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January - March 2012
2003年からレヴューを星の数で評価していますが、かなり基準が独特なので、ご注意!!
なしでも評価が低いわけではありませんのでお願いします。
| 星の数 | CDレヴューの目安 | ライヴ・レヴューの目安 |
| (星なし) | なかなかのレベル(もしくはそれ以下)。 | 手堅いパフォーマンス(もしくはそれ以下)。 |
| かなり良い!!時々取り出しては聴くはず。 | ライヴならではのドライヴがあった! | |
| 素晴らしい!!手元に置いておきたい一枚。 | 突出したスパークが何度もあった!! | |
| 素晴らしい+個人的ツボ!!僕のマストバイCD。 | とにかく踊った!!歌った!!染みた!! | |
| 年間ベストに入るくらいのお気に入り!! | 恐らく年間のハイライトの一つになるだろう!! | |
| オールタイム・ベストに入るくらいのお気に入り!! | 一生忘れないライヴ体験だった!! |
レギュラー・レヴューを書けなかったもの、旧譜、 新譜でちょっぴりしか聴いていないものや、再びよく聴いているものなど を対象にショート・レヴューを行います。 |
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Beat The Devil's Tatoo / Black Rabel Motorcycle Club ( サイケデリックでありながら退廃的でなく、どちらかというと肉体的な力強さを兼備したバンドとしてBRMCは長く頑張っている。2010年発売の6枚目のアルバムを遅まきながら聴いたが、その色艶は衰え知らずだった、というかむしろムンムン具合は増しているのでは?とさえ思わされた。言えば一芸バンドでもあるのだが、ここまで突き詰めれば天晴れと言っても良いのでは。 Bon Iver ( 霧の中から立ち上がるような幽玄フォーク。一つ一つの楽器の響きが頭をかすめては離れ、そしてまた近づいてくる。ヴォーカルも遠くで歌われたり、間近で歌われたり、と立体的。フリート・フォクセズと違い、ポリフォニックな攻撃力(決してジャーンと鳴らすわけではないが)がそのとろけそうなフォークとちゃんとミートするのが素晴らしい。この混沌の時代においてはなるほど非日常と言って良いであろう2010年代的アルバムでもある。 Write About Love / Belle & Sebastian ( 昨夏リリースのベルセバ9枚目のアルバム。もうベルセバ色としか言いようのない、スパイスの効いたリリックとサラサラと流れていくメロディ。非の打ち所がないポップ・アルバム。プロダクションもそれなりの堂々たるものに仕上がっている。耐久力も抜群で、リリース以来ずっと聴き続けてきた。lこうなると早く新作が聴きたくなるのだがそれもまた贅沢というものか。 People's Key / Bright Eyes (-) ソロやモンスターズ・オヴ・フォークなどでの活躍が続くコナー・オバースト。今年はブライト・アイズとして帰還。シンセがふんだんに奢られ、跳ねるようなポジティヴさを感じさせるアルバムに仕上げられているが、これまでのコナーの足跡を辿ろうとするとちょっと聴き手側が躓きそうだ。実際僕はそうだった。 Valhalla Dancehall / British Sea Power ( BSPの実質4枚目のアルバム(前作は映画のサントラ扱い)。イギリスの中堅バンドとして近作は佳作のリリースが続いているが、大ブレイクというところまでは届かないようだ。冒険、色気、旋律、地に足が着いた感、いずれも水準以上で、個人的にはこのバランスはかなり好き。近々一発ぶちかまして欲しいバンドの一つ。 Electro De Perfecto / Mike Viola ( FOWのアダム・シュレンジャーやハンソン兄弟、ジェリーフィッシュのアンディ・スターマーら、そうそうたる顔ぶれと競演歴のあるマイク・ヴァイオラの新作。前作"Lerch"はポップの古典を紐解いたような品格があったが、今回はパワーポップにグッとシフトして快活に奏でている。泣きツボも時折良い具合に刺激してくれる。