90.11.23
山路一秀に聞く!(前編)
掲載誌:CHROTUM-P Vol.11



CD発売記念ワンマン(90.11.23渋谷La.mama)のこと

─まず、感想を一言。
反省だな。
─2部構成にしたのはどうして?
3人でやるのと遊びっぽいのを分けたの。思いっきり離して考えようと思ったの
─ステージ美術について。
あれは俺のやったものじゃないからなぁ
─本橋さんに任せたという…
俺はカンちゃん(福田寛)に任せたとゆう。ま、話し合いが全然無かったからね。あっちは完璧な芝居感覚でやっていたみたいだからね。完璧な暗転があると、演奏とか技術的な所で困るところがあったからね
─「口紅」が非常に長かったけど、ねらったの?
結果的にああなったの。ねらってはいない
─CDを意識していた?
意識してないよ。レコーディングとは全然違う感じでやろうとは思っていたけれど、別に何も気にしてはいなかった
─第一部より第二部はラフな感じに聞こえたんですけど。
うーん、遊びってのは何だけど。ラフって感じだね、気持ちはちょっと
─一部は緊張感が感じられたけど。
うーん、オリジナルだしね。二部はお祭りっぽかったからね。……そうゆうのを、遊びっつーのと本気っつーか、3人のちゃんとしたバンドを混ぜると、どっちにも説得力がなくなるからね
─一部では「Water Colour」とか(最近やらない曲)とかあったし、「Dip'sにはこうゆう曲もあるぞ」というのを出したわけですか。
いや、別に。『こうゆうのも、そういえばあるなぁ。じゃあ、やろうか』って感じで。(笑)そんなものだねぇ。『あったあった、最近やってないから、じゃ、やろうか』っていう。
─ワンマンだから、って特別意識したことってありました?
ワンマンだから、って何を意識するの
─記念すべき、というか……
ワンマンが記念なんていう、青春の思い出みたいなの、俺は好きじゃないねぇ(笑)。それで終わりみたいじゃん(笑い)
─何か意識したことないの?
うーん、ワンマンだから沢山やろう(笑)そんなもんだよねぇ。みんながこの曲久し振りにやったら喜ぶだろうねぇ、ってちょっと思ったけどね。……ってのはよく考える

CDのこと

─北村(昌士)さんがプロデュースしたきっかけは何だったんですか?
最初は酒の席で、『じゃあ、俺に任せろよ』っていう話だったんだよな、レコーディングの話をしているうちに。それが段々本橋(ソイネ)とかと話しているうちに盛り上がってきたんだ。で、本当になっちゃった。
─山路さんも、「北村さんに任せよう!」って思ったの?
いや(笑)別に。とりあえず、技術的な力を参考にしたいってのはあったな。俺よりも長くやってるしね、倍以上も。レコーディングに関してはね。俺も色々知りたいこととかあったし。最初はそうゆうきっかけかな
─内容はほとんどDip'sで決めたんですか?北村さんがタッチしたものとかはどうだったんですか?
ほとんどね(Dip'sで決めた)。(北村さんが)『ここでこうゆうやり方はどうか』ってのもいくつかあった。使ったものもあるし、却下されたものもあるし。主に、俺達の抽象的なものをエンジニアの人に具体的に伝えていた、という感じかな
─時間はどのくらいかかったの?
短かったなぁ、1週間ぐらいだったかなぁ。トラックダウンとか入れたら、……それでも10日ぐらいか
─レコーディングに入る前に、具体的な音作りとか決めてた?
完璧に決めてた。変わっちゃったのもいくつかあったけれど。MTRで自分のギターだけ一通り録ったしね
─そうゆう点では凄くやりやすかったですか?
うん。録りの時間は短かった。俺のギターは決めてたから。ほとんど音決めながら録ったしね。トラックダウンの時に音を作るのってほとんどなかったな
─某誌で「聞くに耐えうるものを作りたい」と言ってましたけど、どうでした?
耐えてるよ
─自分で聞いてる?
今は聞いてないけど、聞いてたよ
─レコーディングエピソードとかありませんか?
……時間が余っちゃったんで、もう一曲録っちゃった事かな。それが、今度の北村さんのオムニバスに入る
─「bの循環」を(アルバムに)入れたのには、ちょっと意外に思ったんですけど。
そうかぁ?
─ライブでもあまりやらなかったし。それに、弾き語りの曲じゃない?
うん。まぁ…、曲が足りなかったからかなぁ。……ライブとCDは完璧に切り離して考えてる。だから、ライブでやらない様なこともやるわけよ。逆回転いれちゃったりとか。
─「SLUDGE」的な曲がもう少し入るのではと期待していたんですけど、ああゆうふう(割と静かな)になったのは意外でした。
でも、自分の中では自然なんだよなぁ。あの時やりたい曲を集めて、ああなった
─タイトル「FROG MAN」は、なぜ?
あんまり意味はないんだよね
─誰が決めたの?
伊藤
─12'EP「鰓」の時はジャケットからタイトル決めたんでしたよね、今回も?
(ジャケットの絵は)魚だけど、(「FROG MAN」は)潜水夫のことだもん。たけしのオールナイト(ニッポン)でさぁ、あるんだよ。俺なんかが中3か高1の時に、『フロッグマン』とかいってプレゼントしてたんだよ。後からつけた意味は色々あったけど、最初の意味はないよ


