by Kodai Yamase
バンドで演奏する際に、多くのベ−シストが抱える問題のひとつに「バンド・サウンドの中でのベ−スの音作り」というものが有ると思う。
これはともするとベ−スを弾き続ける限り一生付いて回る難問でも有るかも知れない。自分自身も、未だバンドの中で常に悩み続けている問題でも有ったりする訳で。
自分1人で弾いている分には、色々いじればいじったなりに音は変わりる。
音を出しているのは自分1人なので、その音さえ気に入れば全てOKで、言わばベ−スの音だけである意味完結している訳だ。
もちろん、それだけでも様々な要素が組み合う事で理想のサウンドが出る訳で、大変な作業である事にかわりはない。
しかし、いざバンドの中で弾いてみると、同じセッティングなのにベ−スの音が埋もれて聞こえなかったり、どうにも自分の思惑とは違って聞こえる事が有る。
1人で弾いている時とは違い、ドラムやギタ−、ヴォ−カルなど他のプレイヤーの出す音と混ざった時にベ−スの出している音の周波数帯が他の楽器のそれとぶつかりあう事で、ベースのある音域が埋もれてしまったり、バンド全体で聴くと音域のバランスが悪かったりしてしまうからだ。
例えば、自分的には倍音がたっぷり有る、所謂「ドンシャリ」「スラップ向き」な音が好きだとして、ギタリストがストラトやテレキャスタ−等のシングルコイルのギタ−だとすると、倍音成分つまり音の輪郭を感じるハイの部分がドラムのハイハットやシンバルにかき消されるだけでなく、そのチョイ下の高中域の部分もギターのアタック等に消されて、どうにもベ−スの音がヌケてこない、と感じてしまう事が有る。
その為、ベ−スのボリュ−ムをやたら上げてしまい、他のメンバ−がやりづらい音になってしまったり、トレブルをブ−ストしていく内にどんどん低音が感じられない、ペケペケした音になってしまったりする。
そうした場合、アンプ側でトレブルではなくハイ−ミドルやローミドルを強調する事でベ−スの存在感を出す事が出来る。
個人的にはいつも使っているスタジオのアンプがトレ−ス・エリオットなので、そのグライコで100Hz辺りをブ−ストしつつ、混ざり具合で他の周波数帯をブーストしたりカットしている。
またヘヴィ・ロック系等の、ギタ−が重低音を出すバンドの場合、ベ−スの出す音域にギタ−が入り込んでくる為、ただ単にトレブルやベ−スをブ−ストしただけではなかなかベ−スラインが分かりにくくなってしまいがちだったりする。
METALLICAの場合、クリフ・バ−トンはどちらかというと中低域に特徴の有る楽器(リッケンバッカーやアリア)を使い、ああした重低音ギタ−にも埋もれないサウンドを作っていたが、次のベ−シストであるジェイソン・ニュ−ステッドはかなりサウンドに苦心した様で、「...AND JUSTIS FOR ALL」ではベ−スサウンドはほとんど聞こえないものになってしまい、その後の「METALLICA」ではクリフとはまた違い、中音域だけでなく重低音とアタック音をバランスよく出す事で、ようやくベ−スラインの見える音作りになっている。
またギタ−が2人だった場合、よくあるのがストラト等のシングルコイル系とレスポール等のハム系で役割分担していて、そうした場合ギタ−が1人の時とはまた違うセッティングが求められたりする事が有る。
GUNS'N ROSESの1st「APPETITE FOR DESTRUCTION」だとベーシストのダフは、スラッシュのレスポール、イジーのレスポールカスタムが鳴っている音域をあえてカットして、下の音域と上の音域でのアタック音という「ドンシャリ」なセッティングで弾いている。
もしダフが中音域にクセの有る、ギブソン系のベースやプレベでも比較的モコっとした音作りでプレイしていたら、どちらかというと70年代アメリカン・ロック的なバンド・サウンドになったのではないだろうか。
ちょうど初期のエアロスミスや、レイナード・スキナードのような、クラシックロック的な空気と言えるだろう。
当時それまでのアメリカンロックとは一線をかして、ハ−ドロックのリフとパンクの攻撃性を持って登場したガンズだったが、前述のようなセッティングだとそうした印象もかなり変わって聴こえたのではないだろうか。
また先日ある女性ボ−カルのバンドのライヴを見たのだが、所謂椎名林檎系なバンド・サウンドで、ベーシストはフェンダー・プレシジョンで中低域にクセの有るセッティングで弾いていた。
椎名林檎の場合、爆音バンドサウンドの場合はハイト−ンで歌っている為に、ベ−スが色々遊んだりギタ−がかき鳴らしながら爆音を出したりする事が可能な訳だ。しかし、そのボ−カルの子はどちらかというと声域が中域で、声がモロにベ−スを始めバンドサウンドに埋もれてしまっていた。
もちろん声域だけでなく、声量の問題やPAでのセッティング等色々原因が有ると思うが、このバンドの場合はサウンド自体の音作りをもう少し下に設定するだけでもボ−カルの通りは良くなるのではなかろうか、と思った。
こうして考えてみると、バンドにおけるベ−スサウンドのあり方ひとつで、そのバンドの印象もかなり変わって聞こえるものと思う。
必ずしも自分の好きなベ−ス・サウンドが、バンドにとって良い音とは限らないというケースもあるかもしれない。根本的にベースを変えなければならない場合も有るだろう。
しかし、そこの所は他のメンバーとのミ−ティングを重ねて、譲る所は譲り、主張する所は主張しながら作り上げていくのがベストではないだろうか。
もちろん、普通だったらあり得ないセッティングで弾いたり、我を頑なに通す事で、バンド自体の個性を出す場合も有る。
バンドのメンバ−全員で狙った音に近いのであれば、それはそれで正解と言えるだろう。
あくまでバンド・サウンドというものに「正解」はなく、オ−ソドックスを狙うにしろ反則技を使うにしろ「こうありたい」と狙ったものにできるだけそれに近付けていく努力が必要と言えるだろう。
これは筆者自身も心に深く刻まねばならない事でも有るのだけれども。
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