□角田光代 / 人生ベストテン

★★★★★
角田さんの小説はどうしてこうもハズレがないんだろう。
この本に収録されている6つの短編も
短編ながら、どれも読み応えのあるイイ仕事してます。
それはきっと、以前も書いたけど「夜かかる虹」のあとがきにあった
「自分の知らないことを知っているかのように、
自分の中で答えがでていないことを
答えを出したかのようには書かないということ。」
という角田さんの信条に因るものなんだろう。
かといって、もちろん小説に書かれている全てを
角田さんが体験している訳ではない。
角田さんは私の知る限り未婚だけれど、既婚の人の話も多いし。
角田さんは人と飲みに行くのが大好きらしい。
多分、そこでいろんな人と話をして(もちろんそれ以外の様々な場面でも)
いろんな事を感じて、考えて自分の中で消化された事が小説になるんだろう。
ちゃんと消化されてるから違和感がない。
例えば、男性目線の話だって自然だ。
(それは私が女だという所為もあるだろうから、男性の意見も聞いてみたいけれど。)
だから角田さんの小説はとても信頼できる。
それから上手く行くことばっかりじゃないけど、湿っぽくないのがいい。
すごく、いい。
2005.8.28
|
□角田光代 / 対岸の彼女

★★★★☆
直木賞受賞作です。
大人になれば、何でも出来るようになると思っていた。
実際は全然そんな事はなかった。
いつまでたっても私は私のままだった。
蛹が蝶になるようには人は変われない。
だけど本当は何だって出来るのだ。
ただ、自分で自分を縛りつけて、やろうとしないだけ。
例えば、煙草を吸う事に後ろめたさを感じる必要は無いし、
一人でカウンターに座り、朝まで呑んで酔いつぶれたとしても
誰に咎められる訳でもない。
そんなちっぽけな事なのに、馬鹿みたいに自由になった気がして
そんなちっぽけな事ですら、臆病になっている自分がいた。
私は私のままだって何でも出来るのだ。
もう見えていない振りをするのだけは、止めようと思った。
2005.5.29
|
□角田光代 / 空中庭園

★★★★☆
郊外のダンチで暮らす京橋家を
家族とその周辺の人々のそれぞれの目線から描いた連作小説。
「何ごともつつみ隠さず。」というルールが
余計に決して無くすことのできない壁を際立たせる矛盾。
人と関わることによって逆説的に浮かびあがる孤独。
人はやっぱりひとりなんだ。
それでも人と関わることの意味。
家族であることの意味。
角田さんは目には見えないけれど確かに存在しているものを
目に見えるように描き出していく。
只、そこにあったものが迫ってくる驚き。
角田さんの小説の力を感じる。
映画ではどんな風に描かれているのか楽しみだなあ。
解説が石田衣良だった。
「男の目から見ても、男性目線の話も違和感がない。」とのこと。
疑問に思ってた事が解決した。
でも、石田衣良って女性成分も多そうだからな・・・
2005.11.13
|
□角田光代 / 菊葉荘の幽霊たち

★★★☆☆
満室の木造ぼろアパートに住みたい吉元の為、
大学生の振りをして、住人の部屋に転がり込んだりして
どうにか部屋を空けようと躍起になる典子。
先日の「愛がなんだ」とも通じるのが
執着を続けるうちになんで執着してるのかも曖昧になってしまうところ。
特に典子は自分のことでもないのに、どうしてこうも頑張るのか。
というより、始めてしまった以上、だんだん収拾がつかなくなったのだろう。
それに対して吉元は自分の事なのに、典子に任せっ放しだし。
いまいち腑に落ちなかった。
ヤス子の存在が強烈だった。
2005.8.28
|
□角田光代・佐内正史 / だれかのことを強く思ってみたかった

★★★★☆
東京に住んでいないから、
常にある、東京に対する憧れの様な感情。
そこに暮らす人は何処か物語の中の登場人物みたいで。
孤独に押しつぶされそうな自分を抱えながらも
まっすぐに歩く。
その姿はとても眩しい。
それはきっと彼らが、ある種の覚悟を決めた人達だからだ。
佐内さんの写真が好きだ。
彼の目に映る世界は透き通っている。
2005.12.3
|
□角田光代 / 愛がなんだ

