できるなら、彼にだけは見せたくなかった
この浅ましい姿を
着いた時にはもう遅かった。
死体の山だけが、風にさらされていた。
ある村が、キナ臭くなってるから調査してくれという依頼だった。
必要であれば、村人を守ってくれ、とも。
しかし守るべきものは何もなく、何を調べたらいいのかも分からなかった。
「こりゃ酷いな・・・・」
俺が立ち尽くしている横で、は言葉もなく彼らを見下ろしていた。
小さく十字を切る。
この仕草・・・
昔、どこかで見たことがあるような・・・
「来るのが、少し遅かったね」
血はまだ乾ききっていない。
半刻ほど早ければ、死なせずに済んだかもしれないのに。
「・・・・報告に戻るか」
の肩を抱いて、来た道を戻ろうとした時。
「お客さん?これ見ちゃったんなら、帰すわけにはいかないなぁ」
およそ不似合いなノーテンキな声。
「・・・音忍か」
目の前にいるのは一人だが、周りから無数の気配を感じる。
こいつらが村人を全滅させたのは、間違いなさそうだった。
「しっかしー、この村の奴等もついてないよなぁ」
まるで棒切れか何かのように、死体を蹴る。
「・・・・ついてない?」
口の中が渇いていた。
もっと、思いつく限りの雑言を、浴びせてやりたかった。
「バカな村長もったばっかりに、皆殺しなんてよぉ。奴はとっくに逃げ出してるっつーのに、守ろうとしてさ」
「村長?」
「こいつが極悪人でさ。村の奴らは何も知らなかったみたいだけどな」
「・・・理由も知らずに死んでいったのか」
「だからついてないなって言ってるんじゃん。ま、俺らも無駄足だったんだけどね」
「じゃあ、あんたが死ぬのも、ついてないからだね」
「え?」
いつの間に近づいていたのだろう。
は小さく呟くと、腕の一振りで男の首を掻ききった。
きっと男は、自分に何がおきたかも分からずに死んでいったのだろう。
襲われる理由も知らずに、死んでいった村人のように。
血煙をあげて倒れた男を見て、周りが一気に殺気づく。
「隠れてないで出てくれば?遊んであげる」
それが、合図だった。
更に増えた死体の前で、俺とは血だらけで立っていた。
自分達の血ではない。
はっきり言って、奴等は強くなかったし、俺は元暗部だ。
「・・・先生は、人を殺す時、どんなこと考えてる?」
「・・・え?」
「敵だから仕方ない?任務だから?」
「?どうしたんだ?」
「ごめん・・・なんでもない」
は俯くと、また死体に向かって十字を切った。
「それは何かの印なのか?どっかで見たことあるけど」
俺がそう言うと、は、はっと顔をあげた。
自分の行動に気づいてなかったみたいに。
「え?・・・違うよ。ついやっちゃうんだよね。カミサマなんていないのにさ」
「・・・?」
「死んでしまえば、敵も味方もない。だから弔ってたの」
言っている意味は分からなかったけど、痛々しいことは確かだった。
こんな任務をにやらせたくなかった。
綺麗な手を、血で染めてほしくなかった。
忍には避けて通れない道とはいえ。
俺の気持ちを察したのか、が口を開いた。
「先生が気に病むことなんてないよ。だって私の手、とっくに汚れてるもの」
「え?」
は微笑んだ。
今まで見たことのない、無機質な笑み。
その瞳は、まるで硝子みたいだった。
短編のはずなのですが、所々に伏線を敷いてあります。
主人公にも色々過去が隠されてます。
ドリームでそんなことしても意味のないような気がするのですが、でもやっぱり書きたかったので。
これから明らかにしていくつもりです。