全部嘘だったの。
日常も生き方も。
貴方への愛すらも。
でも。
嘘だけど
嘘じゃない
「な・・・んで、そんなこと言うんだ・・?」
「強くないと私は殺せないから。やっぱり抵抗しちゃうかもしれないでしょ」
聞いたこともない冷たい声で、は淡々と喋る。
「俺とお前は・・・・恋人同士だろ・・・?」
自分に言い聞かせてるみたいだった。
「理由をあげたんだよ」
「理由?」
「全部演技。全部嘘。ね、私が憎くなったでしょ?」
憎い?
ああ、憎いよ。
俺を本気にさせたお前が。
全部演技だと言い切るお前が。
俺に殺せと命じるお前が。
先生の手に、チャクラが集まる。
それはだんだん青白い光を帯び、キリキリと音を立て始めた。
雷切だ。
一瞬で終わらせてくれるつもりなのだろう。
それが哀れみからなのか、憎しみからなのかは、私には分からなかった。
私は笑みすら浮かべて、それを見ている。
やっと終われる。
この呪われた人生を。
悪魔と蔑まれたこの身を。
小さく十字を切った。
家族殺しを忘れない為の儀式。
私を育てた男と、四代目への鎮魂歌。
そして、愛する男への最後の言葉。
蒼い稲妻は完成し、先生が私に向かって疾る。
私の腹を貫くはずの雷切は、しかし寸前で虚空に消えた。
手に水滴が落ちる。
はっとして見上げると、先生は震えていた。
泣いてるの・・・?
「殺せるわけないじゃないか・・・!お前より大事なものなんて、何もないよ」
「じゃあ私の願いを叶えてよ!」
悲鳴のような声だった。
先生は穏やかな笑みを浮かべる。
「お前が死を選ぶのなら、俺も喜んで一緒に逝ってやるよ」
「なんで・・・何で、私なんかの為に全部捨てようとするの?」
「がいないなら、生きることに意味なんてない」
「そんなのダメ!」
「どうして」
「もう大事な人が死ぬのは見たくない・・・!」
「俺も同じ目にあわせるつもりか?」
「っ・・」
先生が私を抱きしめる。
優しく。
強く。
涙が零れ落ちた。
止まらなかった。
私は声をあげて泣いていた。
いつも死にたかった。
死んだ後のことばっかり考えてた。
それでも死ねなかったのは、あの人が生きろと言ったから?
私が生きたかったから?
もしかしたら私は、一筋の希望を信じていたのかもしれない。
いつか、こんな私を愛してくれる人が現れるかもしれないと。
「過去に押しつぶされそうになった時は、ずっと抱きあっていよう。愛が信じられなくなったら、何回でもキスしよう。お前の痛みは背負えないけど、痛みごと愛してやる」
カカシの腕に力がこもる。
は静かに言葉を紡いだ。
「私ね・・・先生のことずっと見てたんだよ。四代目の弟子だった時。暗部だった時。上忍になった時。きっと・・・初めて見た時から待ってた。私に気づいてくれるのを。ずっと忘れてた本当の私に」
好きだよ・・という言葉は、カカシの唇で遮られた。
最後の賭けは貴方の勝ち。
でも私はそれを望んでいたのだ。
この手についた血は消えないけれど。
貴方はそれでも私を愛してくれる。
だから私も約束しよう。
貴方が流した血の重さに悲鳴をあげたら。
私はいつまでも寄り添っていよう。
綺麗事だけじゃ生きていけないから。
過去からも今からも、目は逸らさない。
愛なんてどこにもないと思ってた。
そりゃそうだ。
私が認めようとしなかったんだから。
愛ほど曖昧で壊れやすいものなどないと思ってた。
確かにいつか壊れるだろう。
でもそれは今じゃない。
少なくともこの瞬間は。
貴方への愛で溢れているよ。
主人公の過去を書くシリーズでした。
暗部にするというのは初めから決めていて、「私を殺して。はたけカカシ」というセリフは、ずっと書きたかったセリフでした。
短編の方ではランクを特定しない書き方をしていましたが、それは暗部にする為です。
同じ立場だからこそ、流した血は決して洗い落としても消えないことを知っている。
だから目を背けないで、乗り越えていける。
それを書きたかった話でした。
おつきあいありがとうございます。