2.

芸能界という世界は厳しい。
売れつづけるということは難しい。
ましてや、一度大きくブームとなってしまうとなおさらだ。
小室哲哉との2ショットも見慣れ、”朋ちゃん”ブームも一段落し、 CDの売上げも落ち着いてきた。

彼女はあせっていた。
まだ目標を達成していない。
オリコンで1位も獲った。1stアルバムも大ヒットした。紅白にも出場した。
なにが足りないのか。

彼女は本当の意味での1位が欲しかったのだ。
彼女の上には常に安室奈美恵がいた。
まだここで終わるわけにはいかない。
彼女はあせっていた。



華原朋美に吹いていた強い追い風が微風に変わりつつあった。
いままでもてはやされた”朋ちゃん”という キャラクターが世間から飽きられていく。
なにも彼女だけに限ったことではない、 芸能界に身を置く全ての人が抱える苦しみだろう。
しかし、彼女にはわからなかった。なぜ売れなくなったのか。

恋人でプロデューサーの小室哲哉との不仲説も飛び出した。
彼女にはなくてはならない大切な人である。
”小室さんじゃないと歌えない”とまで言っていた人。 別れるわけには行かなかった。
彼が望む、”朋ちゃん”イメージを前面に押し出した歌。
その歌詞は彼女に強い影響を与える。
これが私のイメージ。この通りの私でいなければ。

彼女は”朋ちゃん”を貫くことにした。
やさしく、元気で、素直で、いつもニコニコしている”朋ちゃん” 。
笑顔でいることに気を配った。
歌うときも笑顔を絶やさなかった。
ファンの声にもいつでも笑って答えた。
しかし、そんなことでブームが戻ってくるわけでもない。


彼女の”天真爛漫”ぶりは加速していった。
飽きられたのならもっと印象付けるようなことを。
世間の目を引くようなことを。
アイドル時代に覚えた、”その他大勢”から飛び出す手段を思いだした。

売れなければ、というあせりと、 常に”華原朋美”でいなければ、と、
本当の自分を押さえつけていた疲れが 彼女の心を蝕んだ。



小室哲哉とも別れることになった。 (この辺の経緯は見えてこないのでやめます)
”華原朋美”を作り、支えた唯一の人。
”小室プロデュース”では無くなってしまう”華原朋美”
これからどうすればいいのだろう。
この先どうなってしまうのだろう。
”小室哲哉の恋人”という、一番の戦略が今となってあだになる。
どんなに好きだったとしても、永遠ではない。
結婚する気がなく、いつかは別れるのがわかっていたのなら、
彼はどうしてこの戦略を使ったのだろう。
その時の思いつき?その時だけ売れればよかったのか?
”短距離走者だとおもっていたら意外と長距離だったね”
そんな発言を彼がしたのをTVで見た。
その言葉が恐ろしく意味深に響いた。



彼女は次第に自分を止められなくなっていった。
疲れていても、頑張って元気に振舞った。
注目を集めたかった。”華原朋美”を印象付けたかった。
しかし、それが裏目にでているのに、彼女は気づいていたのだろうか。

彼女の頑張れば頑張るほどからまわりしていた。
TVでの言動が視聴者の目には奇妙に、痛々しく映った。
彼女はそれでも止まらない。
自分が頑張らなければ。 頼るのはもう自分しかいない。


そして。

彼女は。

壊れた。








小室哲哉の手から離れたこれからも、彼女は華原朋美としてファンに笑顔で手を振り、
笑顔で歌を歌い、 元気にはしゃいでみるのだろうか。




→最後に