Fromageフロマージュふろまーじゅ
第2号/8月,1999年
R.D.V.千葉支部長が9月14日に投稿して下さった”Fromage第2号です。
今回の話も比較的新しい話です。
皆様も手にされた”宝石箱”の話です。
<<<注意>>>
R.D.V.千葉支部長からいただいた原稿は”紙ベース”でして、ここにアップしたものは
harimaが打ち込んだものです(原文を変えないように改行位置を変えたりもしています)。
ですから誤字脱字等につきましての責任は全てharimaにあります。
女神は色々な人に色々な思いを配りました。
その宝石箱をそっと開けてみて下さい。
では、2幕のベルです。
[Fromageフロマージュふろまーじゅ 第2号/8月,1999年]
「mina」に寄せて。
移り気な神様の気まぐれは、時に美しい宝石を誕生させる。かくして沙羅さんの最新写
真集は時代の表舞台にあらわれた。私はそんなに感性が鋭敏じゃないけど、感受性豊かな
人であれば、この名品に魅了されて、せつなく張り裂けそうなほどの恋心を、このアーテ
ィストに抱くでしょう。
ページをめくる。美的気分は感嘆のため息になってしまう。手を休め、しばし黙そうす
る。外見の美しさに気を取られて沙羅さんの「心の美しさ」を見失わないようにと自分に
言い聞かせる。
「mina」における華やかさと素朴さの共存。ろうたけた、たおやかな姿、それはサ
ンドロ・ボッティチェリの名画「ビーナスの誕生」と「春」を私に連想させる。(フィレ
ンツェのアルノ川に面したウフィツィ美術館に収蔵される、この両作品はルネサンスの名
画であり、よく美術関係の本に紹介されている。)
フィレンツェという名の由来は「花の女神フローラ」をラテン語表記した「フロレンテ
ィア」だという。「mina」撮影時の4月の英国にも可愛い花は咲いていた。その地に
おいて大輪の月下美人の花のように力強く豊かに自己表現した沙羅さんに感心してしまう。
ここで時間をさかのぼっておこう。5月21日金曜日夕方、ほしい本があって秋葉原の大
型書店に入る。そこで初めて「島田沙羅ヘアヌード写真集6月刊行」を知る。すぐ外へ出
て電話をかける。所属事務所が丁寧に応対してくれる。「今日が色校正、撮影する写真は
全部、沙羅本人が選んでいます」と聞く。内心は、無茶するなあと思った。彼女がヌード
を発表する事よりも、今どきヘアヌードだと広告してもインパクトが弱まってるから売れ
るのかと妙に現実的な心配をする。
その翌日、雑誌グラビアで最初に作品を見る。どこか割り切れない気持ちだけど「いい
女だねえ」と誇らしげな気分すら発生する。
多くのファン達にとって写真集を実際に手にしたのは発売日翌日の6月13日、日曜日
の店員200人のサイン会当日だった。私もその一人。表紙には、まっすぐおだやかにこ
ちらを見つめる佳人がいる。
正直に告白すると表紙をあけるのが、ちょっぴり恥ずかしい。全編96ページにわたる
華麗なページェント(野外劇、演劇)。So fine, so lovelyと夢見心地。全体を一貫したス
トーリーが見えないけど一枚ずつの、きちんとしたフレーミングが嬉しい。絵の美しさを
堪能する。
すぐれた芸術作品は心の安らぎと知的興奮を同時にもたらす。この写真集もその例にも
れない。なんとなく安心する。ふと「ロンドンで花粉症は大丈夫だったかな」「沙羅ちゃ
んに現地ペットはお約束の付き物。この白いポニーは優しい性格だったのかな」と取り止
めなく考える。
タイトルは「私自身」を表現するフィンランド語の単語だと聞きました。けれども、作
品はおのずとアーティストを離れて独立した存在として評価されます。願わくば沙羅さん
の思いと作品を鑑賞したファン達の思う「彼女自身」が、なるべく同じイメージでありま
すように。そうだと理想的かな。結局は見る人各自の思いは別々でしょう。
島田沙羅さんが大成しますように。かつて沙羅さんは「みんな大好き」と明るくはしゃ
ぐ、イタズラな天使でありました。
付記。
ボッティチェリの絵画「ビーナスの誕生」は裸身の女神が、「春」は一部分に体に薄いヴ
ェールをまとった女性達が描かれています。
月下美人は夏に咲く白い花。開花するのが夜だから、この名前が付いたようです。
神田神保町でのサイン会は当日に参加者は定員いっぱい。テレビ取材が来るなど大盛況
でした。沙羅ちゃんが明るく元気に礼儀正しく参加者全員と交流していたのは、言うまで
もないことです。
この文章を書くに当たって手元の「mina」と見ながら、「ますます、いい女だねえ」
と感心ばかり。文章を読み返して、わかったようなわからんようなことを、よく書いたも
んだとビックリ。さて余談の余談くらいになりますが、5月21日に私が欲しかった本は
ウンベルト・エーコ「フーコーの振り子」。この作家の本は映画化された「バラの名前」
が有名。「フーコーの振り子」を読み始めてから知ったのはミラノやパリが舞台になって
いること。といっても街の描写はほとんど無い。ミラノといえば、沙羅ちゃんが行きたい
場所にあげていた町です。
備忘のため書いておくと「ヘアヌード」という形式は1993年発表の篠山紀信、撮影「樋
口可南子water fruit」からスタートするとされています。
以上がR.D.V.千葉支部長が寄稿してくださった文章です。