次の日のお昼休み。
蓮と奈津美はお弁当を食べていた。
「そーいえば、どっか痛いとこない?」
「うん。平気だよ。頑丈だから」
「そっか。良かったね。・・・犯人本当に見つける気ないの?」
「ないよ。めんどくさい」
「・・・あんたねぇ。あ、さっきめずらしいもん見たよ」
「何?」
「葉月と姫条が一緒に居たの!信じられなくない?」
「あー私も見た。休み時間のたびに会ってるみたいだけど。仲良くなったのかなぁ?」
「違うと思うけど。姫条が葉月にからんでたんじゃない?」
「うーん。珪君が相手にしないと思うけどなぁ。それにわざわざ会う必要なくない?」
「変なこと考えてなきゃいいけど・・・」
「変なことって?」
「何でもないよ」
「?」
奈津美は、二人がこのまま引き下がるわけがないと思っていた。
あんま大事にならないといいのだが。
姫条はけんかっ早いし、葉月は想像がつかない分恐ろしい。
蓮には黙っとこう・・・・
奈津美がそんなことを考えている間。
蓮は蓮で、犯人がどんな人物だろうかは予想がついていた。
でもそれを奈津美たちに言うつもりはない。
蓮だけの問題ではないのだ。
「なんやあんまり収穫なしやなぁ」
「・・・・」
「とりあえず、無差別ってわけやないことは分かったけど」
「そんなことどうでもいい」
「焦んなや。犯人は確実に蓮ちゃんを狙った。何か理由があるからや。でも恨まれるようなことはしてへんと思うし・・・」
「・・・アイツはそんなことしない」
「あぁ分かってる。蓮ちゃんにボコされたヤンキーか、それとも・・・」
「何だ」
「女、やな」
「・・・女?蓮は女を殴ったりしない」
「そーゆー意味じゃあらへん。嫉妬ってとこやな」
「嫉妬?」
「お前、最近女ふらなかったか?」
「・・・それが関係があるのか?」
「大アリや。蓮ちゃんはお前と仲がいい。それを見た女が、嫉妬して突き落とした・・・それが一番自然やろ?」
「・・・・」
「最近じゃなくてもいい。この学校でお前に告ったやつを思い出せ」
「・・・・そういえば1年前にいた」
「一人だけか?もっとおるやろ?」
「それだけだ。顔は・・・覚えてない」
「一番肝心なとこを・・・同級生か?」
「ああ・・・多分」
「じゃ顔見れば思い出すかもしれんな。向こうもお前見たら動揺するかもしれんし。よっしゃ!さっそく行くで!」
そうして、姫条と葉月は1年生の4クラスを回り始めた。
5時間目。
「ねぇ聞いてもいい?」
「・・・質問による」
「何ソレ。何か隠してますって言ってるようなもんじゃん。ま、いいけど。まどりんと何してるの?」
「・・・何も」
「嘘。いつも会ったって挨拶もしないのに」
「・・・勉強教えてたんだ」
「まどりんが勉強!?本当に?しかも珪君に聞くなんて・・」
「そんなに変か?」
「だって犬猿の仲っぽいしー」
「・・・そうでもない」
「そうなの?仲いいんならいいんだけど」
ポーカーフェイスを装っていたが、葉月は内心ヒヤヒヤしていた。
蓮は勘がするどい。それにバレたら怒り出すに決まってる。
昼休みに2、3組は見た。しかしそれらしい人物はいなかった。
残るは4組だが、そこにいるのか、それとも姫条の思い過ごしなのか。
でも一番信憑性のある推理だ。
蓮は人に恨まれる以前に、他人と関わっていない。
もし自分のせいなら、絶対に犯人は見つけなきゃいけない。
こいつを傷つける奴は絶対に許さない・・・・
「ほな、ここが最後やで」
そう言って姫条が4組のドアを開ける。
放課後ということもあって、生徒の半数はもういなかった。
葉月は生徒を見回す。