朝、これを聴きながら通勤すると、ちょっと姿勢が良くなる感じ。 Art / Benny Sings ( 西寺郷太お勧めのベニー・シングスがリリースしたセカンド・アルバム。無駄な要素が取り去られた、シンプル・ポップ。アコースティックなそれとは違って、ちゃんとシティ派な作りでありつつも、ハンドメイドかつウェルメイド感たっぷりな空気が嬉しい。緊張感のないときにふと聴くとジワーンと体に染み込んでくる。僕は年取ったらブルースやジャズに行かず、こんな感じのポップスを聴くんだろうなあ、と勝手に幸福な夢想を許してくれる1枚。ファースト・アルバムももちろん良い。 Wanderlust / Everybody Else ( プッシュ・キングス(!!)のメンバーであったCarrick Moore Geretyが頑張っているバンドがこれ。プッシュ・キングスのあの人なつこさは健在で、キラキラ・メロディが全編に降り注ぐ作品になった。もっとも、よりパワポ寄りにシフトし、ドライヴしているので、新フェイズなのだなーと思って聴き進める。そこで突如出てくるM-4"First Class"の拙いビートに乗った甘いメロディを聴けば、それはもうプッシュ・キングス過ぎて泣けてくる、というナニコレ的展開もある。そんな思い出交錯アルバム。前作デビュー作のアコースティック・アルバムなんていう企画もあり、こちらは珠玉。是非。 Euphoric /// Heartbreak / Glassvegas ( 数あるシューゲイザー・バンドの中でも、グラスヴェガスは特異なバンド・スタイルを持っている。ネガティヴィティをふんだんに盛り込んだリリックを、朗々と歌い上げてしまっている。あくまでも暑苦しく、押しつけがましく。まったくもってスマートの欠片すらないわけだが、しかし、この音が人生という荒波に立ち向かう男の物語のように聴けた人にとっては、きっとこのアルバムはかけがえのないものになるだろう。実直かどうかは分からない。しかし、人生を戦う男達の姿がここには一つ、投影されているように思えてならない。 Mount Wittenberg Orca / Björk/Dirty Projectors (-) 鬼才同士のタッグ戦。刺激的で、惑わされるひととき。聴くのにもパワーは必要だが、聴き手が気合いをぶつけて向かい合えば相応の呼応が期待できそうなアルバム。 In The Key Of Disney / Brian Wilson ( ディズニー・ソングスをブライアン・ウィルソンが彼流にカヴァー。ちょっとくぐもったようなブライアンの声は僕の好みではないけれど、きっとだから好きっていう人も居るだろうな。ドリーミーな曲調にはふんわりフィットする感じ。相性は確かに良いと思う。それにしても一切の引っかかりがないのは確信犯的なものなのか。だとしたら参りました、という感じ。 Portamento / Drums ( 前作でかっちりと確立したあの蒼すぎる、拙すぎるサウンドそのままに、ちょっぴりの経験をふりかけて作られたセカンド・アルバム。ちょっと押せば崩れてしまいそうな危うさが薄れ、彼らなりの筋力強化には成功しているように思える。華美に走ったり、抽象に振れたりしなかったこともおそらく正解。この音は彼らだけのものだ。 The Very Best Of Howard Jones ( ハワード・ジョーンズのベスト盤を聴いてみた。人なつこいメロディはまんま80年代にタイムスリップさせてくれる感じだったが、アレンジは結構えぐい感じでやってたりするんだなあと今聴いてみて感じた。"Things Can Only Get Better"とか、なかなかにファンキーだしなあ。フィル・コリンズとの"No One To Blame"は名曲だった。全体的には今に通ずる、という感じではなく、別世界的に懐かしく聴けるベスト盤。コレ聴いてると、ニック・カーショウやポール・ヤングが芋づる式に聴きたくなってしまうという副作用付き。 Locksley ( 60'sへの愛情を隠さずぶちまけるロケンロール・ラヴァーズ。時に切なく、時にやんちゃにガーンと恐れず鳴らせ。というかこのアルバム、何故か既発表曲だらけなのだが、ベスト・オヴ的な何か?位置づけが今一つ分からないのだが。まあ良い曲揃いなのは間違いないが。 