★★★★★
はあー。
読み終わっておっきな溜息が出た。
お世辞にも魅力的とは言い難いマモちゃんに対して
片思いとも言えないような、不毛な執着を続けるテルコのお話。
テルコと葉子、自分はどっちかって言ったら、確実にテルコだ。
しかも、読んでて「馬鹿だなあ」って思うけど
どうしょうもないのもわかっちゃうんだよねぇ・・・
惚れた弱みってやつですかね。
あんたの言ってることは全部きれいごとだよ!
私はそんなきれいごとは言わない、
みっともなくたって物欲しげにうろつくよ。
仲間であったはずの葉子のツカイッパ、ナカハラ君が
もうこんなことは止める、と言い出したときのテルコの台詞。
ここまで言い切った彼女にかける言葉はもう何もありません。
私をとらえて離さないものは、たぶん恋ではない。
きっと愛でもないのだろう。
私の抱えている執着の正体が、いったいなんなのかわからない。
けれどそんなことは、もうとっくにどうでもよくなっている。
最後にテルコはこんな風に思うんだけど
きっとそれも愛なんだと思うよ。
2005.8.28
|
□角田光代 / All Small Things

★★★☆☆
はじまりはカヤノの小さな悩み。
30過ぎて初めてできた彼氏とは上手くいってるんだけど
いまいち、トキメキというものに欠ける。
他の人は一体、恋人とどんな時間を過ごしているんだろう?
「ねえ、今までで一番印象に残ってるデートって、どんなの?」
カヤノは恋多き友人、さと実に尋ねてみる。
その質問はそれぞれの身近な人にリレーのバトンの様に渡っていく。
突然の質問に面食らいながらも、それぞれが、思いめぐらせる。
思いついたのはどれもささやかで、他愛も無い出来事ばかり。
だけどそんな他人からみれば全然ぱっとしないような事が
幸せだったりすることをみんな本当は知ってるんだよねぇ。
内容も然ることながら、構成が面白い。
地球はまるくて、世界は繋がっているんだなあ。
2005.5.29
|
□角田光代 / 誰かのいとしい人

★★★★☆
表紙の酒井駒子さんのイラストが素敵。
8話収録されててどれもよかった。
そして、角田さんの小説が好きだ、ということを実感する。
角田さんの小説の主人公は
等身大で悩んだり、喜んだり、怒ったりしながらも
ずんずん前を向いて歩いていく。
私は自分自身をそこに重ねて、ちょっと元気になる。
あとがきで
「もし、この物語のなんでもない光景のひとつが、
そんな具合に、読んでくれた人の記憶に、
するり、と何くわぬ風情でまぎれこんだらいいな、
と願っています。」
とあったけれど、
私は角田さんの小説を読むと、自分の埋もれていた記憶が蘇り、
小説の中の風景と重なって、その記憶がとても愛おしいものに思えてくる。
そんなところが好きだ。
2005.5.31
|
□角田光代 / あしたはうんと遠くへ行こう

★★★☆☆
身につまされた。
たくさんの音楽が登場するけれど、あれは角田さんの趣味なのかな。
How soon is now? / The Smiths
Walk on the wildside / Lou Reed
Nothing to be done / The Pastels
I still haven't found what I'm looking for / U2
Everything flows / Teenage Fanclub
Calling you / Holly Cole
Divine intervention / Slayer
Headache / Frank Black
No control / David Bowie
Start again / Teenage Fanclub
2005.5.29
|
□角田光代 / これからはあるくのだ

★★★☆☆
エッセイです。
角田さんのひととなりが垣間みられて面白い。
友達になったら楽しいかもしれない。
興味深かったのは角田さんの小説に登場する
エピソードがいくつかあったこと。
「人を喜ばせるプロフェッショナル」の叔母さんは
「ギャングの夜」(まどろむ夜のUFO収録)に登場する叔母さんを彷彿させる。
「無愁天使」(幸福な遊戯収録)のオーディオルームにいる私は
「水の中のオーティス」で図書館の試聴室でレコードを聴く角田さん自身なのか。
そういう発見におもわずにんまりした。
このエッセイを天気のよい休日の電車の中で
読んでいたらなんだか幸せな気持ちになった。
2005.5.29
|
□角田光代 / 真昼の花

