NODA MAP番外公演
赤鬼
作・演出 野田秀樹
出演 野田秀樹・富田靖子・段田安則・アンガスバーネット
|
ブルーハーツの曲に「弱い者達が夕暮れ、更に弱い者を叩く」という一節がある。この「赤鬼」は、この一節と深い関わりを持っていた。 差別とは何か?と聞かれたら、僕は「人間が集団を維持するために必要なもの」と応えるかもしれない。それは悲しい考え方だけれども。私達は、自分が「内」にいることを実感する為に「外」を確実に必要とする。 この作品は、とても悲しい話だ。外にいたはずの者達が外に出て、又、外を作る。それは人間が孤独にならない限りなくならない。外が無くなると言うことは、内がなくなると言う事なのだ。従って、差別は2人以上の人間が集まれば、自ずと出現する。 「赤鬼」は、外に出ていった者達が、絶望と希望を繰り返す物語だ。外国人の赤鬼が砂浜に漂着する。そして、今まで差別されていた富田扮する少女が、同じ境遇の赤鬼と仲良くなる。ところが、今まで少女を差別していた村民達は、赤鬼を殺そうとする。そして、少女、赤鬼、少女の弟(段田)は船で外に向かう。そして、遭難した彼らは、死んだ赤鬼を食べて、再び村に戻ってしまう。無意識の内に少女が、赤鬼を食べてしまう絶望。宿命としての差別。そして、少女は自殺する。 ストーリーを書くと、とんでもなく暗い作品だ。ところが、見終わったとき、不思議と気分が良かった。良い作品に出会った心地良さと満足感。作品の暗さを感じはしなかった。 野田は、この作品が暗いのを分かった上で、作品を少しでも差別という重いテーマからずらす事に成功している。核心を突きながらずらしている。随所に見られる希望とおかしみ。それは、苦しみも、喜びもひっくるめて人生と言えるような、心揺さぶる展開なのだ。 特に、赤鬼演じるアンガスバーネットの力によるものが大きい。パルコパート3で巨体を揺らしつつ、その青い目が本当に綺麗なのだ。劇中の全ての悲しい展開を吸い込んでしまう位、素敵な青い目だった。この作品は、彼の青い目に捧げられていると言っても良いくらいだ。 演出も4人しか出てこない弱みを逆手に取ったしまった演出だった。NODA MAPが贅を尽くした演出だとしたら、番外公演は力を出せる役者の、少数精鋭で行われる。富田、段田、野田の秀逸な演技を堪能する演出だ。 役者の全てをさらけ出し、その魅力に酔いしれる。そんな贅沢な時間を満喫出来る。それがNODA MAP番外公演の魅力であり、古から続く演劇の最大の魅力でもあるのだなあ、と僕は思った。その力を観れたからこそ、この公演は見た後、奇妙な壮快感があったのだろう。 |