Destroyed / Moby ( アルバム「18」の頃はポップにグッとシフトしてきた感じがあったが、前作"Wait For Me"と今作とはゆったりたゆとう感じのアルバムになっている。華はあまり感じなかったが、でも無理のない風合いなので聴いてて心地よさがある。 Skying / The Horrors ( このバンドの位置づけなどをあまり気にせず聴いてみる。前作はもっとダークなイメージだったけど、サイケなマンチェな感じになっていてちょっと驚いた。チャート・アクション的には今回が一番良いらしいがさもありなん。分かりやすい感じは出てきた。が、同時代感を感じることが出来ないので何か残念。 The Future Is Medieval / Kaiser Chiefs (-) "Never Missed A Beat"の強烈さからすれば地味な感じも拭えない4作目。だけど、もう1曲1曲が自信満々なのがビンビン伝わってくる。ある種の開き直りなのか、意地なのか。個人的には今一つピンと来なかったが、妙に堂々とした佇まいが印象的な一枚。 SONGBOOK / キリンジ ( いわゆる他アーティストに提供した楽曲のセルフ・カヴァー集。結構知らないうちに耳にしていたものもあってちょっとビックリした。変わらぬキリンジの曲の質の高さ(リリックは他アーティストが手がけたものも結構あるので質感が違うのは当然としても)を感じることが出来る。オリジナル・ヴァージョンを集めたディスクも一緒にしているのはとても良い。 |
As Far As Yesterday Goes / The Red Button
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![]() セス・スワースキーとマイク・ルークバーグのユニットが放つセカンド。 2007年のファーストももちろんかけがえのないメロディが満載だったが、今回もやってくれた。徹頭徹尾古き良きメロディの連打。しかもそれらが押しつけがましくなく、時に寄り添うように、時に引っ張ってくれるように、美しく、柔らかく、そして快活に流れていく。 ロック魂、というよりはポップへの憧憬がそのまんま音に鳴らされたような、そんな夢の音。でも、このアルバムの一番素敵なところはそれが外向きのヴァイブで鳴り響いているところだ。だから部屋で聴いていると外へ出たくなっちゃうし、街歩きしながら聴いてると自然にステップも軽やかに。だからといって浮かれた音だというわけでもなく、しっとりした気分にもちゃんと歩調を合わせてくれる懐がある。 快活で力みなぎるM-1"Caught In A Middle"から、そぼ濡れるようなM-2タイトル曲への移行はまずもってお見事。哀しげでありながら、でもちゃんと歩みの力強さを込めたM-6"Sandreen"、小品的可愛さが印象的なM-9"You Do Something To Me"、ビートルズの未発表曲でしたとか紹介されてもきっと疑うことなく信じただろう名曲M-10"I Can't Forget"など、いずれも十二分なメロディをおごった曲ばかり。 60'sや70'sの魔法はこんなところにあるのかなと改めて気づかされるポップ・ファン必携盤!! |
Bread And Circuses / The View
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![]() ロック・シーン自体が確実に地盤沈下する中、奮闘を続けるUKの星、ザ・ヴューのサード・アルバムを聴いた。 ひたすらに蒼かったファースト、思い切りはっちゃけ過ぎ?なセカンドを経て到達した地点は、うむ個人的にはもっともしっくりくる感じ。蒼っぽさはそれなりにキープされてるし、分別が多少付いたくらいの乱暴さがまた心地良く響く。 M-2"Underneath The Lights"のバランスがそれをよく体現している。カタルシスのあるコーラスをぶちかましつつも、ユニークなひとくさりがグサッと刺さる辺りが何とも痛快。 ユースのプロデューシングも僕は結構好きで、バンドのスケール感をアップさせるのに上手い貢献をしているように感じる。 ただの懐古主義でなく、ただのシングアロングでなく、ただの実験好きじゃない。聴かせるべくは聴かせ、ブッ込むところはブッ込む。メリハリもあるし、奔放だし。そういうところが好きだなあ。 |
