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weekly short short January 2001
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4th week

 うちのパソコンもようやくマルチメディアの世界へと足を踏み入れる事になった。
 何が起きたのかと言うと、ただ単に音が出るようになっただけである。

 一般的には、パソコンは買ったときから当たり前のように音が出るものである。ところが、うちのパソコンのようにそうでないパソコンもある。パソコンの外側のケースを外し、サウンドボードという基盤をファミコンのカセットのように(懐かしいですね)差し込む。そして、サウンドカードに付属のCR−ROMから“ドライバ”と呼ばれるサウンドカードを動かすためのソフトをインストールして、スピーカーをつないでやっと音が出るのだ。

 なんとも面倒な作業ではあるが、最終作業の手前までは随分前に終わらせていた。最後の最後が終わっていなかった。
 スピーカーを買ってつなぐ作業だ。
 なぜかしらスピーカーを買うのに手間取った。サウンドボードを買っておいてスピーカーを買わないなんて馬鹿げてる。だいたいそんなもの安く手に入る。サウンドボードより安い。

 というわけで、先日、重い腰を上げて、ようやくスピーカーを購入。新宿のヨドバシカメラで千円であった。サウンドボードより安い、というか、下手なランチより安い。

 さて、音が出るようになると楽しいですね。最初は今まで持っていたゲームを起動させて、こんな音だったのか、と楽しんだりした。ウインドウズを起動させると出る「モワ〜」という音を聞いて感動したりもした。自分のCDをMP3に変換して聞いたりもした。ギターをつないでジャカジャカ鳴らしてパソコンで録音したりもした。

 なんてこった。めちゃめちゃ楽しいじゃないか、マルチメディア生活。

 飽きるまでしばらくこの世界にひたっていそうな感じです。いや、これ、本当に楽しいです。今まで二年間も無音生活を送っていたが、何だったのだろう…。


 マルチメディア、音楽、と、話を無理矢理つなげてしまいましょう。

 つい先日の話である。なんとなしテレビを見ていると、というよりつけっぱなしにしていただけなのだが、男と女の二人組が歌を歌っていた。女の子は歌を歌い、男の子はラップ担当といった感じであった。
 ひどい。ひどすぎる。
 こんなヤツらがどうしてテレビに出てくるのだろう。誰がこやつらのCDを買うのだろう。誰もがそう思うに違いない。EE JUMPと呼ばれるこのグループはどこからやって来たのだろう。

 友達であるmoteeにチャットでこの話をしてみた。

hira:EE JUMPって知ってる? 何、これ?
motee:ああ、知ってるよ。後藤まきの弟でしょ
hira:え、あのラップやってた人?
motee:そうそう
hira:そうなんだ、そういうつながりがあったんだ。なるほどね〜。
motee:きしょいよね
hira:え、ああ、似てるってことね…。
motee:そう

 モーニング娘。の後藤まきの弟がEE JUMPのかたわれ正体であった。なるほど、そうか。話題性は確かにあるわな。
 この後藤まきの弟、名前がわからないので仮にここでは後藤マキオとしておこう。ちなみにルパン三世の五右衛門の声は井上マキオである。

 彼らはある音楽番組のゲストであった。深夜枠であるとはいえ、一曲丸まるライブ形式で歌っていた。二人ともカラフルな衣装を着ていた。特に、後藤マキオは左右長さの違うタイツのようなものをはいていた。女の子は手を天に広げて歌っていた。後藤マキオは左右長さの違うタイツをはいて叫び続けてていた。

 後藤マキオは女の子の周りをリズムをとって動き回る。Go!Go!
 女の子が歌い終わった後、後藤マキオは叫ぶのだ。Go!Go!
 このとき世界は後藤マキオを中心に回っているのだ。Go!Go!
 とにかく、今このときを生きるのだ。Go!Go!
 いつしかこの曲も終わってしまうだろう。Go!Go!
 この世界での二人もいつしか。Go!Go!
 いつしか無くなってしまうのかもしれない。Go!Go!
 でも、今は、とにかく叫び続けるしかないのだ。Go!Go!

 それにしても、似てるな、後藤まきと後藤マキオ。確かにmoteeの言う通りきしょい。
ホントにきしょいと思うシュークリーム
(2001/2/03)

3rd week

 “あくち”ができた。

 “あくち”というのをご存知だろうか。おそらく、大方の人は知らないだろう。聞いた事はあるような気はするけれど、うーん、なんだったかな、という類の「知らない」ではないと思う。多くの人にとってそれは南極の氷に閉ざされた未だ見ぬ大地のように、全く、さっぱり、終末的に知らない言葉なのであろうと思う。
 まあ、“あくち”というのはこのようにもったいぶるほどの事ではなく、口に出来てしまう切れ目のことを言うだけである。上唇と下唇の付け根、要するに口の両端に出来る切れ目のことを言うのだ。一度知ってしまうと“あくち”なんて別にどうとってことはない。小学校の頃にいた目立たない転校生のように、いつかその名前を忘れ去ってしまうのを待つだけだ。そう、彼は何という名前だったのだろうか。

