LET THE MOVIE DO THE TALKIN'!
横溝正史の探偵小説を原作にした金田一耕助シリーズは、それまでも数多く作られたが、今作は横溝正史の遺作となった作品の映画化。
今回、金田一耕助に扮するのは「野獣死すべし」やTV「Gメン’75」で個性的なルックス(笑)と演技で注目されていた鹿賀丈史。
個人的には金田一=石坂浩二またはTVシリーズの古谷一行だったりするのだが、鹿賀版金田一も、「八つ墓村」での渥美清、というスッゴケに比べれば悪くないと思う。
ヒッピーとして日本を旅するうちに奇怪な事件に巻き込まれる青年・五郎に、古尾谷雅人が扮している。 ドラマは、TVでジョン・レノンが殺害されたニュースを観た五郎が、かつて青春時代に体験した事件を回想する所から始まる。 瀬戸内海に浮かぶ小島「刑部島」でひょんなことから金田一耕助と知り合った五郎は、そこで起こる連続殺人事件に巻き込まれて行く・・・。
劇場公開時に「鵺(ぬえ)の鳴く夜は恐ろしい」というキャッチコピーと共に話題となったのが、サントラにビートルズを起用している点。 ここで使用されているのは、ヒッピー時代の五郎が旅をしているバックで流れる「Get Back」とラストシーンで流れる「Let It Be」の2曲。 共にビートルズの(リリース順としては当時最後だった)アルバム「Let It Be」からの曲。
金田一耕助シリーズで特徴的なのが、「都会と隔絶した土地」「古くから続く家柄や風習、言い伝え」「複雑に絡み合った過去の因縁」「戦中、戦後の混乱が生んだ悲劇」といった要素。 そして、それら古きものが、押し寄せてきた新しきものに飲み込まれていく最中に起こる猟奇的殺人事件、というのが大まかなフォーマットと言っていいだろう。
今作でも、島で絶対的な地位にいるものの実情は没落しつつある網元や、家柄故に恋仲を裂かれ島を追われた男がアメリカに渡って成功し、その島を財力にモノを言わせて開発しようとしていたり、ヒッピーという当時の若者文化を象徴する要素が出てきたりする。
ここで素晴らしいのは、「Let It Be」の使われ方。 もちろん、この曲はThe Beatles(特にポールにとって)というバンドが解散に向かっていくしかない現実へのやるせなさを、物凄くあらわしている曲だと思う。
そして映画ではラストシーン、事件が解決して金田一耕助が島を去っていく時に流れる。 これは、単に「映画の終わり」だけではなく「事件の終わり」「五郎にとっての青春期の終わり」「60年代という、一つの時代の終わり」という様々な「終わり」を表現しているような気がしてならない(さらに言うならば、角川映画製作の金田一シリーズの終わりでもある)。
イントロのピアノが流れるタイミングがまた秀逸だったと記憶している。 このラストシーンが、決して金田一モノでは最高傑作と言い切れない作品である今作を、決して忘れる事の出来ない一本にさせている。
で、この作品、ここまで書いておいてナンだが現在リリースされているDVDでは、権利上の問題でビートルズの曲は2曲とも差し替えになっている。
もう、なんじゃそりゃぁ!なのだが、仕方ないので個人的にはラストシーンは脳内で「Let It Be」を流して無理矢理脳内補完している。
頼むから、生きているうちに完全な形でリリースして欲しい所だ。
これは全ての金田一作品にも言える事だが、原作と比較すると色々な点がアレンジされていて、それぞれに失敗と成功が有ったりする。
そう言う意味でも、原作を読んでみるのもおすすめ。
ちなみに瀬戸内海の小島、今作だけではなく「獄門島」でも出てくるモチーフで、去年高松に行った時フェリーに乗ったのだが、そこから見える光景がモロ映画で観るそれであった事にハニー(「金田一耕助」DVD BOX所有)と共に感動してしまいました。
もっとも、その時はひどい二日酔いで、「八つ墓村」の山崎努ばりに死人のような顔をしていたのだけれど。