ブッシュに見せてやりたいウルトラセブン

〜やっぱり衝撃!これは子供向けのドラマなのか?「ノンマルトの使者」〜

小さい頃からウルトラセブンが大好きだった。初めて何度も繰り返し読んだのは、ウルトラセブンの全てが書かれたテレビマガジンの別冊だった。その巻末に全話の視聴率が載っていて、面白い回よりも面白い回の次の回が好視聴率なのを発見し、とどのつまり面白い物とは人が騒ぎ出す直前が面白いに違いない、などと、ちょっとした大人の思考を芽生えさせてくれたのもセブンの別冊だった。

名古屋出張の折、ホテルから少し離れたレコード屋で、そんな「ウルトラセブン」のDVDを見つけた。¥1980也。欲しい巻が一つだけあって、「第四惑星の悪夢」「円盤が来た」と実相寺昭雄作品に加えて、セブンの脚本家の中でも有名な金城哲夫の万感の思いが込められた作品「ノンマルトの使者」が一つになっているものだ。早速購入。

「ノンマルトの使者」は、アンヌが、謎の海洋開発を止めるよう謎の少年に言われる所から始まる。その直後海洋開発基地が爆破される。ダンはノンマルトと聞いて眉をひそめる。故郷(M78星雲ね)で地球人はノンマルトと呼ばれていた。少年の言っているノンマルトとは誰か?再び出会ったアンヌに少年は言う。遥か昔、地球はノンマルトの物で、地球人こそ侵略者であると。ウルトラ警備隊は怪獣が海から現れて攻撃を始める。セブンに変身しようとすると謎の少年が現れる。止める少年。ノンマルトは、人間より弱い。攻撃するのは止めろと。それでも変身するセブン。ノンマルトの都市を見つけて攻撃するキリヤマ隊長。事件が解決しても釈然としないダンとアンヌ。謎の少年の正体は?ラストは教えません。自分で見てね。

この作品が、名脚本家、金城哲夫が思いを詰め込んだ作品というのは、ファンなら有名な話で、沖縄出身の金城が海底人として登場するノンマルトに自分の故郷沖縄を重ねて作ったと言われている。

それを知って改めて見ると背筋が震えた。沖縄問題がくすぶり続けていた時代に、しかも子供のヒーローものに自らの主張を重ね合わせた金城の思いとは一体どんな物だったのだろうか?今のテレビドラマでは決して見る事が出来ない硬派な作り手の気合を感じないだろうか?

アンヌ「真市君(少年)は人間でしょ、だったら人間の事を考えるべきだわ。海は大切な資源なのよ」

真市「人間はいつも自分勝手だ。本当は地球もノンマルトの物なんだ。人間がノンマルトを海に追いやったんだ。人間こそが侵略者なんだ。攻撃するならノンマルトもやるよ」

スゲエやり取り。しかもノンマルトが人間より強くないなんて、泣くじゃないですか。しかも、人間に追いやられて海へ逃げ、また海からも追いやられようとされているノンマルト。リチャード・トンプソンのアルバムジャケットにも似た姿にも泣く。

弱者に対していたわりがある。そういった時代だったのだろう。真市君の台詞のノンマルトを琉球人として、人間を日本人にしても十分伝わる事にも泣くし、悪役、弱者に細かい配慮がなされている所にも震える。

これだけ社会的でありつつ、ヒューマンドラマ(ノンマルトこそ本当のヒューマンだからね!)として繊細な話があるだろうか?実際、ウルトラセブンだなんて忘れてしまう位に感動します。正直な話。しかもラストも良い。(本当に見てね)

更に、時代を感じさせるシュールさも見逃せない。少年を探すアンヌ。キリヤマ隊長(後に時代劇で悪代官役などで好評を博すが、残念ながら死去)に少年の捜索の報告をする時、「授業中で駄目でした」。地球の危機より授業を優先する牧歌的な時代性にも震えるし、ノンマルトが略奪した原子力潜水艦グロリアを躊躇いなく攻撃するウルトラ警備隊の知識にも感服。そのシリアスなムードを、ソガ(現在芸能プロダクション社長兼古手川祐子の旦那だった筈)とフルハシ(毒蝮として、ババアに毒をまき散らし中)が漫才めいた掛け合いで一気にチャラにしたりと、ドラマ全体に鉄壁のチームワークが見て取れるのも素晴らしい。

ノンマルトの都市を海底に発見し、「遥か昔、地球に住んでいた者がいたなんて、いやそんな筈がない」と自分に言い聞かすキリヤマ隊長(後に時代劇で悪代官…しつこいって)が、ミサイルを打ち込み壊滅する姿にブッシュやイスラエルをダブらせる人も居るだろう。いや、正しく人間はこのドラマが放送された時と全く変わってはいないに違いない。なんだか悲しいじゃないですか。

この巻に収録されている実相寺昭雄の演出が冴える「第四惑星の悪夢」と異色のウルトラもの、勿論実相寺昭雄の監督作品「円盤が来た」もじっくり書かせてもらいます。

あ、ちなみにセブンのDVDは全4話収録。シリアスな3話と共に収録されているのが「恐怖の超猿人」というのも泣かせる。脚本は市川森一だけど。