by Kodai Yamase
リチャード・ヘルを評するときに、必ずキ−ワ−ドとなるのが「オリジナル・パンクス」という言葉です。
70年代中ごろから興ったNYパンクがイギリスへ渡りSEX PISTOLSやTHE CLASHらによってパンク・ムーブメントが吹き荒れるのですが、ヘルはNYパンクのなかでも重要とされるバンド、TELEVISIONとJOHNNY THUNDERS AND HEARTBREAKERSのオリジナル・メンバーだったのです。
TELEVISIONのトム・ヴァーラインとはハイスク−ルからの友人でNEON BOYSを経てTELEVISIONを結成するもレコードデビュー直前に脱退。
時を同じくしてNEWYORK DOLLSを脱退したジョニー・サンダースらとHEARTBREAKERSを結成するもやはりレコードデビューを待たずに脱退、その後自らのバンドVOIDOIDSを結成し77年にファーストアルバム「BLANK GENERATION」83年にセカンド「DESTINY STREET」をリリースしました。
その後はSONIC YOUTHのサーストン・ムーアとのコラボラ−ションや絵画などの他のア−トフォ−ムでも活動しています。
ヘルはヴァーラインのような音楽至上主義者でもなくサンダースのようなブルーズ敬愛志向でもなく新しい自己表現の追求手段としてロックを選んだようです。かつてヴァーラインが「ベ−スが下手すぎる」とヘルに言ったときも「下手な事、誰にでもまねができることにこそ自分のベースサウンドのメッセージがあるんだ」と言い返したそうです。
またパンクのパブリックイメージである「逆立てた髪と破れたシャツやジーンズ」はヘルが発明したもので、パンクの精神的哲学である「DO IT YOURSELF」はすでにこの人の中で確立されていたわけです。ちなみにヘルは髪を逆立てるときビールで固めていたらしい。すごすぎるぞ、ヘル。
そういえば、NEWYORK DOLLSのマネージャーをしていたマルコム・マクラレンがイギリスに帰って 新しくバンドのマネージメントをやろうとしたときヘルに声をかけて案の定断わられ、他のメンバ−で結成されたのがSEX PISTOLSだったとか。
さて、この人に関しては、フレーズがどうとかどんなベ−スを使ってるとかは無意味だと思います。 そもそもパンクというものは(ホントは音楽というものすべてなんだけど)テクがどうこうよりも、まず自分が表現せずにはおれん感情をいかに音にするか、というところにエネルギーを使うべきであるのではなかろうかと思うのです。
もちろん上手くなる事が悪いのではありません。楽器を使ってメンバーや聴くひとに感情を伝えるのがスムーズになるわけだし。ただテクニックのためのテクニックはプレイヤーのいわばオナニーショーだし、そんなものを聴いても、何の感動もないわけです。それよりも必要なのは「ほとばしる激情」と「そいつを音で表現するセンス」ではなかろうかね。
私がパンクと認識するのは、そういうスピリットをもった音楽のみだし、そんな音楽をやりたいと願いつつ日々精進しなければなぁという思いにかられるのです。
そういった哲学をこの人から汲み取るのが、正しいのではないかな、と思います。
ところでこの人のバンド遍歴からも分かる通り、音源は決して多くありません。
入手が簡単なのは先述の「BLANK GENERATION」で、必聴。あと輸入盤で「RICHARD HELL/R.I.P.」というタイトルのものがあります。これはジョニー・サンダースやVOIDOIDSとのスタジオセッションを時代順にまとめてあるヤツです。