歌詞のこと

─歌詞はどのように作っているんですか?
それは、思いついたときにノートに一気に書いて…。書きためておく、という感じかな
─抽象的ですよね
でも、自分の中では具体的だからねぇ。『こんなに具体的な表現をしていいのだろうか』って思うほど具体的なものもあるしねぇ
─まえ、ノート(のページ)がテーマ別に分かれている、って言ってたじゃない?で、(思いついたときに)思いついた事を書いていく…。
そうそう、…頭の中で景色みたいなものがあるんだよね。その景色の描写って感じかな。実際の景色の場合もあるけど。実際肉眼で見えている視界のことをうたったりとかね。あやふやだな、とっちも混ざりつつ…
─自分の歌詞を客観的に見てどう思う?
わかりにくいと思うね。ワンパターンだな、って思ったりする時もある
─好きな詩人とかいないの?
うーん、中原中也ぐらいかなぁ、…あ、いるよ。アサオカケン(笑)。この人の詩にはいつも俺は目を見張っているよ
─あ、“夜光少年”を…
そう、“夜光少年”を書いた人。…“スラッヂ”と“生”はダリアカラスのVo.(波田さん)の人
─CDに歌詞カード付けたのはどうして?
知りたいだろうと思って
─詩を?
…『こうゆう事を歌ってるんだよ』ってのを、ちょっと
─“Human Flow”は日本語で掲載されてますよね。
そう、英語の詩だったら、みんな何書いてあるかわかんないでしょ
─日本語の詩を読んでもらいたかったの?
読んでもらいたくもあったし、みんなに対するサービスという気持ちもあった(笑)
─英語で載ってほしかった、って言ってる人もいたから。
何で?一緒に歌いたいから?
─そうだと思うけど。
なるほどね。両方載せればよかったね
岸:俺だったら、絶対日本語で載せるな。
だって、紙に書いた時点で詩は詩で確立しちゃうじゃん

そうゆう感じもあるね。あんな、薄っぺらい小さいやつが、詩集みたいな…ってのもあるね。そうゆう時にね。英語は俺の言葉じゃないけど、日本語は俺の言葉だもんね
岸:『私は好きです。』ってのも、英語だと『I Love You.』で済むけど、日本語だと色々言い方あるし
うん、日本語の方が複雑だね


