーゆーことはカカシに言ってもらいなさいよ」
「えー。そんなこと言ってくれないよォ」
「アンタ達バカップルじゃないの」
「・・・違うって」
勘違いをしている紅に疲れたように言ってから、紅も浴衣を着ていることに気づいた。
さっき慌てて駆け込んだので、周りのことを見ていなかったのだ。
「夕ちゃんもデート?」
「いっいきなり何よ」
「お祭行くんでしょう?」
「・・・・行くわよ」
照れているのか急に声が小さくなる。
「彼氏もこんな綺麗な浴衣姿見たら惚れ直すね」
無邪気にコメントするに、紅は苦笑した。
「アンタ、男だったらタラシになってたわね」
カカシの家に行って、無理やり浴衣を着させて(自分で)、祭に繰出した。
カカシは浴衣でも口布をしていて違和感を放っていたが、さすがに額当てはしていない。
「・・・それはずせないの?」
「んー・・・。忍は目立っちゃいけないんだよ」
余計目立ってるよ、と思ったが、口には出さない。
大きな祭なので、里の大半の者が参加している。
ということは顔見知りもウジャウジャいる。
見つからないように気を使うだけで疲れてしまった。
混んでいるのに手も繋げないし。
仕方ないので、はこっそりカカシの浴衣の袖を握り締めていたが、何だか小さな子供みたいだ。
色気もへったくれもない。
浴衣にしたって「良かったな」としか言ってくれなかったし。
・ ・・可愛いと連呼されても気持ち悪いけど。
家を出るまでは元気だったのに、は明らかに口数が少なくなっていた。
可愛い、とか似合ってるよとかくらい言ってやれば良かっただろうか?
実際とても可愛かったのだが、何だか照れてしまい、言う機会を逃してしまったのだった。
それに人通りが多いということは、イチャイチャも出来ないということ。
しょんぼりしているを見て可哀相になったカカシは、きょろきょろと辺りを見回した。
そしていいものを見つける。
「ちょっと待ってな」
そう言い残して、人ごみに消える。
「ちょっと先生!?」
こんなところに一人で残すなんて・・・と思ったが、カカシはすぐに戻ってきた。
「はい、これ」
手渡されたのはお面。
タコの顔をしている。
「何コレ」
「それ被れば誰だか分かんないデショ」
言いながら自分もお面を被る。
こちらはイカだった。
「ぶっ。何かマヌケ」
タコとイカの組み合わせはものすごく馬鹿みたいだが、確かに顔は隠れる。
カカシなりの優しさに、は嬉しくなった。
どちらからともなく、手を繋いで祭を見物する。
さっきまでのことが嘘のように、心が軽かった。
と、遠くで花火が弾け、夜空を明るく染め上げた。
歓声と拍手。
カカシは花火をちらっと見やってから、のお面を外した。
みんなが上を向いている間に、こっそりキスするなんて初々しいカップルみたいだ。
「浴衣着るのは、俺の為だけにしろよ」
の顔が赤くなったのは、きっと花火のせいだけじゃない。
なんて。
自惚れかな?