Sondre Lerche
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![]() 北欧のポップ貴公子、だったはずだが、このジャケット写真を見て「おい大丈夫か?!」とつぶやいてしまった。なんかクスリにやられたような顔してるんだけど。 という外見上の心配はさておき、早くもキャリア6枚目となったこのアルバムでも彼の才能が枯渇していないことをしっかり証明している。 ロックを鳴らそうと、バラードを歌おうと、ソンドレらしさを決して失わずに奏でることに成功していて、バラエティに富んだ曲調を一つの彼色に染め上げていっている。 地味だが実に実直で、かつ才能あふれるミュージシャンだと思う。フレッシュさを失わずにここまでちゃんと活動できていることをうれしく思うと同時にこれからも頑張ってほしい存在。 このアルバムは2011年、個人的にもっとも聴いたアルバムの一枚に数えられるだろう。 |
Kittow's Moor / Louis Eliot & The Embers
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![]() リアルト、と言って通じるのかどうか分からないが、00年代英国、美メロとドラマチックな曲調でプチ輝いたバンドのフロントマン、ルイス・エリオットのバンド?が出したアルバム。 すっかりカントリー風仕立てになっており、アコギやアコーディオンやバンジョーが鳴りまくり。ツイン・ドラムや過剰な泣きメロを奢っていたころの面影はすっかり薄くなってしまっている。 だが、一つだけ守られたものがあった。確かなメロディがひたすらに流れ続けることだけはあの頃と変わりがない。それ以上でもそれ以下でもないところがこのアルバムの弱みと言えなくもないが、耳を澄まして、一つ一つのメロディを追っかけていくと、僕の泣きツボを押さえてくるチューンが次々と現れることに気づく。 そして、それはそれで僕にとって十分聴く価値のあるものだと素直に思えた。あの頃に戻れるわけではないが、ノスタルジーと経時変化とを感じつつ聴くのも悪くないな、と。 |
極楽門からこんにちは(DVD)
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![]() 2011年夏によみうりランドで行われた彼女たちの野外ライヴを丸ごとパッケージしたDVD。ショートカットしおりん降臨の瞬間に起こったどよめきまで含めて、全てがもう遠い記憶のもの。それくらいに彼女たちは日々成長し、現在形はこのDVDに込められたものとかなり違う形になっている。 口パクを廃し、イヤモニを付けての生歌+圧倒的ダンスという、前人未踏の領域にグイッと足を踏み込んだ鮮やかな記録という側面もあり、音だけ聴いても十分「ライヴ・ヴァージョン」として楽しむ価値がある。 個々のメンバーについて言及すれば、MCがそれなりに板に付いてきたあーりんの奮闘ぶりは特筆もの。パフォーマンス面では杏果の荒ぶり方がたまらない。れにの激しさとしおりんの均整は相変わらずそれぞれの意味において安定。夏菜子はリーダーとしての活躍は言わずもがな、ラストの「この手はなさないで!!」の絶叫で全てをかっさらってしまう。 次は春にリリースされる「ももクリ2011」のブルーレイを待つことになるのだが、その頃には横浜アリーナでさらに駆けていった彼女たちが姿を現しているのだろう。まだまだ微分して有り余るプラスを叩き出す彼女たちから、目が離せない。そう、今だからこそ、だ。 |
The Whole Love / Wilco
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![]() ウィルコのこのみなぎり方はどうだ。 グッとエレクトリックに寄ったM-1"Art Of Almost"では、だからといって奇をてらったりはせず、ひたすら正攻法で攻めあげている。塊感が素晴らしい。隙のない塊具合。実に肝の据わった音を鳴らしている。音の深みももちろんそのまま。何だろう。 続くM-2"I Might"の音の太さとオルガンの魅力的な響き。M-4"Dawned On Me"の人なつこいメロディの妙。以降、ウィルコが培ってきたものが分かりやすくプレゼンされ続けるアルバム。セルアウトというのとは全く違う形で、ウィルコは化けて出てきたかのようだ。 世は彼らをロック・ファンだけの宝物にしておくことを許さないだろう。それくらいのアピアランスを持ったアルバムを、彼らはR.E.M.が降壇したその年に叩きつけてきた。地味で、爆発力はないかもしれないが、時代は間違いなく動いている。僕らはそれを見守る証人であり、それとともに時代を駆け抜ける主役でもある。そのことを思い出させてくれる一枚。 |