 さて、“あくち”になると辛いことがある。想像はつくと思うが、口を思いっきり開く事が出来なくなるのだ。“あくち”になってしばらくするとかさぶたのようなものが出来る。その後で、口を思いっきり開くと両端が再び切れてしまう。そしてまたかさぶたが出来る。これの繰り返しになる。もちろん再び切れるときは痛い。
 口を大きく開くときは突然にやって来る。それはウェンディーズのハンバーガーにかぶりつく時かもしれないし、友達のつまらない冗談に口を大きく開けて笑ってしまう時かもしれない。普段なら何気ないことも“あくち”となるとそうはいかない。ハンバーガーやつまらない冗談といった不意にやってくる来訪者に気を病む事となる。そして、大抵の場合、その来訪者を避ける事は出来ない。

 この“あくち”が出来るのには理由がある。親の悪口をいうと出来るというのだ。子供の頃、口の両端が切れて痛いと親に言うと、それは親の悪口をいうからなったのだと言われた。
「なんか、口の両端が切れてもうたわ」子供の頃のボクは、母親にそう言った。
「どこ? 見してみ」そう言って母親はボクの顔を覗きこんだ。
「ほら、ここ」
「ああ、これ“あくち”やわ」
「“あくち”?」そう。ボクはこうやって“あくち”という言葉を知った。「何やねん。“あくち”って」
「あんな、親の悪口ばっかゆうてるとそうなるねんで」
「何いい加減なことゆうてるねん。アホか」
「ほら、アホゆうた。せやから“あくち”になるねん」
 そういう風に言われてしまってはこちらとして返す言葉がなくなってしまう。“あくち”だなんてくだらない迷信だと思う一方で、昔の人は上手い事を考えたものだと感心してしまう。この時何も言い返せなかったのだけはしっかりと覚えている。

 今、この年になって“あくち”になってしまったのは、もちろん親の悪口を言ったからではない。だいたい“あくち”は冬に出来るものと相場が決まっている。だから、単に冬で空気が乾燥しているから出来たのかもしれない。空気が乾燥して唇が割れてくる事と同じことが口の両端に起こっているのだろう。ひょっとしたら、口の両端が切れてしまうのにはなんらかの栄養素が足りないとかといった原因があるのかもしれない。身体の何らかの器官の調子が悪くなると、その影響が口の両端にあらわれるのかもしれない。詳しい事は分からないが、親の悪口とは関係はなさそうだ。

  さて、昨日は雪が降り積もった。今年に入って早くも二回目の積雪になる。この雪が降り積もる程の寒さは十数年振りなのだそうな。まったく。“あくち”といいこの寒さといい、今年の冬は余計なものばかりが十数年もかけてやって来る。今となっては要らないものばかりだ。雪が積もってはしゃいで遊んだあの頃の気持ちも、“あくち”が出来た時に母親と下らない事を言い合ったあの頃の気持ちも、もうとうに忘れてしまったのだから。小学校のころの同級生。小学一年の時に引っ越していったあの同級生。彼の名前は何だったのだろうか。彼とは何をして遊んだのだろうか。そして彼はどこへ行ってしまったのだろうか。もうとうに忘れてしまった。
“あくち”なんてみんな知らないよね、と思うシュークリーム
(2001/1/21)

2nd week

お気楽塾講師とやる気の無い生徒の会話。

CASE1
「あのね、学校の宿題があるのね。英語なんだけど。今日はね。それを“やってもらおう”と思ってるんだけど。」
「う、うん」
「ええと、こことここと…、で4ページ分の問題。」
「はいはい。(カリカリ)」
「がんばってね。」
「正月どこか行った?(カリカリ)」
「うん、そうね。あ、そうそう! 109行ったよ!」
「え、あれってすごくなかった? テレビでもやってたよ。(カリカリ)」
「そうそうそう! もう、厚底の人が店ん中掛けまわってみんなこけてるのね。それでね、それでね(話は続く……)。」
「(カリカリ)」
授業時間60分。
ボクが宿題を終わらせて終了。

CASE2
「今日は何やるんですか? やることないよね。暇だよね。」
「そうね。何しようか。」
「そうそう! 聞いて下さいよ! また露出狂に会ったんですよ。」
「またって? 何回も会った事あるの?」
「そう、よくあるんですよ。」
「コート着て、女の子が来たらベローンって見せてくるあの露出狂?」
「そうそう、それです。なんかねえ、『ねえちゃん、ほらほら。好きなんだろ! 俺の×××を×××してくれや!』とか言ってくるんですよ!」
「ふ〜ん、多分、キャー、とか言ってもらいたいんだろうね。」
「多分ね。言わないけどね。とりあえず見るもの見て、フンッ、って感じで立ち去って行くんですけどね。」
「うわ〜、男としてはショックだろうね〜。」
「そしたら追いかけてきたんですよ! もちろんその格好のままで! さすがにヤバイと思って逃げましたよ。」
「それ、本当に危険だよ。ちょっと間違ったら何されてんだかわからないよ。」
「それはそうと、なんでそういう男の人って×××が×××なんですかね? ×××のくせして×××するなんて。」
「………。」
「でさあ、××××××(話は続く……)。」
授業時間90分。
放送禁止用語連発のシモネタで終了。
塾講師ってお気楽極楽と思うシュークリーム
(2001/1/15)

