http://lib.ru/KOELXO/alchemist.txt
プロローグ
アルケミスト(錬金術師)は誰かが旅人から持って来た本を手に持っていた。本にはカバーがなかったが、彼は著者の名前を見つけた。ーオスカーワイルドーそして次々にページをめくり、ナルシスの物語を見つけた。
日々絶えることなく、小川に映る自分の姿に見惚れる若者の神話で、アルケミスはよく知っていた。ナルシスは最後に水に落ち溺れるまで見惚れ、岸には花が生え、彼を追想した名前が付けられた。
しかしオスカーワイルドは、この話を別の物語として語った。
『ナルシスが溺死した時、女神たちードリュアスーは小川の水が涙で塩辛くなった事に気付いた。
「何を悲しんでいらっしゃるの?」ドリュアスは尋ねた。
「私はナルシスの死を悼んで泣いているのです。」小川は答えた。
「意外な事ではありません。」女神は言った。「だって結局彼が森へやって来た時に、私達はいつも彼の後を追って走っていました。でもあなただけがー彼の美しさを唯一真近に見たのですよ。」
「彼は美しかったのですか?」その時小川は尋ねました。
「あなたが一番良くご存知のはずですよ。」森の女神は驚きました。「
彼は日々やって来ては朝焼けから夜更けまで、岸辺にではなく、水面にかがんでいたのではないですか?」
小川はしばらく黙り込み、やっと答えました。
「私はナルシスが美しいとは気付きませんでしたが、彼のことを悼み悲しんでいます。彼が岸辺にやって来て水面にかがみ込む度に、彼の目の奥深くに「私の」美しさが映っていたので、私は泣いているのです。』
『なんて素晴らしい物語だ。』アルケミストは思った。
自分の羊を探す習慣に慣れてからサンチャゴは、最終的に我に返り思い出した、自分は新しい世界に来ているのだ、しかしそれは悲しみを呼び起こすものではないということを。そして彼は幸せであった。それ以上は食料探しにぼんやりさまよい歩くことは無い。彼は宝探しに出発する!ポケットにはいくらも持っていないが、その代わり、人生に信念を持っている。昨日の夜、冒険家の運命を選んだ。つまり本で読んだ人達の一人になるのだ。
ゆっくりとした足取りで、若者は広場の周りを回って歩いて行った。商人達が自分の露天や屋台を開き、彼は、砂糖菓子を陳列台に置き、商品を並べ商人を手伝った。
商人は喜びに満ちて微笑んだ。つまり彼には何の為に生きるかを知るに充分であった。喜んで新しい苦難の日を迎える心構えをした。彼の微笑は、若者に老人の微笑を思い出させた―すなわち聖なる皇帝、メルヒセデクのそれを。
省略
数日後サンチャゴはイギリス人に本を返した。
「それで、そこ分かったかい?」
半分皮肉混じり、半分希望を込めてそう尋ねた:彼は不安に駆られる意味から話をそらすために、自分の事について誰かと話したかったのだ。
「僕が理解したのは、世界には霊魂があり、これを悟る人は世界中の言葉も理解する、ということで全てです。他には、多くの錬金術師が自分の道を見つけ、世界の霊魂、賢者の石、不滅の霊薬を発見したということ。」
若者は言い、しばらく黙った後付け加えた。
「でも最も重要なことは、全てはエメラルドの面に収まるほど簡単だということです。」
若者は自分に起こった事で不安になった。彼は世界の霊魂に入り込む事から遠ざかった。そしてその為にもしかしたら自分の一生を払わなければならないかもしれない。相当に高い代償ではないだろうか?しかし彼は自分の運命に従うために羊を与えた時に、そんな賭けを決心した。そして馬追いが言った様に二度死ぬ事はありえない。:明日起こるか、あるいはいつか別の日か?過去でも未来でも、いつでも起こりえる。全てはこの言葉次第だ。「マクトゥブ」(人生の法則の様な事を意味すると思われる言葉)
「僕は行くよ、」彼は言った。「でも君には知っておいて欲しい。僕は戻ってくるよ。僕は君のことを愛している。だって、、、」
「何も言わなくていいわ。」愛しい彼女は遮った。二人は愛し合っているのであり、愛に論拠などは不要なのだ。
しかしサンチャゴは続けた。
「戦争が始まった時に夢を見たからなんだ。それは水晶を売り砂漠を横断しオアシスに現れた、メリヒセデクの皇帝に会った夢だった。そして錬金術師が住む井戸で君に尋ねた。宇宙が存在するが故に僕らは出会えた。だから僕は君を愛するのだ。」
地球上の全ての人は何かしらに従事しさえしなければ、世界の歴史上で重要な役割を果たしているはずだ。普通はその事を知りさえしないものだ。
若者は微笑んだ。人生の意味に関する問題が牧夫にとってそれほど重要だという事を人は想像だにできなかった。
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