熱苦しく語れ!

LET THE MOVIE DO THE TALKIN'!

阿修羅城の瞳(2005年作品)

舞台は、鬼が跋扈する江戸の町。
鬼を殲滅するために組織された特務機関「鬼御門」の副長であった病葉出門は、5年前のある事件をきっかけに除隊、今は舞台役者として生活していた。
そんなある日、出門は江戸をにぎわす盗賊集団の女盗賊、つばきとふとした事から出会い、恋に落ちる。
しかし、つばきの身体には恐ろしい秘密が隠されていた・・・。

監督は「陰陽師」「壬生義士伝」の滝田洋二郎
元は劇団「新感線」の演劇で、これを映画化したもの。
以前、同じ新感線の劇を収録して、劇場公開した「アオドクロ〜髑髏城の七人〜」を観て、これが非常に面白かったので期待。
主演も「アオドクロ」と同様に市川染五郎で、実は劇場初主演作。
独特の色気や殺陣における立ち振る舞いは流石、といった所。

ただ、宮沢りえが(個人的に)エロさを感じないというか、年齢を感じさせない可愛らしさはあるのだけれど、色気のあるシーンでもなんか骨っぽさが目立ってしまって、イマイチ乗れず。
背中に刀傷を負った染五郎扮する出門(イズモ)の、その傷を舌で舐めるシーンがあるのだけれど、刀傷のメイクがリアルなのと、音効が「じゅるっ、じゅるぅ」ってカンジで、この後にラブシーンが続くのに、どちらかというと「キモグロ>色気」なのがもったいないな〜と。
染五郎側からのショットで、肩越しに(傷口をなめているであろう)宮沢りえの頭の動きと、舌をクローズアップしたショットを上手く繋げば、かなり色気と艶とエロを醸し出すものになったハズなんだけどな〜〜。

あとはラスボスとも言える阿修羅王となった姿が、巨大化CGで処理ってのが・・・マチャアキ版「西遊記」のお釈迦様かと思いました。
何というか、2005年の映画なのに、角川映画「里見八犬伝」かよ!?と思った位。
いや、まあ、「里見八犬伝」大好きですけどね。
なんというか、「あ、こいつは強い。ヤバイ。」と思わせるものが伝わってこないんですな。
敵が圧倒的な存在感と禍々しさ、邪悪さ、強大さを持っているからこそ、それを打ち倒さんと立ち上がる主人公側の悲壮な決意や、相対したときのカタルシスも出るってもんだし、この映画であるなら、そこに悲劇性がグっと加わるハズなんでしょうが。

それと、この作品で何かとキーワードになっている「さかしま」。
要は、鏡で映し出した様に、相対するものが作品中に散りばめられていたりする訳です。
「人間」に対する「鬼」であり、「鬼を斬るもの」出門と「鬼を統べるもの」阿修羅王であり、「5年前の事を忘れたい」出門と「5年から前の記憶がない」つばき、「文化文政の江戸の町」と「空から、逆さまの姿で現れる阿修羅城」であり・・・・とこんな感じ。
劇中でも、出門がつばきに「俺とお前ェは、さかしまの縁で結ばれてんのよぉ(うろおぼえだが)」というセリフも出て来る。
相反する存在であるが、それ故に切っても切れない関係にあるもの、それ故に生まれてしまう悲劇・・・。この「縁」や「因縁」といったものがもう少し掘り下げて欲しかった様に思えます。
それに関連するかもしれませんが、渡部篤郎扮する、「鬼御門」のメンバー安倍邪空の行動というかキャラ付けがイマイチ薄くて渡部篤郎の演技が良かっただけに残念。
本当は自分自身の血筋や出門へのコンプレックス等、色々複雑な心情を持つであろうダーティー・ヒーローたり得るキャラだけに、もったいない感が。

この作品で最も圧巻なのは、市川染五郎の存在感でしょう。
アクションシーンにおける佇まいや、普段のセリフ廻し、劇中の舞台シーンなど、「歌舞伎者」テイストがプンプン(ここが受け付けない人もいるかもしれませんが)。
いわゆる、江戸っ子の「べらんめぇ」調が粋な感じに聞こえるんですな。
日刊ゲンダイに載っていた滝田洋二郎のインタビューでは、衣装の裏地にもこだわったり、舞台のシーンでも監督が「完璧」と思ったものにも、本人が納得いくテイクが撮れるまでやり直しを求めたそうです。
あらためて、役者としてのこだわりに脱帽したとか。

音楽は「カウボーイ・ビバップ」等サンライズ作品を数多く手がけてきた菅野よう子。
劇中で使われている曲も、なかなかのものです。
ただ、話題作りのみで引っ張って来た様にしか思えないエンディングのスティング(なんと、ハービー・ハンコックと「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」をカヴァー)ははっきり言って蛇足も良い所。
菅野よう子にこのままエンディングも任せた方が良かったのではなかろうか。

力を抜いて、「ムード」を楽しむのみ、と言う点では佳作です。
なんだか批判だらけになってしまったような気もするけど、新感線テイストのギャグには笑わせてもらったし、染五郎のキャラクターにもハマりました。
設定、キャスト等も良かったと思うけれど、演出と一部のCGで損してるかなぁ、「惜しい!!」という感想ですな。

ところでこの作品、新感線による演劇版は未見なのですが、映画化に伴ってかなりカットされたエピソードがあるそうで(なんといってもこっちは3時間くらいあるらしいし)、そのため不明瞭になってしまった所があるそうで、出来れば新感線バージョンの方も観てみたいものです。

監督: 滝田洋二郎
出演: 市川染五郎/宮沢りえ/渡部篤郎/樋口可南子 他

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