The Double Cross / Sloan
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![]() XX。つまり20年。スローンが結成してすでにそれほどの時が経ったということを知り、愕然とする自分がいる。そう、スローンにも僕にも、20年が経ったということでもある。 大したメンバー・チェンジもなく20年バンドを続けることが容易でないことを僕らは知っている。きっと彼らにもそれなりに波があったことだろう。そして、その波については多くを知ることはないまま僕らは彼らの音を聴き続けるのだろう。 ただバンドが続いている。アルバムがリリースされる。変わらず達者な音を聴かせる。若干メランコリックになったかもしれない。若干まろやかになったかもしれない。でもそれくらいのもんだ。 スローンはまるで何事もなかったかのように今回もグッド・ロッキン・サウンドをぶちかましてくれている。それは単なる良質なロックとして聴いても良し、はたまたその年輪を向こうに感じ入りながら聴いても良し、の懐の深さを備えている。 全員がメロディ・メーカーで、全員がマルチ・プレイヤー、というと器用貧乏的に思われがちだが、スローンはそんなバンドではない。聴けば分かるが器用でリッチな、不思議で幸福な可変性を持ったバンドなのだ。そのしなやかさこそが、20年にわたる活動を可能にしたのかもしれないが、それは今日まだ、失われずにピカピカに光っている。 だからこのアルバムを聴いているとニヤニヤが止まらないのさ。 |
The Past, The Present, & The Possible
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![]() 聴いた回数の割になかなかレヴュー出来ないアルバムが時々あり、そしてそいつはいつまでも新作で満たされている僕のiPod nanoの中に鎮座することになる。このアルバムもそんな1枚だった。 タヒチ80の一番分かりづらい、そしてそれ故に耳目を引いたのは間違いなくデビュー作だったと思う。以降の作品は何となくダイレクト感が徐々に増してきている気がする。今回のアルバムだってそう思った。「ああこれまでの中で一番分かりやすい感じなのかも」と。 いざ言葉にしようとしたときにどう表現したものか今一つ分からないのではあるけど…。 タヒチ80は音楽的には実に器用で繊細な表現を得意としているバンドだと思っているのだが、その(リスナーへの)接続方法はややまどろっこしい感じがしていた。特に"Wallpaper For The Soul"辺りで強くそう思ったのを覚えている。だが、今作ではグイグイとリスナーににじり寄ってくる感じがする。 媚びるというよりも、引き寄せる力強さがちゃんと宿っているところが良い。地道な活動が作品にもちゃんと実りとしてあるように思える。 一見してベスト・アルバムなの?と思わせるようなタイトルも、いやいや、今のタヒチ80こそがベスト、という感じさえして野心的だし、まだまだ息長く頑張ってくれそうだなあ。ポップさを失わずにやってくれれば、面白いポジションを確立出来る気がする。 |
Long Player Late Bloomer / Ron Sexsmith
