1.

華原朋美を”作った”のは小室さん

と彼女自身が言っている。
そして今、その作られた”華原朋美”と本当の自分とのギャップに苦しんでいる。



華原朋美はグラビアアイドルだった。
そのアイドル時代はどんなに頑張っても売れなかった。
深夜のアイドル番組。
彼女はほかのたくさんのアイドルと一緒に笑っていた。
当時を振り返って彼女は言った。
”画面で見るとみんなおんなじ顔にしか見えない”
”ここから抜け出さないと。みんなとおんなじじゃだめだ。”
彼女は頑張った。
ニコニコと笑うだけのアイドルばかりの中、 ヒールな言動で世間に印象付けた。
手段は選んでいられなかった。
彼女は有名になりたかった。
芸能界で成功したかった。



そんな彼女に転機が訪れる。
小室哲哉と知り合い、華原朋美として生まれ変わった。
週刊誌でのスクープ。
新レーベルの第一弾アーティストとしての大々的なレセプション。
タイアップ。CMで毎日流れるプロモーションビデオ。
”小室哲哉の恋人”という話題で宣伝効果を狙ったが、
デビューシングルのランキングは最高位で8位。
鳴り物入りでデビューした割に小室プロデュース全盛時期のその頃としては、
スマッシュヒット程度に終わった。

次の2ndシングルはじわじわと売上げを伸ばしたがランキング最高位は4位。
売上げは60万枚だった。 このころ、TVで初めて歌った。レコード大賞で新人賞もとった。

ここまででも昔のアイドル時代とは比べものにならない成功を収めていた。
しかし、 彼女はもっと上を目指した。”1位をとる”



3rdシングルのI'm proudリリース、彼女の本当の転機はそこだった。
曲に合わせてそれまでのパンツスーツで決めたクールなイメージを変えた。
髪を切り、前髪を下ろしてワンピースを着る。
ある音楽番組でのトークのおもしろさが注目され、
自分の事を”朋ちゃん”と呼ぶ彼女の新しいキャラクター、
甘えたようなしゃべり方と笑顔と、 歌うときの真剣なまなざしのギャップ、
CMでのシンデレラガールというイメージが女性にうけた。
雑誌でも特集が組まれ、ファッションリーダーとなる。
そして何より楽曲のよさも手伝ってこのシングルは130万枚を売り上げ、
カラオケチャートでも長期間上位ランクをキープした。
シングルチャートでの最高位は2位。
しかし、この後出した1stアルバムは初登場1位。
トータルセールスは270万枚を記録した。


もう引き立て役でもヒール役でもない。主役になれたのだ。
しかも、人もうらやむサクセスストーリーの。



そして。
彼女は”華原朋美”から”朋ちゃん”に変わった。

音楽の趣味も変わった。 マライヤ・キャリー。
プロデュースする方向性の目安となるアーティスト。
私は、日本のマライヤ・キャリーになるんだ。
洋服の好みも変わった。 雑誌やTVの時に用意される服。
その服をきていれば”華原朋美”でいられる。
同じブランドの服、小物、靴。


彼女は実生活でも”朋ちゃん”でいることを選んだ。


その後もsave your dream 、 Hate tell a lieをリリースしヒットを飛ばしつづけた。
昔だったら”極悪アイドル”とまでいわれていた振る舞いが、
売れている今は”天真爛漫”ともてはやされる。
”かわいい朋ちゃん”という、いわば世間から押し付けられたイメージ。
しかし、そのイメージを彼女は本当の自分、と考えるようになる。
そのイメージを守っていくことが芸能界での地位を維持する手段。
彼女は自分を見失っていった。




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