「今回の任務は護衛だ。温泉地までの道のりと、旅館での身辺保護がメインだ」

カカシの適当な説明を聞いて、もやる気なさげに手をあげた。

「はーい。センセェ」

「何?」

「温泉なんて小さい子一人でも行ける距離じゃない。どこで襲われんの?」

「さぁ?」

あくまでカカシはマイペースだ。

「・・・うちらが襲ったら笑えるね」

「・・・・・」

「冗談だって。依頼人はどんな人なんデスカ?」

こいつの冗談は笑えない、と思いながらカカシは記憶を巡らせた。

「若い男女二人って聞いたけど。俺と同じくらいだろ」

「・・・なーんかヤな予感」

そしての予感は的中した。



「ねーねーダーリン温泉楽しみねぇ」

「そうだね、ルミルミ。もしかして混浴かな?」

「やだっダーリンったらァ!ルミ恥ずかしくて入れな〜い」

「今更恥ずかしがることな・い・だ・ろ」

目の前で繰り広げられるできれば見たくはない光景に、カカシとは黙ってついていくしかなかった。

このバカップル全開の二人が、何を隠そう今回の依頼人なのだ。

そうでなかったら、とっくに逃げていただろう。

現には、二人の会話が始まった瞬間に逃げようとして、カカシに捕まった。

ダーリンと呼ばれた男のほう(本名はタキらしい)は、線の細い優男といったタイプで、目が開いているのか分からないほどの糸目だった。

ルミの方は匂い立つような美女だが、切れ長の瞳が少しキツイ印象を与えていた。

カカシが言っていたように、二人とも二十代後半といったところか。

二人は飽きもせず同じような会話を、べったりくっつきながら続けている。

と、が唐突に口を開いた。

「刺していい?」

「ダメだ」

「じゃあ、はり倒していい?」

「ダメだ」

冷静に却下するカカシに、は眉をつりあげる。

「何でよ!?あれは歩く公害よ!」

「逆ギレすんなよ!依頼人殺したらシャレになんねーだろーが!」

「何で先生は平気そうなの?どっかおかしいの?」

真剣に尋ねられて、カカシはため息をついた。

「・・オマエな。意識を他のところに向けろ。あの二人はいないものと思え。そんくらいできるだろ?」

「あ、そっか。先生あったまいいねー!さすが里一番の技師!」

「いや、こんなことで技師とか言われると悲しくなるから」

そんなツッコミをよそに、意気揚揚と視界から二人を消そうとしただったが。

1秒後に凍りついた。

二人が振り返ったのだ。

「ねぇ忍者のお二人さん。どうしてそんなに離れて歩いてるの?」

「え・・・えっと、後ろから襲われたら危ないんで!」

「そうなの?でもせっかく一緒にいるんだから、仲良くなれないのは悲しいよ。ね、ルミルミ?」

いや、仲良くなんてなりたくないから、と心の中では思ったが、ルミは更に恐ろしい提案をした。

「そうよね、ダーリン。いいこと思いついたわ!せっかくだから私たちの幸せを忍者さん達にもおすそわけしてあ・げ・るv」

「「え”」」

絶句する二人をよそに、タキは弾む声で続けた。

「ナイスアイデアだね!ルミルミ!じゃあ、僕たちが出会ったところから実演してみせようか!」

「分かったわ!ダーリン!」

二人の攻撃は、宿に着くまで続いた。



「・・・じゃあ・・お二人の部屋は・・・こっちです・・・。俺らは隣に・・・いるんで・・」

適当に古い旅館の部屋の前で、カカシが途切れ途切れにバカップルに伝えた。

さすがのカカシでも、精神的にきつかったらしい。

はカカシに寄りかかって立っているのがやっとだった。

「じゃ、これからもよろしくねv」

「お風呂はどこかな?」

「もうっダーリンたら気が早いv」

「風呂に行く時は声かけてください!それじゃ!」

また二人の世界を作りそうになったので、慌ててカカシが会話を終わらせた。

動かないを抱えて、部屋に入る。

「まいったな・・・これじゃ体が持たない・・・」

「だーりん・・・るみるみ・・・だーりん・・・るみるみ・・」

「オイ。しっかりしろ。もうあの二人はいないよ」

目の焦点があっていないの頬をぺちぺちと叩きながら、カカシは声をかけた。

「愛ってナニ・・・?」

「オマエ、精神的に弱いのな・・・まぁ大人しいのも新鮮だけど」

未だ正気に返らないに膝枕してやりながら、これから起こるであろうもっと恐ろしいことを想像して、カカシは身震いした・・・

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