全ての小市民に花束を・・・

2001年の「あの事件」を見つめる目を持つことについて

かのロバート・キャパが設立した写真家集団マグナムが、奇しくも9・11にNYに集合していたのは、偶然というより宿命だったのかもしれない。マグナムはキャパがそうであったように、報道写真と言いながら極めて人間臭い写真が多い。だからこそ、写真集を出すと聞いた時から早く見たいと思っていた。その期待を裏切らず、この写真集は、非常に良く出来た写真集になっている。序文は、「ベスト・アンド・ブライテスト」や「フィフティーズ」でアメリカという国を冷静な観察眼で切り取ったジャーナリスト、D・ハルバースタム。そして、帯にはこうある「運命の日、悲劇の街に、まさに偶然、世界最高の報道写真家集団「マグナム」が結集していた」。その瞬間を世界に発信し、歴史に刻む為に集められた選ばれし者達のようだ。この写真集を見ればすぐに、ハルバースタムが書いているように「ごく普通の人々」こそが最も伝えられるべき被写体だったことに気付く筈だ。イスラエルの歴史も、アメリカの傲慢さも、アフガニスタンの悲劇も、全て報道されるべき事柄ではある。ただ、ニュースではさらりとしか報道されなかった市民や消防士や警官達の静かな哀しみの表情こそが、伝えられるべき事柄だったと痛感する。猛スピードで垂れ流される衝撃的映像の中の1カットとしてではなく、僕らは、その表情をじっくりと時間をかけて凝視するべきなのだ。個人的には、今回の事件は経済至上主義対狂信者の戦争だと感じている。世界貿易の中心(センター)が攻撃された事は、たとえ偶然であったとしても実に象徴的な事だった。個人的見解ではあるけれど、私はどちらにも賛同はしない。アメリカの傲慢さが導いた悲劇でもあるとも思っている。アメリカは、完全なる被害者では決してないし、その後のアメリカの姿勢にも疑問符だらけだ。ただ、この写真集の収益が「NYのテロで逝去、または、負傷した市民や救助隊、消防隊員の家族を支援する基金への寄付金が含まれている」ことは、僕が、この写真集を買おうと思った動機の一つである。僕は、マグナムがアフガニスタンの悲劇をもう一冊の写真集として出してくれれば良いと思っている。勿論、アフガニスタンで被害を受けた人々に対して同じ主旨を持った本として。そうした時に、初めてこの写真集は一つの事件を確実に切り取るのだろうと本気でそう思っている。

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