★★★☆☆
表題作はバックパッカーの話。
私はアジアの国は、中国しか行った事が無い。
中国も都会はすごい都会なんだけど
ちょっと路地裏に入ると、がらりと雰囲気が変わる。
貧富の差がかなり激しい。
この間の旅でも、この話に出てきた様な
両足が無くて、キャスターの付いた板に乗っている物乞いを見た。
そういう人を見ると、どうして良いかわからなくなってしまう。
いろんな事が頭を駆け巡って、仕舞いには容量オーバーでショートして
何も考えられなくなってしまう。
自分にはどうする事も出来ないのに、見ない振りをする事も出来なくて
そんな自分に嫌悪感を抱く。
それでもどうしても自分と切り離して考える事が出来なくて
ただ、その人がそこに存在するという事実だけが
動かしようの無い現実として襲いかかってくる。
知らなければよかったと強く思う。
でも、私が知ろうが知るまいが
その事実は変わる事無く存在しているのだ。
私には、そこにまやかしの意味を付与する隙すら、与えられない。
その時、胸の奥に投げ込まれた砂袋は今でも決して消える事は無く
ふとした瞬間に、私をあの路地裏に引き戻すのだ。
2005.5.29
|
□角田光代 / キッドナップ・ツアー

★★★★☆
さらっとしてるけど味わい深い。
父と娘の不器用な関係がリアルに伝わってくる。
重松清の解説もよかった。
口に出した言葉と、出せなかった言葉、激しく同感。
馬鹿なガキだったから、
粋がってたから、
最近ようやく気がついた。
やっぱ家族って大事だなって。
冬の帰り道はすごく寒くて
帰れる家があるって幸せだなあ
と、つくづく思った。
2005.5.29
|
□角田光代 / エコノミカル・パレス

★★★★☆
フリーターのその後を描く。
以前に読んだ『みどりの月』の続編。
世界がみえないです。
それは私が未熟だからでしょうか。
人生は浮き石の上を歩く様なもので
絶対的な安定なんてありえない。
それを絶望するか、楽しめるか。
人は死ぬまで生きる。
どうせなら、やりたいように。
他人の目とか、気にしたくない。
私にはすごく、難しいけど。
2005.12.3
|
□角田光代 / みどりの月

★★★☆☆
男女4人の奇妙な共同生活の話。
同時収録されている「かかとしたの空」は、アジアを放浪する夫婦の話。
連作という訳ではないけれど、微妙な繋がりがある。
「マリコ」といい「女」といい、強烈なキャラクターに振り回される主人公。
強いものって惹かれると同時に
自分が無くなってしまいそうで、怖くて逃げたくなる。
そんな表裏一体の気持ちに共感した。
この作品は「エコノミカル・パレス」に繋がっていくらしいので
そちらもチェックしてみよう。
2005.5.29
|
□角田光代 / まどろむ夜のUFO

★★★☆☆
高校のときクラスの誰かが
日本ラエ○アン・ムーブメントのちらしを持ってきて
校庭でUFOを呼ぼうという話で盛り上がった。
結局は実現しなかったのだけれど。
また、小さな共鳴があった。
彼女は彼の抜け殻だけを拾い集めて生きている。
これまでずっと、そして多分これからもずっと。
人にとって何が幸せなのかなんて、他人には測れない。
永遠に実感を伴って理解する事の出来ないものを
認めることによってのみ、
人は共存が可能なのかもしれない。
2005.5.29
|
□角田光代 / ピンク・バス

