Review
Kinks / Arthur or The Decline and Fall of The British Empire
キンクス史上最高の名盤の一枚。 / ★★★★★★★★★★ (10.0)
1. Victoria
2. Yes Sir No Sir
3. Some Mother's Son
4. Drivin'
5. Brainwashed
6. Australia
7. Shangri-La
8. Mr. Churchill Sais
9. She Bought A Hat Like Princess Marina
10. Young And Innocent Days
11. Nothing To Say
12. Arthur


まさにキンクスの「最高傑作」のひとつであるであろう。
前作Village Green Preservation Societyが非常にフォーキーな作品であったのとは対照的に
本作は非常にグリッターなサウンドが目立つロックアルバムとなった。

もちろんこの時期のキンクスである。その辺のロックサウンドとは違う。
ジャグバンド化の傾向があちらそちらから漂いまくりの気だるいサウンド。
ノスタルジーという言葉が持つ意味そのものな音と曲がズラリの超度級の名盤。

コレ以前にもコレ以降にも、レイ・デイヴィスという半ば偏狂質的な男はコンセプトアルバムを産みまくるのだが
例によって例の如く、コレもコンセプトアルバムだ。というかもはやオペラ状態。
英国の一家族の日常・・・古き良き英国の一家庭の素晴らしい日常の歴史にスポットをあて
タイトルのとおり、いかにしてそれが崩壊していったか、というものを描いたアルバムである。
主人公であるアーサー・モーガンとその妻のローザの家庭を軸に
第二次世界大戦を通じ、かつて強大であった大英帝国が衰退していくか・・・
アーサー・モーガンはレイの義兄アーサー、ローザはその妻のローズをモデルにしてるらしく
つまりアーサー一家はデイヴィス家の歴史をデフォルメしたものでもあるらしい。

実はこのアルバム当初は「サウンドトラック」としてリリースされる予定だったのだが
予算の都合上TVドラマの方は暗礁に乗り上げ、結果として「ひとつのコンセプトアルバム」
としてリリースされる事となった。レイ・デイヴィスって人は演劇等の勉強をしている人なので
割と彼の頭の中では、「劇」というのが頭にあるアルバムを作るのも、コレが結果として
アルバムだけになってしまった。というところからくるものではないか・・?とも思ってしまうのだが・・・。


しかし、そういう予備知識を抜きにしてはこのアルバムは素晴らしい。
何より全ての曲が名曲クラスなのだ。
オープニングには持ってこいの曲調のヴィクトリアは非常に軽快で煌びやかなビート音楽だし
2曲目の皮肉っぷりなんかもはやキンクス以外には書けないような曲。曲調も人を食ったかのような感じだし。
キンクス流の反戦歌である3曲目は盛り上げ方がスゴイ巧いと思う。

4曲目のDrivinもキンクスにしかかけないであろう。
「世間では戦争が起こってるみたいだけどロシアとか中国とかスペインにそれは任せてボクらはドライブしようよ」
なんて、小市民の考えそのもの。レイ・デイヴィスおそるべし。
洗脳の恐怖について歌ったブラスが印象的なハードな曲調の5曲目
オーストラリアって名前から想像出来る程のんびりしたEや、キンクスの名曲の一つシャングリラ。
シャングリラとは「桃源郷」のことだが、オーストラリアは良いトコヨ!と歌った6曲目には反して
結局母国が一番だよねー。生活も満足してるし、毎日シェリーは飲めるしさ。な感じの名曲。とにかく煌びやかだ。
LPでのA面はとりあえずココで幕を閉じる。

B面の最初の曲はチャーチルの文句の垂れ流し。小市民のボヤキみたいなもんだ。
ゆったりした曲調から一転ハードに盛り上げるのはキンクスが得意とする手法なんだろうがココでのそれは大正解だ。
30年代や40年代にはこういう音楽もあったであろう、
おもちゃ箱をひっくり返したようなキャバレー風のHも小市民の見栄そのものだ。
「ちょっとぐらい見栄張ったって可愛いもんじゃないか。それが大事なんだよ」と語りかけてきそうな歌詞には感動すら。
アーサーの回想、「昔はなぁ・・・」的なメロウでアコースティックなIも最高に名曲だし
ブラスが派手なキンクス流「HEY JUDE」みたいな盛り上がりがあるJはオルガンが最高過ぎるし。

話はここまでうまく繋がってるんだけど、それまでアーサーが「一市民」な事は隠されて来てたんだけど
最後の曲で種明かし。ナンダソリャ。なオチでしめるK. 最高にキンクス節で最高。



次作以降のアーシーな路線も序所に芽を出してきているのだろう、ブラスやオルガンが非常にツボをついた
ダイナミックなサウンドが特徴なアルバムだ。ギターロック色は非常に薄いのだがとにかく楽しい。

「時代を無視したキンクスの時代を描いた69年の金字塔の一つである事に間違いはない。」
と自分は信じているアルバムだ。

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