最近のこと

─10月のソロの時プライマル・スクリームやってましたけど、(マンチェスターバンド)好きなんですか?
聴く機会はあるよ。でも、あんまりいいのなかったなぁ
─「うちの方が良い」とか思ったりしないの(笑)?
比べたりはしないけど、うちの方がバリエーションが豊富だな、とは思うけどね。ライドとかプライマル・スクリームとか1曲聴いたら全部わかっちゃうもんね。2曲とか3曲とか聴いちゃうと、すぐあきちゃう。曲も単調だからつまんないし
─…やっぱ最近はニール・ヤングですか。(ニール・ヤングの「RUST NEVER SLEEPS」のビデオがかかっている)
うん、ニール・ヤングを聴く機会が多いかな
─最近の山路さんのお勧めは。
いいと思ったのはニール・ヤングかな。あとは、カウボーイジャンキーズかな。あと何かなぁ…、さっき友達んちで聴いたラウンジリザーズが良かったかな(笑)。あと、CSN&Y。日本人は…、なぎら健壱見にいって良かったな。あんなことやっていながらもプロなんだな、と(笑)あと、サイモン&ガーファンクルかな。『卒業』見て、また久しぶりに聴きたくなったよ
─去年の夏ぐらいまでは、結構クールに演奏してるなって思って。で、この頃はかなり熱っぽくなっているんじゃない?
みんなが『冷めてる』とか『突き放してる』とか言ってた頃から3人は楽しくやっていたから、それが何となく表にもでるようになったんじゃないの?
─動員増えましたよね
実感無いなぁ。最近、精算とか自分でするわけじゃないから。だから、何人入っていくら入りました、っての詳しく知らないからね
─ライブやってて、実感しないの?
しないよ、あんまり
─どのくらいになると、実感わいてくる?
やっぱ、10万人とかね(笑)実感わくだろうねぇ。『こりゃ、入ってんなー』とか言って(笑)
─ライブハウス級だと、そんなに思わない…。
うーん、思わないでしょ。狭い所に詰められているから、威圧感とかないしねぇ。緊張の度合いっていうのはあんまり変わらないよ。0〜300人ぐらいまではみんな一緒かな。3年位前の中央大の800人とかいうのがあって、あれは客の位置が威圧されたけど。ほとんど180°全部客がいたっていう
─ワンマンの時は感じなかったんだ。
客に対する緊張よりも、『全曲きちっとこなせるだろうか』っていう(笑)そうゆう緊張の方が高かったからね。自分の中にある完成度への緊張の方が高かったからね
─あんまりお客さんのこととか気にしないんだ。
いや、気にするよ。だって、見て気にいられたらうれしいからね
─ライブの最中とかは?
だから、そうゆう『気にする』ってのはない。見てるしぐさとか視線とか、そうゆうのは気が散る要因でしかない。そうゆうのは気にしてない。って言うか、気になるから気にしないようにしている
─ツアーで、地方でやって何か思うことある?
結構面白いね
─なんで?
全然知らない人が来るから。全然知らない人とは、お互い初めてっていうか、イメージが出来上がってないから。お互い慣れてないから面白いよ。東京で見てる人達だと、『この曲がきたら終わりだな』とか、見慣れちゃってる部分があるから。こっちもやり慣れちゃってる部分があるから。うん。だから新鮮だな、凄い。大阪とか結構のったりするから面白いなぁ。『ノリのある曲はのる』って感じだから、素直でいいと思ってるけど
─そうあるべきだと思う?
あるべきだとは思わないけど、のりたい人は気にせずのったほうが、きっと楽しいと思う
─そうゆう点だと、東京のお客さんは素直じゃないと思う?
わからない。のりたいと思っていないのかもしれないからね
─「のるのがもったいない」と言う人もいる。
フォークの弾き語りじゃないんだから。だって、フォークの弾き語りだってのる人はのるもんね。そこまでのらない人がいるんだったら、やってる方の技量不足かな、と思うこともある。スライダーズとか『勝手にやっとけ』って感じだけどね
─お客さんに対する要求とかないの?
好きになってもらいたい。気にいってくれたら有り難いかな。そこから先は、とらえ方は自由だからね。
─ニューエストモデルのライブは(客が)結構おとなしいので、MCでのるように言ったり(あおったり)するらしい。
素直な気持ちなんじゃないの。その人達は、みんなが動いて凄くのってくれるとうれしい人達なんだよ。それを口にするのはいいんじゃないの
─Dip the Flagの場合はどうなの?
俺はそこまで思わないから。慣れちゃったし。3年も座られてると
─一種のあきらめ?
あきらめてるわけじゃないけど
─のってる人達もいるからねぇ。
ああゆう人達は人達で。邪魔だと思う人もいるけど(笑)。邪魔だったらその人の前に行けばいいと思うけど(笑)
─地方でやって、一番面白かった所は?
大阪のミューズホールが一番印象に残ってるな
─2年前の。どうゆう印象があったの?
みんながのってたから。立って踊ってたから


新曲のこと

1. Tom、Smith

(笑)洋楽っぽじゃなくて、今はやりの洋楽っぽいって言うんじゃないの?(笑)それは俺も思ったよ。(意識)してないよ。(曲を)作ってから聴いたんだもん。「似てる」って言われてからハッピーマンデイズを20秒位聴いたの。「似てる」って言う人もいるだろうって(思った)。ノリは違うんだよ、表面的に似ているんだよ。……(Smithは)一番初めに作った時は16(ビート)のノリだったしね。
─16ビートのSmithはDip the Flagの曲とは言い難いと思った
それは見る人がある程度「Dip the Flag」って言う枠があるからね。で、はみ出ちゃった曲があるもんだから、「これはDip the Flagの曲ではないんじゃ…」と言う。俺の中ではそんなに…。だって同じ人が作ったんだしさぁ、同じ気分で作ってんだから変わんないよ。……過小評価し過ぎなんじゃないのかなあ。そこが認識の甘さかなぁ(笑)。
─でも、あれはあれで新しい展開かなって思ったけど
そこが認識不足なんだよ。今までにも曲のヒントみたいなものはライブとかでも色んな所で出してきたからさぁ。


2. 真空管

初めは弾き語りの曲だった。歌もついてなかった。そんで、もっと色々付いていて15分位あった。ギターの曲だけで。……原始的な曲だよ。ソロとか最後の一部分しかないし。あれはフォークと呼んでもいいですよね(笑)
─小説や物語の様な印象をうけたんだけど
交響曲みたいなものか。第一楽章、第二楽章…とかあって。あぁ、そうゆう感じはあるかもね。


3. D(Deep sink deep)

─歌詞は決まっているの?
大まかな…歌うことっていうか、テーマみたいなのは決まっているけどね。きっちりとは決まってない。(所々日本語で歌っているのは)気分だね。いづれは全部日本語になるような気がするな。…となるのではないかと思われる。
─実践的な曲だと思った
全然。これまでのああゆう方向性での集大成というか(笑)

               1991年03月19日 場所:吉祥寺