HAPPY BIRTHDAY

 ある年の今日、僕は生まれた。
 その日がどんな日だったのか、僕は知らない。
 暖かかったのか、寒かったのか、そんなことは知らない。
 そこに在ったのはただ一つの事実。

 1年1年時間が流れ、同じ日がやってきて、その度に誰かが「オメデトウ」と笑っていた。
 何がオメデタイのかわからなかったけれど、それは特別な日なのだと僕に認識させた。
 生まれたことが特別だったのだろうか?
 まだ生きていることが特別だったのだろうか?
 生きている。ただそれだけの事実しかないのに。

 様々なものを踏みにじり、人の心を無残に抉ってみせても、僕はまだ生きていた。
 永遠の逃避を望まなかったわけではないけれど、度胸なんてない僕はまだ生きていた。
 「特別な日」のたびに1つ数が増えて、その分だけ自分が生きていること確認して。
 なぜ生きているの?何のために?何を成すために?
 生ぬるい疑問より痛いくらいの事実が欲しかった。

 繰り返し繰り返し時間は回り螺旋を描き、また次の「特別な日」が僕に訪れた。
 1年1年時間を遡り、記憶を手繰り寄せて、軌跡を振り返る。
 歪んで元に戻らない感情を、交錯した人間関係を、意味のない惰性を、創り直せたら。
 不可能だと知っていても、願った。
 無意味だと知っていても、願った。
 時間軸は後戻りを許さないことも知っていたけれど。
 覆せない事実を積み重ねて生きることをやっと覚えた。

 反吐が出るような自分の姿。
 自分で貶めた、自分が嘲った、自分。
 それを許してしまった自分。
 それに抗えなかった自分。
 ココに在ることさえ認められなかった自分。
 ココに在ることの価値さえ知らなかった自分。
 たくさんの「僕」が僕のなかで揺れる。
 新しい「特別な日」に、僕は「僕」を壊した。
 そして、失敗作の中からかき集めたパーツで、ツギハギだらけの「僕」を造る。
 「僕」は産まれる。
 HAPPY BIRTHDAY TO ME
 生きている、ただそれだけの事実。それだけを祝福して。


<言い訳>
 最後の方に行くにしたがって、えらく前向きなクサイ発言が続いております。
 HP用に手直しを始めたら、元のものよりちょっと前向き度アップ(当社比)。
 実は、これとほぼ同じような内容でありながら、言葉が全くもって後ろ向き(というより完璧に逆向き)なやつもあったりするんですが……見たきゃ、どうぞ