ジャムバンドとは水戸黄門である!

〜今聴かずしてどうする?ジャムバンドの聞き方 初級編〜

ジャムバンドなどと言ってるが、そういうものを積極的に聴いている者から独断と偏見で言わせて貰えば、ジャムバンドとはライブ的演奏にこだわる、即興演奏を主体とするバンドって事に違いない。これをジャムバンドという音楽スタイルで分けようとしても不可能で、もし「分けました」という人がいたら、それは嘘だとハッキリ断言出来る。

ジャムバンドで現在名を馳せているのは、フィッシュ(ロック)やMMW(JAZZ)、ギャラクティック(ニューオリンズ)、ジョンスコ(Mデイヴィスの末裔)、ストチー(ブルーグラス)、ソウライブ(JAZZ)等が挙げられるだろう。底流にJAZZ的な匂いを感じる人もいるだろうが、ファンの間で評価される過去のアーティストと言えばグレイトフルデッドやマイルスやザッパ等で、その他にもクリムゾン等のプログレ系をフェイバリットとする人もいるのだからジャンルで括れる訳がない。ひどく曖昧だ。

実際、MMWのメンバーもサリフ・ケイタ(アフリカ)やワイルドマグノリアスが良いと言ってみたり、やはり何でもありこそジャムと言えるのだろうと思う。実際、個人的にはテクノにもそれに近いものを感じる事もあるし、AJICOやROVOにも共通する匂いを感じるし、ボアダムス等のライブ映像を見ると「ジャムじゃん!」と思ってみたりもするから説明に困るのだ。

ただ、ジャムと括られるものには、独特の匂いがあるのは否めない。強いて挙げれば、雑食とでも言おうか。ここでは、そういう物を、今の気分で僕的に説明してみよう。

誤解を恐れずに言おう、ジャムバンドとは水戸黄門である。

この説に従って説明していこう。ジャムバンドの中でも、かなり好きなメデスキ・マーティン&ウッド(以下、MMW)で語っていく事にする。

個人的に好きな作品は「トニック」というライブ盤で、この作品は、かなりJAZZ色が強い。ブルーノートにアヴァンギャルドな彼らが所属する事で異論反論が出ている中、王道JAZZファンを黙らせたとも言われる作品。エレクトロニックを排除した作品で、ネットオンリーで別の日に収録された「エレクトロニックトニック」(これは更にインプロの嵐で私でもちょっとついていけない)をいう作品も出ている事から、この作品がMMWにとっても重要な作品なのは確かだろう。

聴いた限りでは、相当インプロ(即興演奏)色が強く、おきまりの「難しいね」という声が聞こえてきそうだ。しかし、「難しい」等という評価は音楽にない。言い切っておく。「難しい」=「つまらない」で良いのだ。変に高尚っぽいから難しいと遠慮する訳で、分からないなどと言う必要はない。つまらないのだ。ただ、ここでつまらないと思った人は損しちゃうのだ。折角楽しめるかもしれないものを・・・と言っておきたい。

さて、じゃあ何故難しい音楽を楽しめるかと言うと聞き方なのである。もちろん、経験や知識が要求されるに違いない。音楽理論を知っていたり、ピアノやドラム、ベースを演奏していると驚かされるテクがあるかもしれない。ただ、そういう人は少数派なので、ここではそういう知識、経験値を無視した所での楽しみ方を考えよう。

個人的にはベースのクリス・ウッドの演奏が気に入っている。僕が、かつてベースをやったことがあるのも関係してるかもしれないが、大した事じゃない。音色、うねるグルーヴ感、そういうものをクリス・ウッドの演奏から感じるのだ。そう思ったら、そのベースを道しるべとして演奏を聴いていってみよう。特に、演奏のトーンが瞬時に変わる瞬間。3人の一糸乱れぬあうんの呼吸が、実にスリリングになってくる筈だ。ほんの一瞬の合図と共に、3人がすっと音色もテンポも演奏の色合いも変える一瞬。淡々としていた筈のベースがブブブンと唸りだす一瞬。この一瞬に一番興奮しないだろうか?そして、勢いづいた彼らの演奏はスピーディーに突き進む。

ここには聴く側と演る側の暗黙の了解がある。「最後は印篭出すよ」そこがクライマックスだよという了解である。それが唯一のルールでもある。で、印篭を出すクライマックスまでは、登場人物が色々な楽しみを提供するのだ。MMWのメデスキがオルガンで弾きまくるかもしれないし、マーチンが激しいドラムソロを見せるかもしれないし、個人的にはお気に入りのウッドがうねるベースでのせてくれるかもしれない。さしずめ、八兵衛のうっかりや、弥七の風車だったり、由美かおるの入浴シーンである。

時折、「おいおい、もう入浴シーンかよ!」といった意外な喜びがあったり、「八兵衛のうっかりがまだだなあ、何時出るのかなあ」というじらされる楽しみ方もある。そういう見せ場を、MMWも決して忘れない。ましてや「助さんが人質に!」なんて予想外な事も起こる。これは、さしずめアドリブで有名な曲のフレーズを入れ込んだりする瞬間だ。

さて、おきまりの楽しみを的確なポイントで見せつつドラマは進行する。聴く側は、すっかり夢中なご様子だ。MMW御一行(水戸黄門御一行)の弛まない旅が続く中、小さな波乱に驚いたり、泣いたり、悪役に憤ったりしつつ術中にはまっている自分に気付くだろう。

悪役の悪行に「おいおい何時印篭出すんだよ」そんな事を思っている自分がいる。MMW御一行の痛快な決めのフレーズこそが印篭なのだ。じらされつつ、そのじらされ具合が快感を呼んでいないか?じらすだけじらすのだ、上手いジャムバンドほど。

ちょっとした悪代官のお色気シーンにも興奮したし、助さんも格さんが救出した。ホッと一息ついたその時!出た〜!印篭だあ!きゃっほ〜!おいおい、さっきまで偉そうにしていた悪代官がひれ伏してるぞ!その瞬間こそ、バンドが一体となって強烈な決めの演奏をした瞬間である。

分かっていただけただろうか?ジャムバンドの初級編は水戸黄門的楽しみ方を習得する事にあるのです。(本当か?)

retun