絶対にお勧めの本(僕の中での殿堂入り)
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銃・病原菌・鉄(上) / ジャレド・ダイアモンド 銃・病原菌・鉄(下) / ジャレド・ダイアモンド |
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何故、国や地域によって、こうまで文明に格差が出来たのか?なぜエジプト文明や、中国の文明は、早く生まれたにも関わらず、現在ヨーロッパやアメリカに負けてしまっているのか?など、今まで疑問にも思わなかったが言われてみれば、はれ?と思う疑問に明確に答えてくれる痛快な文明論。かつての戦争で、病原菌が暗躍したり、銃の有無が要因だったのは、よく言われる事だが、それを更に突き詰めていった本。決して人種毎に格差がある訳でない。この本は、実に説得力のある説を繰り出している。しかも、作者の配慮が行き届いていて分かりやすい記述がなされている為、かなり分かりやすい。確かに、歴史科学としても刺激的だが、それ以上に、今後の文明観や様々な価値観にも揺さぶりを与えうる素晴らしい作品だと思う。 |
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60年代のブラックカルチャーというのは、本当に色々と考えさせられる事が多い。マルコムXとキング牧師という存在も、結局の所コインの裏表だという感じがする。キングだけでもマルコムだけでも駄目だったのだろう、と思うし。そして、この本はブラックカルチャーの奥深さを感じさせられます。そして、一見脈絡のない人選の中に一つの太い線があるように感じられて、それはもう感動です。アメリカのネオナチの代表ロックウェル、等もありますが、その中にマルコムとの共通項が見れたり、意外な面白さもあります。この本が教えてくれるアメリカの重荷というか黒人差別という大きな見つめるべき歴史を深く考えさせてくれます。そして、作者自身の姿勢自体が人間の素敵な部分を、たくさん教えてくれます。感動です。特に作者自身のインタビューにいたっては涙が出そうになりました。必読。 |
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エドウィンマルハウス/スティーヴンミルハウザー(福武書店) |
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これは、もう傑作です。アメリカ現代文学の巨匠(と勝手に思っている)の名作。結構アメリカ文学界では、ミルハウザーの「エドウィン」は、好きと言うのが恥ずかしいという風潮があった、と言うのも、なんか良い感じ。で、この作品は,幼くして名作を書き上げる少年の一代記になっていて、年表や手形とかも入っている、人を小馬鹿にしたような純文学です。年表では晩年期が10才位なのが笑える。しかしながら、侮るなかれ、この人の作品の緻密な表現力は、類をみないものがあります。しかしながら、ちょっと前にピューリッツァー賞を受賞。これからは注目の作家になって行くかもしれません。特に、中編ですが「インザペニーアーケード」は必読。精緻かつ類を見ない美しさ。これぞ小説の醍醐味と言った感じの「アウグストエッシェンブルグ」は、本当に小説でしか出来ない表現方法をフルに使った、と断言できる作品だと思います。とにかく読むべし。尚、本作は結構入手が困難らしいです。 |
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この人については、最近人気が出てきたので言うことは余りありません。僕が高校の頃、ニューヨーカー市が90年代最も期待される作家に選んでいたけれど、正しくその通りになったわけですね。Pオースターの作品は、比較的硬質な印象がありますが、最も感傷的に書かれているのは、この作品だと思います(「孤独の発明」も感傷的だけれども実父を扱っているために、多少暗い)発売当初の「人類が初めて月を歩いた夏だった」と言う帯のコピーにはグッときました。登場人物のキティウーと言う名前も大好きです。60年代に特別な感傷を持っている人なら絶対好きになると、僕は信じています。なお、P・オースターの作品は翻訳されている物で「孤独の発明」「幽霊たち」「シティオブグラス」「鍵のかかった部屋」「最後の物たちの国で」「消失」(詩集)「偶然の音楽」等、どれも素敵な作品です。 |
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拳闘士の休息/トムジョーンズ |
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この作家については、良く知らないのですが、非常に感銘を受けた短編集です。レイモンドカーヴァーの再来と騒がれているようですが、僕はカーヴァーが好きじゃないので、余り良いイメージじゃありませんでした。しかしながら、この短編集は凄い良い。ベトナム戦争を主題に扱っていながら、作者自身はベトナム戦争には行っていないとは不思議な感じがします。ベトナム戦争を扱った小説としては、ティムオブライエンの「本当の戦争の話をしよう」がありますが、それにも劣らない描写力だと思います。作者がてんかん持ちのせいか、主人公がてんかん持ちの設定になっていますが、それも意外なくらい小説のスパイスとして効いています。 |
