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中古盤屋は、決して買う為だけの場所ではないのだ。 賢い消費者になるに 序章 |
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映画のチラシを見て「ふふ〜ん」と少し嬉しくなる見出しがある。例えば「ザ・ロック スコーピオン・キング」である。「ハムナプトラから誕生した新たなる謎と伝説!」。ビックリマークがあり、その上にはでかでかと「全米歴代NO.1新記録樹立!」(4月公開作品と小さくカッコ書きで)とある。まあプロレスファンにとっては、ザ・ロックで少々揺らぐ人もいるかもしれんが、ビックリマークだらけも困るが、全米歴代NO.1新記録というのも、よう分からないというより、明らかに嘘にちがいない。物は言いようにも程があるのである。 しかし、これが嘘なり、かなりギミックが入っている事は、殆どの人が分かっている。「マジ!?そんなスゲエなら見なきゃ!」とか興奮して劇場を出た途端「金返せ!」と叫んでも、それは判断能力の欠如している事に非がある。もしかしたら面白いという可能性もなきにしもあらずだが、その可能性は風見しんご主演映画「泣き虫チャチャ」が日本映画史上に残る傑作になる可能性と同じ位低いに違いない。例えそんな事になって友人に「昨日スコーピオンキング観たらつまんなくてさあ、ありゃあ詐欺だよ」等と言おうものなら、それこそ自殺行為に違いない。せいぜい「この人は全く映画を知らない」と思われるだけだ。スコーピオンでキングである。筋肉と美女である。何か匂いを感じとるべきだ。 さて、じゃあ多くの人が、「スコーピオンキング」が全米歴代新記録を作ったという触れ込みに騙されないのは何故か?と言えば、映画の情報がある程度浸透しているからである。特にアメリカでの映画市場の情報はある程度耳に入っており、その経験や情報処理能力が鍛え上げられているからに過ぎない。これが「バチカン王国、ブタペストで記録を塗り替える大ヒット!」とか、「チベット国際映画祭でグランプリ、観客大絶賛!」となると、途端に情報処理がショートする訳だ。情報とはそういう物である。そして、その情報処理を少しでも精度の高いものにするのは、単純にどれだけの情報を獲得するかに尽きるのだ。最終的には、映画を多く観る事に尽きちゃったりする。そこでスコーピオンキングが、他よりも面白いと思えば、それはそれで個人的嗜好であり、風評に流されない確固たる好みを持っていると胸を張って良いと思う。僕は、そんな人は大好きになるに違いない。「黒沢、コッポラ、キューブリック、フェリーニ、ゴダール。どれも観たけど、やっぱり最後はスコーピオン・キングに限るね」。そんな言葉を吐かれた日には興味津々である。 じゃあ料金を払う前に、どうにか「金返せ!」と言わないで済むにはどうしたら良いかである。消費者として、決して売り手に易々と騙されてはいけない。自由市場の世の中で売り手に騙される事は屈辱である。100%そういう思いをしないで済む事は無理でも、それを限りなく少なくする事は出来る。常により良い物を手に入れなくてはいけない。 ここではCDについての買い方を考えてみよう。売り上げが急下降するCD。3000円近い価格を払わされるのなら、より長く聴けるものを買いたいと思うのが常ではないだろうか?雑誌はレコード会社の息吹がかかり誉める事しかしない。傑作!と書かれていながら、どうもしっくりこないが、ヒットしているし、売れているから認めておこうと無理して好きになってしまった経験もある筈だ。もしくは友人が来て、CDの並びを見られた挙げ句「こんなのきいてたんだあ〜」等とニンマリされ、「いやあ俺も買っちゃったんだよねえ、つい」等と卑屈な笑みを浮かべる以外に手だてがない屈辱的な経験は誰にでもあるはず。MAXの「トラトラトラ」とかZOOの「チューチュートレイン」等が並んでいた日には、友人が来る前に隠す等、消費者としてはかなり負けていると思った方が良いだろう。 先ずは曲を聴く事。これは大事である。テレビ、ラジオ、今ならケーブル。そう言った媒体で楽曲を聞く事が第一である。これは基本です。そして、評論家の意見も話半分で目を通す事も欠かせない。彼らは人の数十倍音楽を浴びている。何処かで引っかかるものが無ければ、それを誉めたりしないのである。ここで効果的なのは、自分の好みに近い評論家を探す事である。例えばエゴラッピンの「色彩のブルース」が良いと思ったなら、それを絶賛している人を探す事だ。次に元ちとせが良いと思ったらそれを誉めている人等。徐々に同じ嗜好の人が見つかれば、これに越した事はない。その人の評論を読んでピンと来る物を少しづつ買うというのも手である。ここで注意したいのはヒットした後だと、誰でも誉めるのでブレイク後はただのこじつけの可能性が高い事である。「Mの黙示録」という奇天烈な番組で訳知り顔で評論している変なおやじはこのパターン。こういう人の言う事を真に請けるのは、今は亡きトゥナイトを見て若者文化を知った気になる親父と大差はない。 で、こういうこまめな事が出来るのは音楽が異様に好きな人だけである。てっとり早い方法が一つある。これは中古盤屋に発売してから2週間くらいしてから行く事である。馬鹿売れしていればいる程、この精度は高くなる。欲しいアーティストの新作が中古で並んでいれば、その作品は買うに値しない確立は高い。お分かりだと思うが、喜び勇んで買った人がすぐに手放す作品である。=ファンでも売っちゃう程度の作品、という事である。2、3件廻れば大概の事が分かる。最近で凄かったのは、グレイプバインと一時期の椎名林檎等である。それとは逆に中古でなかなか流通しないのはモンゴル800や松浦亜弥、エゴラッピン。これは満足度が高かったに違いない。勿論、これにも例外があって、先を行き過ぎて伝わり難い作品もあるので注意が必要だ。 ただ並びを見て、売れてるとかだけで判断している内は素人である。これだけ情報が溢れているなら、それを解析する能力は持っておきたい。それが出来なければ足下をすくわれる。よりよい消費者になりたいものである。 |