ワインレッド

生きていることを確かめる。
そのために、皮膚を切り裂いて。

化学反応に支配されたカラダに宿るココロはまた化学反応でしかないのか。
複雑な化学式と単純な電流が記憶も感情も支配する。
快楽物質に操られた脳は、今日も現実という幻を紡いで。

教科書と快楽のクスリで世界は造られた。
知識は意識を塗り替えて、虚実が現実を刷りかえる。
他者を認識することで自分を認識して、全ての事象を快か不快にカテゴライズする。
劇薬に冒されたこのアタマで、唯、笑いながら。

ワインレッドの液体が僕の存在する証で、痛みだけがリアル。
ナイフを持つ意志だけが自分のもの。
ワインレッドの液体だけが僕に残された真実で、僕自身。
其処に僕が在る。

刷り込まれた本能は、死を回避するプログラム。
「生きて増えよ、地上の王となれ」
エラーを誤魔化して、癌化した精神を正当化する。
肥大した欲望と変異した理性が世界を導く。
血塗られた歴史と思惑が未来を定める。
「神は人を救いたもう」

「ねえ、神様、貴方はなぜ存在しているの?」
「ねえ、神様、その手で何を救うというの?」
「ねえ、神様、貴方は救われているの?」
「自分さえ救えない貴方に誰が救えるというの?」

このワインレッドは消えない。
神様でも消せない。
神様でも救えない。
だから僕は在る。
ワインレッドの存在理由と共に。


<言い訳>
 なんとなく思いついたんですけど、思いのほか気に入ってしまいまして。「血の色」ってのは最後のリアリティだと思うんですね。存在を証明する最後のね。ワインレッドというタイトルは「ワインレッドの心(安全地帯)」から。