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フラッシュバック/ティモシーリアリー |
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60年代のサブカルチャーに興味のある人は必読の書です。とにかく、60年代のLSDを中心としたサブカルチャーのリーダー格だった人の自伝だからリアルなことこの上なし。この本が凄いのはギーンズバーグを初めとする60年代の巨人達が、実名でドンドン出てくる所もありますが、それと同時に、60年代のヒッピームーブメントのインチキ臭さも露呈している事にある。とにかく幻想を持つのは勝手だけれども、その時代には、その時代の苦労とか皮肉とかがあるという当たり前の事も分かる本です。 |
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彼岸からの言葉/宮沢章夫 |
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本で声を出して笑ってしまう。そんな経験をしてみたい、と言う方には是非読んでもらいたい。不条理というのは、すっかり市民権を得たようですが、不条理というのは、とてもセンスが問われる紙一重のものだと思います。不条理を完璧に理解している日本の書き手というのは少ないと思います。私の中で、別役実と同等、もしくは、それ以上と思える人こそ、この宮沢章夫であり、その宮沢章夫の傑作こそ、この作品です。「言葉がたれる」「言葉が漏れる」などの話。きっと、不条理の世界が理解出来ると思います。 |
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悪意と憂鬱の英国式週末テニス/マデリーンウィッカム |
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映画も絶好調のイギリスだけれども、その余波か、イギリスの良質の小説も次々と翻訳されていて嬉しい。僕が敬愛して止まない翻訳家柴田元幸の編で「イギリス新鋭作家短編集」というのは内容的には、余り良い印象はないけれど、アメリカ現代作家とは違った面白さがありそう、と思ったが、この小説なんか正しくイギリスと言った感じの小説。とにかく、イギリスらしい皮肉たっぷりの小説で、読んでいてニヤニヤしてしまうこと間違いなし。ロックと同じで、何故かイギリスものは哀愁が漂う。これはイギリスの気候とかも関係してくるのだと思うのだけれど、とにかく最後は人間の愚かさとか、滑稽さをイギリス特有の滑稽さを笑いながら、しみじみ感じてしまった。 |
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ドラゴンヘッド/望月峯太郎 |
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最早説明不要の漫画です。漫画はちょっと、と言う人にも是非読んでもらいたい。現代の抱える「僕達は何処にいて、何をすべきか」と言う問いを突き詰めていく展開には、頭が下がります。自分が何処に立っているのか分からない不安感、恐れを、これだけ描けるというのは凄い事です。また、梅図かずおの「漂流教室」と読み比べると、問題の中心の違いが、時代の違いのように比較できるので、是非、そちらもどうぞ。 彼の作品は全てスタイリッシュで面白く、小道具も見逃してはいけません。特に登場人物が読んでいる本がシオドアスタージョンの「人間以上」だったり、ボネガットの「スローター5」だったりして、ニヤッとさせられます。 |
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トポスの知/河合隼雄、中村雄二朗 |
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箱庭療法というのを知っている方がいるでしょうか?これは、その精神療法を分かりやすく解説した本です。しかし、これは単なる医療書とか医学的本ではない。時としてノンフィクションは私的な内容になることがある。例えばライアルワトソンの本のように。この本は、その類の本である。精神的に異常をきたした人々が作り出す箱庭の世界を写真入りで解説しているのだけれど、それが、いつの間にか実に感動的な物語となっていく。人が、一時、一人で世界と対峙する事が出来なくなって、それを徐々に一人で立てるだけの力を持たせていく話なのだ。感動的にならないはずがない。僕が一番感動した話は、登校拒否になった女の子が箱庭に物を全て横たえた箱庭を作る。そして、療法を続ける内に、箱庭を水で一杯にする。そして、その後、全ての物を絶ち上げて、女の子自身も治癒に向かう話。作者の河合隼雄が、別に完治させるのではなく、社会で自由に行動できるだけの力が付けば良い。という非常にリラックスした考えを持っている所が、非常に好感が持てる。 |