これは一種の不条理劇なのか?

〜オペラに挑戦!R・ウェインライトの気持ちが少し分かって含み笑い!〜

結構いると思うが、ミュージカルを見てると笑ってしまう時がある。喜んだ時に突如歌い出す、悲しんでも歌い出す、何かひらめけば歌い出す。そして踊る。周囲の人達は、それを優しく微笑んで見つめている。厄介な場じゃないかと思う。そんな忙しない人は遠慮願いたいものだ。

ところが、もっと凄いものがあった。オペラである。これは凄い。告白するのにいきり立って歌い出す。「彼の名は、愛〜」。参りました。いや、ホントある意味で、ミュージカル以上に凄い事になっている。

元はと言えば、「あの子を探して」や「初恋の来た道」で涙を絞り取られたチャン・イーモウという好きな映画監督がいて、その人が4年前にオペラに挑戦していたのだ。それが「トゥーランドット」という作品で、あの柴禁城で上演された一大スペクタルオペラであった。それを知ったのは、ちょっと前に公開された、そのオペラの製作過程を描いたドキュメンタリー「トゥーランドット」が上映されたからである。

さて、その本編がDVDになっているというので探していたのだが、これがなかなか無い。で、偶然高円寺の古本屋で見つけた。だから止められないのね、中央線沿線住まい。その本編を見てのけぞった。凄い話である。異邦人がやって来て、 姫に一目惚れしてしまう。彼女と結婚したい者は、彼女が出す三つの謎掛けに答えなければならず、答えられないと首を切られてしまうという

その3つの謎掛けを見事答える異邦人。ところが姫は貴方の者にはならないと言う。おいおい我侭のたいがいにしろよな。画面を見ながら少し拳を握る。

そこで男は言う。「じゃあ私が一つ謎掛けを出しましょう。私の名前を世が明けるその時口にすれば、私は死にましょう」

一体何が起こっているのだ?そんな理不尽な話が・・・。そんな事を思いながらも物語はズンズン進んで行くのだ。異邦人の父と、異邦人に恋い焦がれる女奴隷が捉えられ、男の名前を告げろと言う。抵抗する二人。女奴隷は異邦人を慕っており、耐えきれずに自殺。狼狽える姫トゥーランドットに異邦人は、貴方を抱けたのでそれで良い。と言って名前を告げる。そして姫は絶叫する。「彼の名前を知りました!彼の名前は〜愛〜!」

歌う、歌う。これでもかというビブラートで歌いまくる。大団円。

何故だ?何故異邦人は姫に、そこまで愛情を注ぐ!それにどうした?女奴隷は、異邦人に永遠の愛を誓い、トゥーランドットの髪飾りで自殺までするのに・・・そんな事も関係なく異邦人はトゥーランドットに魅せられる。「貴方が私の〜名前を〜口にすれば〜それで私の〜愛は〜貫徹するの〜で〜す〜」

やめちくり〜。頭がどうにかなってしまいそうだ〜。

しかし、かのズービン・メータ指揮の下、軽やかに、華やかに、そして絢爛豪華にオーケストラが鳴り響けば、そんな不条理さえも納得させられる。異邦人役の男の絶叫顔に戸惑いつつも、徐々に徐々に響き渡るオペレッタ達の声に魅了されていく。

恐るべしオペラ。破綻した物語さえも、凄い勢いの歌声とまばゆい舞台と衣装、それにオーケストラの怒涛の迫力。音楽自体にドラマがあり、緩急つぼを押さえたBGMが、殆ど理不尽と思えるドラマを補強している。それに乗って流れるような想像を絶する歌声が観る者を強引にうっちゃってしまうのだ。これがヨーロッパ、強いては白人の強引さ。同調なんて求めずひたすら強引に相手を頷かせる恐ろしさ。正に白人社会の恐ろしさと力強さを見せつけられたような2時間。オペラは恐ろしいのである。