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![]() 純粋なソロ・アルバムとしてはちょうど10作目。ロン・セクスミスもタイトル通り、しっかり、長く頑張ってるなあ。なんて木訥とした言い回しは今作には全くふさわしくない。 今作のプロデュースはメタリカなどを手がけたボブ・ロックとな?! 果たしてこのアルバムの妙に堂々たるプレゼンスやキレのあるギターとビートは、ロン・セクスミスのキャリアに大きなギフトになったのではないか。そう思えるくらいのポジティヴな変化がここにある。 もともと歌そのものの出来はいつも素晴らしかったし、今回もそうなのだが、いやいや今回は堂々と胸張ってる感じがたまらず誇らしい。遅咲きなのさ鈍足なのさと、開き直りなのか居直りなのかとも思える歌がまっすぐに、美しく、どこまでも響いていく心地よさと言ったらない。 単なる、と言ったら失礼だが、良質シンガーソングライターとして活動するロンを、ボブ・ロックはどう見て、どう感じたのだろうか。この才覚を多くの人に届けたいという気持ちがしっかり入ったプロデューシングだと思う。て言うかもうこうなったらどうやってもみんなに届いて欲しい。聴き手としても感謝感謝の1枚。そして2011年のベスト候補。 |
Serotonin / Mystery Jets
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![]() 何度も書こうとして途中で止めてしまったこのアルバムのレヴュー。それは実に形容しがたい魅力を発しているからに他ならない。 このアルバムも含め、彼らがリリースした3枚のアルバムはいずれも全英チャート30-40位台。実績からすればまあ中堅バンド的な、そして一番瓦解もしくは自然消滅しそうなポジションと思われても仕方あるまい。 親子がバンドにいるというスタイルも異形だが、このバンドの優れているところはサウンド的に実に柔軟で、なおかつビートは比較的明瞭で分かりやすいものをチョイスしているところにある。一本調子になりがちなはずの音が、そうならずにバラエティとして広げられているのはなかなか見事なものだ。 好奇心まんまに音の引き出しは片っ端から空けまくっているのに、鳴っている音がちゃんと塊になっているのもまた不思議な感覚。プロデュースを務めたクリス・トーマス御大の力なのだろうか、それともこのバンドが持つポテンシャルなのだろうか。 M-5"Serotonin"のヴァースで入ってくるウィスパー・ヴォイスの有り余るセクシーさにはゾクッとさせられるが、チューンそのものはこれで真っ当な格好良さを持っている。M-1"Alice Spirngs"の疾走感は、ただの疾走じゃなくって、なんやかんや色々抱えての疾走っていうところもミソ(ワーオーエオーっつうコーラスも含む)。 2012年には新作投下が予定されているとのこと。楽しみに待ちたい。 |
Noel Gallagher's High Flying Birds
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![]() 弟軍団の先手を受けて、満を持し打つ後手の兄。そして、それを一度聴き通した時の「さすが」と声に出してしまいそうになるくらいの達者ぶり。ノエル健在。というか、オアシスという枠がなくとも結局はソング・オリエンテッドなナンバーを連発。これが彼流のやりたい放題。 最初のクライマックスはM-5"Record Machine"のこれでもかというメロディてんこ盛り。近作のオアシス以上にギラギラした驀進ぶりに「おお!」と打ち震える。シングルとなったM-6"AKA...What A Life!"の疾走感も行けるし、M-9"AKA...Broken Arrows"はこれまた"Wonderwall"の快活な生まれ変わりと言っても過言でない出来映え。 オアシス幻の一曲M-10"Stop The Clocks"が満を持してここで登場するところもハイライト。まあこいつをリアムの声で聴いてみたかったとか言っちゃあいかんのだろうな…。終盤にぶちかまされる無駄に壮大なインプロ・パートも上がる。 円熟、芳醇、コク、とビールのキャッチコピーのような言葉が次々と思い浮かんでくる。そんな凝縮感に満ちたアルバム。ビーディー・アイと比べてどっちが良いんだよ?って聞かれたら「そりゃこっち」と即答するであろう。ただ、個人的に愛でるのは「大きな子供」リアムのイノセントなところなので、「好き」なのはビーディー・アイということで。 何にせよ早う兄弟で仲直りしなはれ。 |
Rolling Blackouts / The Go! Team
