芸能界という世界は厳しい。
売れつづけるということは難しい。
ましてや、一度大きくブームとなってしまうとなおさらだ。
小室哲哉との2ショットも見慣れ、”朋ちゃん”ブームも一段落し、
CDの売上げも落ち着いてきた。
彼女はあせっていた。
まだ目標を達成していない。
オリコンで1位も獲った。1stアルバムも大ヒットした。紅白にも出場した。
なにが足りないのか。
彼女は本当の意味での1位が欲しかったのだ。
彼女の上には常に安室奈美恵がいた。
まだここで終わるわけにはいかない。
彼女はあせっていた。
*
華原朋美に吹いていた強い追い風が微風に変わりつつあった。
いままでもてはやされた”朋ちゃん”という
キャラクターが世間から飽きられていく。
なにも彼女だけに限ったことではない、 芸能界に身を置く全ての人が抱える苦しみだろう。
しかし、彼女にはわからなかった。なぜ売れなくなったのか。
恋人でプロデューサーの小室哲哉との不仲説も飛び出した。
彼女にはなくてはならない大切な人である。
”小室さんじゃないと歌えない”とまで言っていた人。
別れるわけには行かなかった。
彼が望む、”朋ちゃん”イメージを前面に押し出した歌。
その歌詞は彼女に強い影響を与える。
これが私のイメージ。この通りの私でいなければ。
彼女は”朋ちゃん”を貫くことにした。
やさしく、元気で、素直で、いつもニコニコしている”朋ちゃん”
。
笑顔でいることに気を配った。
歌うときも笑顔を絶やさなかった。
ファンの声にもいつでも笑って答えた。
しかし、そんなことでブームが戻ってくるわけでもない。
彼女の”天真爛漫”ぶりは加速していった。
飽きられたのならもっと印象付けるようなことを。
世間の目を引くようなことを。
アイドル時代に覚えた、”その他大勢”から飛び出す手段を思いだした。
売れなければ、というあせりと、 常に”華原朋美”でいなければ、と、
本当の自分を押さえつけていた疲れが 彼女の心を蝕んだ。
*
小室哲哉とも別れることになった。 (この辺の経緯は見えてこないのでやめます)
”華原朋美”を作り、支えた唯一の人。
”小室プロデュース”では無くなってしまう”華原朋美”
これからどうすればいいのだろう。
この先どうなってしまうのだろう。
”小室哲哉の恋人”という、一番の戦略が今となってあだになる。
どんなに好きだったとしても、永遠ではない。
結婚する気がなく、いつかは別れるのがわかっていたのなら、
彼はどうしてこの戦略を使ったのだろう。
その時の思いつき?その時だけ売れればよかったのか?
”短距離走者だとおもっていたら意外と長距離だったね”
そんな発言を彼がしたのをTVで見た。
その言葉が恐ろしく意味深に響いた。
*
彼女は次第に自分を止められなくなっていった。
疲れていても、頑張って元気に振舞った。
注目を集めたかった。”華原朋美”を印象付けたかった。
しかし、それが裏目にでているのに、彼女は気づいていたのだろうか。
彼女の頑張れば頑張るほどからまわりしていた。
TVでの言動が視聴者の目には奇妙に、痛々しく映った。
彼女はそれでも止まらない。
自分が頑張らなければ。 頼るのはもう自分しかいない。
そして。
彼女は。
壊れた。
小室哲哉の手から離れたこれからも、彼女は華原朋美としてファンに笑顔で手を振り、
笑顔で歌を歌い、 元気にはしゃいでみるのだろうか。