★★★★☆
ピンク・バス
思い浮かぶのは近所の幼稚園の送迎バス。
その名も「うさぎ幼稚園」。
もちろん全身ピンクで、フロント部分がウサギの顔になっている。
しかも、かわいいというより結構リアル。
そのバスに乗る幼稚園児達。
なかなか、シュール。
角田さんの小説ではおなじみの何だかわからないけど凄い人と
それに振り回される主人公。
私の印象として主人公はいつも、自分が定まってなくてふらふらしている。
対比されるような強烈なキャラクター。
きっと誰だって、自分のことはよくわからないから
他人が強く見えるものです。
でも、視点を変えれば、強烈なキャラクターにも
悩みがあるかもしれない。
解説にもあったけれど、人は身の丈以上の「自由」を手に入れると
途方に暮れてしまうものだ。
私は給食が好きだった。
自分で選ばないから、何が出てくるかわからないわくわく感が好きだった。
その頃から自分で何かを選ぶということが苦手だったのかもしれない。
一切の枠をとっ払ってっしまえば、何の答えもないこの世界で
自由に溺れながらも、どうにか今日も生きています。
昨夜はたくさん夢を見た
この不在の「死者」とのコミュニケーションをあつかった作品は、
角田光代本人が自作の中では、もっとも気に入ってると言っていた。
解説より
何もネガティブな理由じゃなくて
死んだらどうなるのかどうしても知りたくて
死ぬまで待てないから自殺しちゃった人って
一人くらいいるんじゃないかな。
インドに行ってしまった恋人から手紙が来る。
いつかラジオで聞いた言葉を思い出す。
−Someone loves me in Africa.
−誰かがどこかで私を思っている。
どう解釈するかは人それぞれだと思う。
「もうだめだ」と思ったとき。
世界中から見放されたと感じたとき。
思い出してみる。
きっと目に見えることが全てじゃない。
2005.5.29
|
□角田光代 / 夜かかる虹

★★★☆☆
外見はそっくりで性格は正反対の姉妹の話。
兄妹って一番近い存在だけに難しい関係だと思う。
とくに同性だと比べられることによって、ライバル意識が芽生えたり。
いくら仲のいい兄妹でも、多かれ少なかれそういうところはあると思う。
この話ほど強烈ではないけれど、私も妹をいじめた記憶がある。
子供って大人より正直な分残酷だからなあ。
兄妹なんて気の置けない関係においては特に。
だけど、一緒に育ったという事実は決して他人とは共有出来ないものであり、
貴重な存在であることは間違いない。
いろいろ面倒なこともあるし、一人っ子に憧れたこともあったけど
今は兄妹がいた方が面白いかなと思う。
同時収録「草の巣」は行きずりの男の車で放浪する女の話。
殆ど喋らなくて何を考えているのかわからない男との
唯一のコミュニケーションは
古今東西のように関連した単語をお互いに言い合うこと。
それは言葉を覚えたばかりの赤坊が単語を羅列するのに似ている。
「わんわん」、「じーじ」、「まんま」
そこには何かのメッセージが込められているのだろうか。
角田さんが小説を書く上で一番大切にしているのは
「自分の知らないことを知っているかのように、
自分の中で答えがでていないことを
答えを出したかのようには書かないということ。」
解説より
凄く納得がいった。
だからこそ、例え劇的な事件がなくても
中途半端な終わり方でも、胸を打たれるのだろう。
「現実は小説よりも奇なり」
というのはきっと小説を書くのも読むのも現実を生きる人間だから。
2005.6.11
|
□角田光代 / 幸福な遊戯

★★★☆☆
恋人でも家族でもない男2人、女1人の
共同生活を描いた表題作他2編収録。
目的は何もしないでいること
そっと背泳ぎ決めて
浮かんでいたいの
行動はいつもそのためにおこす
(FISHMANS / すばらしくてNICE CHOICE より)
ドアの外で思ったんだ
あと10年たったら
なんでもできそうな気がするって
でもやっぱりそんなのウソさ
やっぱり何も出来ないよ
僕はいつまでも何も出来ないだろう
(FISHMANS / IN THE FLIGHT より)
何故だか、小説とリンクした。
角田さんの小説の何処にも行きつかないところと
通じるものがあったのかもしれない。
特に、「無愁天使」の中の主人公の妹の恋人だとか
野田草介の死をイメージした「眠り」だとかに。
混沌を越えたら、そこには無があるのだろうか。
あらゆる感情から解放された世界。
「悟り」ってそういうものなのかな。
それって、いいところかな。
2005.5.29
|
|
BOOK
石田衣良
江國香織
角田光代
川上弘美
重松清
村上春樹
吉田修一
よしもとばなな
その他
>>back
|