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![]() 2011年もっともお世話になったダンス・アルバムと言えばもちろんこれ。奇才と言っても良いのではないかと思われるイアン・パートンの雑食多幸感とでも言おうか、全方面にキラキラが放散していくような音に、自然と体も動き出そうというものだ。 思えばアヴァランチーズの不在からインディ・ダンス・ミュージックは様々なスタイルを模索しながら、幸せ度においてその存在を凌駕するものは長く現れなかったわけで、ゴー!チームの二段飛ばし的な成長っぷりはまさに待望、という感じだったと思える。 問答無用のごった煮グルーヴM-1"T.O.R.N.A.D.E."を筆頭に、攻める、攻める、笑う、てな感じでたまらないわけだが、個人的には前のめってないけど、それでも存分に幸せっていうM-9"Yosemite Theme"辺りを推してみたい。 |
Whatever On Your Mind / Gomez
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![]() ゴメス7枚目のアルバム。最近ではどうもメンバーが英米に別れて拠点を構えている模様で、それぞれのライフ・ストーリーをきちんと成立させつつ、バンドとしても何とか頑張っていこうというスタンスのようだ。 M-1"Options"の軽快なイアン・ボール(b,vo)主導のパフォーマンスを聴いた瞬間、ゴメス健在を確信させるアルバムではある。 彼らの持ち味である、各パートが実に有機的に結合して一つの曲を織りなしていく感覚はここにもしっかりと展開されており、その上で、半拍ずらしたり、グッと溜めたり、という小技もきっちりスパイス的に効いている。 初期作2枚に比べると比較的あっさりした感触ではある。ベンの強烈ヴォーカルもちょっとまろやかになったようだし。へばりつくような粘り気や湿気はやや後退し、手練れてはいるが風通しが良くなったなあ、という印象。もっともどちらが良いとかいう軸で語ることはない。 彼らもまた、バンドマンとして、人間として進んでいく。そんな当たり前のことが、ゴメスという有機的なバンドで、しかもメンバーが別の拠点を持ちながらもこうして続けて行けているということがまた嬉しい。その意味で、(今作を含め)昨今の彼らのアルバムのセールスは少し物足りないかもしれない。 とても良く聴いたアルバムなので、また是非とも新作をお願いしたい。そうそう、直販の形式ではあるが、最近の彼らのライヴ音源(良音質)が入手出来ることを追記しておく。こちらに関しては追ってまたレヴューしたいと思う。 |
Velociraptor! / Kasabian
シングルでグワーッと上がるのだが、アルバムになると微妙。カサビアンは確かにイギリスの現役ロック・バンドの中にあって、不遜な空気を醸し出しつつも歌えばシングアロング的なものをシンボルにしてきた。だが、ブルース嗜好が彼らなりにうまく表現出来ていなかったようにも思える。それがシングルとアルバムの乖離を生み出した一因ではないだろうか。
という御託を吹き飛ばすほどの快作がドロップされた。
ダン・ジ・オートメーターをプロデューサーに迎え、徹頭徹尾リズムを叩き上げたのがその主因だろう。明らかに肉体への訴求力が増し、セルジオの不穏なれどハート掴むメロディ、トムのセクシーなヴォーカルと抜群の相性を聴かせる。
図抜けたシングアロング・ナンバーとなったM-2"Days Are Forgotten"をはじめ、相変わらずの野心的な側面をぶちかましてくれるタイトル・チューンM-5、横ノリ的でありながらドーンと破壊力も備えたM-8"Re-Wind"。いずれもビートが良い。スッと体に入ってくるこの感覚はこれまでのカサビアンには感じにくかったものだ。
何度も聴いていくとさらに馴染んでくるのだが、このアルバムにはあまり無駄な音が入っていない(お得意の電子音シークエンスはあちこちに顔を出しているが)。そこがまたカサビアンの肥大化をグッと抑え、コンパクトに、しかしダイナミックに響かせているようにも感じられる。
とにもかくにも、これは一つ二つくらい抜けたアルバムになった。小さくまとまることなく、上手いことステップを踏んだカサビアンの知性も感じさせる。その存在はオアシスなき後、揺るぎないものになってはいたが、このアルバムを完成させることで「名実共に」という言葉を加えても良いレベルになった。