1st week

 安物のうなぎほどまずいものはない、と思っているのはボクだけではないはずだ。夫婦喧嘩は犬も食わない、などと言ったりするが、夫婦喧嘩を食べないくらい分別のある犬は安物のうなぎだって食べないはずだと思うのだ。
 なんだか変な書き出しになってしまったが、正月早々分別の無い大人が犬も食わないうなぎを食べたお話です。

 今回のお話でも、お馴染みの近所のおばさん(「スイカはお好き?」と「未知との遭遇」参照)にご登場願うことにします。

 うなぎを食べたのは一月四日。ボクらが二人で成田山に初詣に行った帰りである。

 成田駅に着いたボクらは、長々とした参道を通って成田山の本堂へ向かった。参道はここぞとばかりに賑わっていた。参道にあるお店は普段なら半分以上がシャッターを降ろしているらしいのだが、シャッターを開けて営業するに飽き足らず、出店まで出してしまう始末。出店では地元のお酒とかお茶の葉なんかも売っていたのだが、何といっても甘酒が一番多かった。甘酒、いいですよね。甘酒大好きっ子のボクはこれを楽しみに成田山に初詣に来たといっても過言ではないのだ。だが、「後でいいじゃない、そ、後にしましょう」と言うおばさんの指示に従い楽しみは後に取っておくことにした。
 参道も終わりに近づいたころ、お店の前で何やら人だかりが出来ていた。うなぎをさばいていたのだ。ボクらが覗いてみると、板さんがうなぎの背に包丁を入れていた。余談だが、関東ではうなぎは背から開く。お江戸のお膝元ではハラキリを連想させると言う事でうなぎを腹から開かないのだ。天下の台所である大阪ではそういった影響も無く、何のためらいも無くうなぎを腹から開く。

 本堂に辿り着いたボクらは、お賽銭を投げ、おみくじを引き、護摩焚きを見た。4日ということでそれほど人は多くなかった。ゆっくりと一通りのことをし終わったボクらは帰りの途につくことにした。どうでもいいが、護摩焚きでは三十分ほど正座をしていて足がしびれてしまった。

 ボクらは再び元来た参道へと戻った。そのとき初めて気づいたのだが、参道の脇には「表参道」と掛かれた札が立っていた。確かに。表の参道である。言うまでも無いが、成田の「表参道」にはお洒落なカフェなんてありゃしない。あるのは甘酒を売っている出店とうなぎ屋さんだけである。
 というわけで、ボクらは適当にそこそこ賑わっているお店に入った。うなぎを食べるのだ。お店に入って靴を脱ぎ、畳の上へとあがった。メニューには「うな重(普通)一ニ○○円、うな重(上)ニ一○○円」とあった。そう、最初にボクはこう言った。安物のうなぎほどまずいものはない。だから、ボクはちょっとくらい贅沢をしてでも(上)を頼んだ方が良いんじゃないのかと思ったのだが、お店の人が注文を取りに来たときに彼女は「じゃあ、(普通)でいいわ」とあっさり言ってしまった。しばらくしてボクらの前に(普通)のうなぎが出された。ボクはうなぎを(普通)にたいらげた後、お茶をすすりながらマッタリとした時間を過ごさせてもらった。彼女は少し残した。多分、彼女にとってそれが(普通)だったのだろう。

 結局、お代は彼女が全部持ってくれた。なので、あまり大きなことは言えないのだが、何でなのでしょうね。思ったとおり(普通)のうなぎは美味しくなかった。美味しくないということが(普通)なのだろうか。

 ところで、美味しいうなぎを食べた記憶ってありますか? ボクは鮮明にあります。子供の頃親に連れて行ってもらった記憶があるのだ。いつ、どこで食べたのかは全く覚えていないのだが、確かにこの世には美味しいうなぎが存在する。間違い無い。決して昔の思い出を美化しているわけではない。

 太平洋で孵化したうなぎ。遥か遠い日本沿岸まで半年かけて辿り着く。そこで半年から2年かけて成魚となった彼は、まな板の上で背中を開かれる。そう、美味しいうなぎは間違い無くどこかに辿り着いているはずなのだ。ボクらが彼に出会うまでにはまだまだ辿るべき道があるのだろうか。

 なんだか難しい事を言っているが、要は美味しいうなぎを食べたいと言う事なのだ。そう、すっかり忘れていたが、うなぎを食べた後、甘酒を売っていた出店はどこも閉まっていた。ああ、もう、これを目的にはるばる成田まで来たのに。むむむ。
甘酒飲みたかったよと思うシュークリーム
(2001/1/14)

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