屋根の上に座って、空を見上げた。

宝石のような星が、ちらばっている。

でも私には、命の残骸にしか見えなかった。

私が壊してきた、幾百もの。

・ ・・そういえば、貴方と最後に話した夜も、こんな星空だったね。


「火影さま・・・やっぱり私は生きてちゃいけなかったんだよ」

手を千切れるほど伸ばしたところで

決して届きはしない

あの日の追憶


あの人は最後まで、私を暗部にしたことを後悔していた。

私が望んだことなのに。

あの人は優しすぎた。

だから、私のたった一つの願いを、叶えてはくれなかった。

優しすぎる男は駄目ね。

でも今度こそは。



!」

下から聞こえた声に顔を下げると、カカシが立っていた。

「・・・その顔じゃ、全部聞いたんでしょ?どうせだから、全部話してあげるよ」

「俺はお前が何であろうと気にしないよ」

「・・・・私が話したいだけなの。こっち来て」

カカシは迷ったが、は動く気配を見せなかった。

静かに飛んで、彼女の隣に腰掛ける。

カカシが座ったのを確かめると、はぽつぽつと語り始めた。


私は忍に育てられたの。

理由があって、私を引き取ったんだって。

たまにね、呟いてたよ。

同じ顔なのに、どうしてこいつだけ・・・って。

私には意味が分からなかった。

男は優しかったし、私は幸せだった。

遊びのつもりで、技も覚えた。

最後のほうなんてね、私のが手裏剣投げるの上手かったんだよ。

男はいつも笑いながら言うの。

は立派な忍になれるぞ」って。

忍者としては三流だったけど、それはきっと優しすぎたからだと思う。


私が7歳になった頃、男は私の頭を撫でながら言った。

「俺が帰ってこなくても、絶対に家族には会いに行くな」

何回も、何回も。

お前の事は友達に頼んだからって。

私は頷いて、男を見送った。

それが男との別れだった。


何日も帰ってこない男を待ちながら、ぼんやりと、きっと死んでしまったんだろうな、なんて考えてた。

そしたらね、急に家族に会いたくなったの。

あんなに駄目だと言われたのに、どうしても我慢できなかった。

せめて一目だけ。

一目だけ見れれば良かった。

家族の顔なんて知らなかったけど、同じ顔なのにって男が言ってたってことは、私と似た兄弟がいるんだろうと思った。

その日からあてどなく探し歩いて、ある日見つけたの。

私とまったく同じ女の子を。

双子だったんだね。

私がぎこちなく笑いかけたら、その子は悲鳴をあげて家の中へ逃げ込んだ。

その時点で、もう諦めればよかったんだよね。

私、馬鹿だからさ。

ありもしない希望に縋ったの。

もしかしたら、一緒に暮らそうって言ってくれるんじゃないかって。

今の悲鳴は、ただ驚いただけなんだって。

家の前でぐずぐずしてたらさ、両親が出てきたの。

真っ青な顔して、ブルブル震えて。

あいつら何て言ったと思う?

ハヤクキエロ

ニドトアラワレルナ

自分の耳が信じられなかった。

世界が壊れていくようだった。

「やっぱりあの時殺しておけばよかったんだ!あの忍者さえ邪魔しなければ・・!」

ここまで聞いて分かったの。

男は私を助けてくれたんだってこと。

そして、絶対に家族に会いに行くなと言った意味。

頭の中は真っ白だった。

もう何も考えられなかった。

「人殺しは大罪だが、奴は人ではない。悪魔だ。神も許してくれるだろう」

両親が胸の前で十字を切った。

父だった人間が、包丁を持って向かってきても、私は動かなかった。

先生も見たでしょ?

私の胸の傷。

あれ父親に殺されかけた時のだよ。

先生信じてなかったけど。

言ったじゃない。

巧妙な嘘には半分の真実が含まれてるって。

斬り付けられて、血が噴きだして、私は涙を流した。

そして世界は真っ赤に染まった。

私が最初に殺したのは、自分の家族だよ。


「もう・・・いい・・・」

カカシが掠れた声で、言う。

しかしは首を振った。

「駄目。あと少しだから」


一体どれくらいそうしていたのか分からない。

顔をあげたら、人が立ってたの。

眩しいくらいの金の髪に、哀しい表情を宿した男。

「間に合わなくて、ごめんね・・・・」

その人は私の手を引いて、自分の家へと歩き出した。

運命は変えられなかったんだよ。

たとえ間に合っていたとしても、私は家族に会いに行ったもの。

結末は変わらない。


あの人は、すっごい忙しいはずなのに私の相手をよくしてくれた。

「俺の娘だー」なんて言って、みんなを驚かせたり。

私は少しでも役に立ちたくて、暗部にしてくれと頼んだ。

暗部なら火影直属だから、アカデミーから入学しなくてもバレない。

私に押し切られて、あの人はしぶしぶOKしたけど、最後まで後悔してたよ。


あの事件の夜のことは、よく覚えてる。

もうすぐ消えてしまうことが分かった。

「私じゃ身代わりになれないの?」

「ダメ。お前は生きるんだよ。俺の分まで」

「・・・意地悪」

「なぁ、もう最後なんだからさ。お前の笑った顔、見たいな?」

「・・・笑えないよ」

「笑顔でいれば、きっとが欲しかったものをくれる人間が現れるよ。俺には時間がなさすぎて無理だったけど」

私は、なんとかして笑顔を作った。

きっと歪んでただろうけど。

あの人は、とても優しい笑みを返して、私の前からいなくなった。

あの人は優しすぎた。

だから、私のたった一つの願いを、叶えてはくれなかった。

「願い?」

は初めてカカシの顔を見た。

「先生。私を殺して」

「な・・・・に・・・?」


何も聞こえなかった。

聞きたくなかった。

これは悪夢なのだ。

「これは現実。私を殺してよ、はたけカカシ。その為に選んだのだから」