本当に思い出せるだろうか・・・と思ったその時。
一人の女性徒と目があった。
相手はびっくりして目を見開いたが、すぐそらしてしまった。
「・・・見つけた」
「ホンマか!?どいつや?」
「・・・アレ」
葉月が指をさす。
「突き落とすようには見えへんけどな。まー人間何するかわからんし。よっしゃ、行こう」
「ああ」
「「ちょっといいか?」」
二人同時に声を掛けた。
裏庭につれてきた後。
「単刀直入に言うわ。蓮ちゃん突き落としたん自分やろ?」
女の顔が青ざめる。
「どういうつもりだ」
葉月の声は冷たい。
「・・・どこに証拠があるの?」
「お決まりのセリフやな。証拠はない。でもあんたしかいない」
「言ってる意味がわからないんだけど」
「全部言うてほしいか?・・・自分、葉月に振られたんやってな。まだ好きなんとちゃう?そんでこいつと仲のいい蓮ちゃんに嫉妬した・・・」
「・・・・・」
「答えろ」
葉月の口調は静かだが、怒りがにじみだしていた。
それを聞いた女が、ヒステリックに叫びだす。
「そうよ!私がやったのよ。あんな女が葉月君と一緒にいるから!」
「やっぱりな・・・」
「葉月君は今まで誰とも仲良くしなかったから、振られてもそれでいいと思ってた。でもあの女が我が物顔で葉月君にまとわりつくからいけないのよ!」
「・・・・」
「ねぇ、葉月君も本当は迷惑なんでしょ?だから私が消してあげようと思ったの」
イカれてる・・・と姫条は心の中で思った。
「・・・言いたいことはそれだけか」
「えっ・・・?」
葉月の声に、女は息をのむ。
「俺は迷惑なんかじゃない。だから一緒にいるんだ」
「嘘でしょ?あんな野蛮な女のどこがいいのよ!」
「自分みたいにヒステリーじゃないとこちゃうん?」
「何よ!あんたは黙っててよ!」
「おーこわ・・・」
「・・・・あんたにはアイツのよさは分からない。アイツを傷つける奴は許さない」
葉月の言葉に、女は地面にへたりこんでつぶやいた。
「・・・どうして?何で私じゃなくてあの女なの・・・?」
「他の誰とも違うとこ・・・蓮の変わりは誰もいない」
「・・・もうこれで分かったやろ?二度と繰り返さんって約束するなら、今回は見逃したる」
「あの女のとこにつれてくんじゃないの?」
「そんなことしても蓮ちゃんは喜ばへんからな。犯人は探さへん言うてたし」
「・・・どうして」
「興味がないんとちゃうか?それか・・・大方分かってたか」
「同情されてたってこと?・・・・ばからしい。もういいわ。やらない」
「本当か?」
「本当よ。これ以上葉月君に嫌われたくないしね。・・・でも私の事覚えててくれたのね。嬉しかったわ」
「・・・・・」
彼女はそう言うと。教室に帰っていった。
「なんやお前はっきり言うな」
「・・・何が」
「わからへんならいい。まー解決してよかったな」
嬉しそうに言う姫条に。
葉月は声をかけた。
「姫条」
「何や」
「・・・サンキュ」
「なんや気持ち悪い。お前のためやあらへんで。蓮ちゃんの為にやったんや。でもま、俺達いいコンビやと思わへん?」
「さぁな」
「探偵になれるで。どやイケメン高校生コンビで売り出すんは?」
「・・・お前イケメンじゃないだろ」
「何やと!それがお前の本音やな?こんなんなら恋敵の助けなんてするんやなかったわ!」
葉月が不敵に微笑む。
「蓮は渡さない」
「俺かて負けへん。ぜってー奪ってやるからな!」
ひとしきり睨みあった後。
二人は走り出した。
蓮が待ってるであろう、教室に向かって。
二人が力をあわせるのは・・・・まだまだ先のようである
あとがき